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弾殻

昨年の春のある夜。

晩ご飯のおかずのカナダポークに低温でゆっくりと火を通しているときのことだった。
キッチンの脇の扉の外から

「すみませ~ん。」

と声をかけられた。うちは塀のむこう駐車場になっているのだ。
何だろうと思って扉を開けてみると、なんと、黒っぽい服を来た男が庭に侵入して来ていたのである。しかも二人。しかも、手にした懐中電灯をこちらに向けた。
そしてこう言った。

「警察なんですが。」

なんだなんだ????
さっぱり意味がわからない。
すると庭の法を指さして、

「ちょっとアレのことをお聞きしたいんですけど。」



あー!! 



アレね(^^;



アレ。



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これは、はっきり覚えていないのだが、たぶん阪神淡路大震災より少し前に、太刀魚を釣りに行った大阪の南港の方で拾ったものである。
むかし従軍経験があるというお爺さんに聞いたところによると、朝鮮戦争時代の艦砲の砲弾じゃないかということだった。
頭部がフラットになっていて、中が空洞になっているのだが、本来はここに信管があって中に炸薬が詰まっているのだろう。それがあると砲弾なので当然持っていて良いシロモノでは無いのだが、弾頭と火薬を取り除く処理がしてあれば、ただのこんな形の鉄である。爆薬なんか入手できないので信管も炸薬も再生できないし、巨大で頑丈な砲筒もないので発射することもできない。
法律では弾丸や砲弾や爆弾の所持はもちろん禁止されているのだが、信管と炸薬を抜いて処理済みであれば違法ではない。
私が中高校生の頃は、炸薬を処分した銃弾や手榴弾がアーミーショップでふつうに売られていた。
それに、手榴弾の外側だけなら、第二次世界大戦末期に作られていた陶器製の手榴弾なるものの残骸が、行くところに行けば今でも大量に放置されっぱなしになっている。陶器なら合法だが鉄だと違法だというような法的線引きなど存在しない。

そして、私がここに転居してきてから10年以上この場所にずっと置いたままにしていたのだが、車が無ければ外からもよく見える場所なので、今回たまたま目にした誰かが警察に通報したのではないだろうか。

お騒がせしました。ご苦労様です。

「・・・・・あー、あれですか!!」

まあしかし懐中電灯を持っているのだし、照らして見れば処理済みということは一目瞭然だろう。

しかしそのような用件であれば、庭に侵入してお勝手から声を掛けて懐中電灯で顔を照らすというような失礼なことをせず、玄関からインターホンを押して用件を伝えれば良いではないか。警察だからといって必要が無いのに勝手に庭に侵入するのは住居不法侵入だ。そもそも現物を見たのなら処理してあることはわかるだろうし、モノはそこにどーんと置いてあるのだから私に隠そうとする意図など無いこともわかるだろうし、いまからそれを抱えて私が逃亡する危険も考えられないのだし。

いろいろと質問に答えて、入手の経緯などを説明して、そのような文句も付け加えて、

「私は法律も調べて違法なものではないと確認したので10年以上も前からあそこにああして置いているんですが、どうぞ必要なだけ調べてください。問題無いことがわかったらそのまま帰ってくださっていいですよ。用事があったらインターホンで呼んでもらえますか?いま肉焼いてるんで。硬くなっちゃってると思うんスよ。お腹がすいてるんです。」

そうして、ご飯を食べてテレビを見ていて、たぶんもう帰ったのだろうと思っていたのだが、けっこうな時間が経ってからふと窓の外に目をやると、なんと、擦りガラスが赤く明滅しているではないか。
パトカーが来てうちの前の狭い道路で赤色灯を回した状態で停車しているのだ。
驚いて外に出てみると、なんだか暗がりの中で警察官も増員されてうちを取り巻いているいる様子なのである。

「なにやってるんですか!近所の人達に事件があったと思われるじゃないですか!なんなの?違法なの?違法だったら私が悪いですけど、そうじゃなかったらあなた、ものすごく失礼ですよ?とりあえず調べるのは自由にやってもらっていいですけど、パトカー。赤色灯すぐ消して。それから警察官がいっぱいうちを取り囲むのやめてもらえますか?」

といって、赤色灯を消してもらって家の周りの物々しい男達に離れてもらって、

「で、何がどうなってるんです?」

と尋ねると、

「本部に写真を送って確認してもらっていますのでもう暫くかかります。」

とのこと。

家に戻ってテレビを見ていると、暫くしてから呼び鈴が鳴った。

警 「まんがいち中に火薬が残っていると火薬取締法違反になる可能性があります。」

あー。
なるほど。
そうきたか。
それは確かに、割ってみたことが無いのでわからない。

警 「なので、回収して処分することになりました。」

トギトギ 「え?でも穴あいてるんだから処理されてるでしょ。火薬が入ってなければ違法じゃないんでしょ?」

警 「いや、回収ということに。」

トギトギ 「令状が無いんだったら任意提出だから、なりましたっていうのはおかしいでしょ。」

しかしよくよく考えてみるとこれから何かに使う予定があるわけでもない。四角ければ良い金床になりそうだが丸いので座りが悪いのである。
そして実はこれを持って3回ぐらい引っ越ししているのだが、粗大ごみに出すとややこしい話になりそうだし、そこらへんに不法投棄するわけにもいかないし、そのたびにウスウス邪魔だな~~と思いながら持ち運んでいたのである。

トギトギ 「まあでも何かに使ってるわけでもないので、そっちからのお願いということならお渡ししてもいいですけどね」(もったいぶって)

警 「では、その方向でお願いします。」

”火薬類の発見届”というものを書くよう依頼された。
自分としては火薬類と思っていないのだが、これを提出することによって私が火薬類だと認識していた証拠にされてしまうのではないのか?という疑義があったので、
”自分としてはこれが火薬類だとは思っていないけれど、もし危険なものであれば警察で処分してください”
的な言い回しの文言を「物件の措置」という欄に付記することになった。

毛布を持って来て、お巡りさん二人が両端を持って車まで運んだのだが、むちゃくちゃ重いことに驚かれていた。
40キロぐらいはあったと思う。1人でも持ち上げられなくは無いので60キロは無かったと思う。
世界大戦のころはこれを兵隊が手で砲身に装填していたという。ものすごい重労働だったろう。

トギトギ 「どこで処分するんですか?」

警 「自衛隊に持って行くことになりました。」

トギトギ 「どうやって火薬があるか調べるんですか?」

警 「いや、調べないです。このまま処分。」

なんじゃそら(^^;

分解してもらって、やっぱり合法だったじゃないか!と胸を張ってみたくもあり、しかしまんがいち火薬が残っていた場合は、たぶん過失処分規定なんか無いと思うけど未必の故意で有罪になったりするのかなあと心配であってみたり。



さて、この出来事は当時もブログに書こうかなとちょっと思ったのだが、刃物とはなんの関係も無い私的なことなのでまあいいかと書かないでいたのであるが、実はこういった砲弾の残骸を加工して包丁を作っている会社があるのだ。
とうぜん、日本ではない。
台湾に。

http://photrip-guide.com/2016/04/05/kinmen-knife/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E9%96%80%E5%8C%85%E4%B8%81
https://www.maestrowu.com.tw/

台湾はもともと、清朝を倒して中国大陸に成立した中華民国で、第二次世界大戦が終わったあと、ソ連の支援を受けた中国共産党に攻撃されて台湾に落ちのびた国なわけであるが、この争いのときに中国共産党の人民解放軍が台湾に向けて撃ち込んだ何十万発もの砲弾を再利用して包丁に作り直しているのである。
日本の対応とくらべると実におおらかなお国柄だ。
記事の写真を見ると弾頭が残っているものまであるので、対応としては日本の方が好ましいと私でも思うが。

どんな包丁なのだろうと気にはなっていたのであるが、なんと此の度、その包丁の現物を送って来ていただいた方がいたのである。
この記事はその包丁の記事の前振りである。
本編の方が短くなるかもしれない。


つづく。
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藝祭2019

東京藝術大学の学園祭に今年も行って来た。

模擬店で買い物をした。オチョコ。

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益子焼は黒や赤茶といった濃色でずっしりとした質感が特徴であるが、このお猪口は淡色で重厚ではなく、厚みはちょうど口当たりの良い感じである。

なんていうことをWikipediaの益子焼の解説を見ながらテキトーに書いてみたが、ほんとは焼き物には大して興味は無いし、「ナントカ焼き」とかいった種類はほとんどわからないし、高いものと安いものの違いなどさっぱりわからない。
ただ、近年店頭に並んでいるものの多くは型に入れて形を作って印刷機で手書き風の模様をプリントしたようなものが多く、面白味が無いのだ。食器は機能・性能が何より大切な仕事の道具では無いので、できれば手造りで風合いの感じられるものが好ましい。

ただし好事家では無いしお金持ちでも無いので、高価なものが欲しいわけでもない。

それで、芸大の模擬店のようなところでは、基本的には相応の価格のきれいなものが販売されているが、端っこでちょっとアラがあったりするものが廉価販売されていることがあるのだ。
しかしこういうところで売られているお安い品物は、製造コストの安い国で大量生産した粗製乱造品とは違うので、シゲシゲと見ればなるほどここかなと思うような多少のアラはあってもそれはそれで面白味として楽しむことができたりするのである。

しかしこのお猪口はフチに何かちょこっとついているのがアラなわけではない。

安いのを買ったのではないのだ。

ほし~~~~!!!!と思って買った品物なのである。

ひとによってはウゲ~~~!!!!と顔をしかめるかもしれない。

このチョボっと出ている部分がいったい何なのかというと、

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こういうこと。



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カワイイ。

孵化して間もない赤ちゃんトカゲが、ちょうどこれぐらいの大きさ。

顔もチョーカワイイ。

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お酒が進みすぎてヤヴァい。


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作家さんは、陶芸学科(でいいのかな?)の修士2年生の、矢津田貴慧さん。
ご実家が窯元で、今年卒業されてそちらで仕事をされるとのこと。

紹介してもらえると嬉しい、ということだったので、Facebookのページをリンクしておく。作品が何点か紹介されている。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100014672943117

このような立体的な焼き物はあまり見かけないのだが、お聞きしてみると、焼く前のまだ柔らかい状態で、立体物をつけた部分が重みで歪んでしまいやすいのだそうだ。

いまは卒業制作で忙しくすぐにはできないが、なんと、オーダーメイドも受け付けてくれるそうだ。

お値段感は直接頼めば、お猪口ぐらいの大きさなら、多少は細かい注文をつけても1万円以内ぐらいだと思う。

ただ、こういう手仕事のものは作業時間で値段が変わるので、すごくディテールにこだわってほしいとか、自分の飼ってる子とクリソツのを作ってほし~!とか頼みたければ、たとえば一点の造形に半日も時間をかけて、材料費とか加工費とかひっくるめて1万円というのは、仕事としてはムリなお願いだろう。それにやったことが無い作業だとうまく行かないリスクもある。

と、

「このブログを見た人からムチャクチャな注文をされて困っている」

といった苦情が来ないように、いちおう申し添えておくが。

それをふまえて、それでもほし~~!!というトカゲ(および酒)好きの方、おひとつどうでしょう。



その他。

今年は展示が少なかったみたい。そのかわり、どう見ても芸祭のために義務的に作った「やっつけ仕事」的なのは無かった。
撮影した作品は「なんとなく」で、ぼくが気に入ったものではあるけど、上位からいくつ、というわけではない。
そもそも撮影自体あんまりしてない。

カワイイ立体。

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Sumb (1)

亀 モザイク画

Sumb (2)

Sumb (3)

イカ モザイク画

Sumb (4)

Sumb (5)

Sumb (6)

Sumb (7)

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オカマ続々報

相手方から、業務中の事故だったので先方の勤務会社が支払うことになった、という連絡があった。

会社の名刺ももらっていたのでホームページや本社所在地を確認してみると、こじんまりした会社のようだった。
とはいえ会社が払うと申し出ているのだからしっかりした会社なのだろう。
こちらは誰に払ってもらってもかまわない。

私からは車が使えなかった日の休業補償と車の修理代を請求していたのだが、先方の会社から自動車修理会社(以下「車屋さん」という。)に対して直接修理代を支払い、休業補償は私に直接支払うという段取りになった。
そこで車屋さんには先方の連絡先をお伝えして、見積書や請求書をそちらに送ってもらうように依頼した。

数日経って、車屋さんから電話があった。

「なんか支払いを26日まで待ってほしいって言ってるんですけど。」

エ”ーーー。

なんじゃそら。

この車屋さんは私の加入している任意保険会社の紹介だから、最悪でもこちらの車両保険で支払えることはわかってくれているのだが、話の筋がぜったいにおかしいよね?
支払われるまで修理した車は返せない。
無料で貸している代車の費用を今から支払が終わるまで請求する。
と言われてもおかしく無い。

とっとと修理した車を返してほしかったし車屋さんを面倒に巻き込むのも悪いしゴチャゴチャ交渉するのも面倒だったので、自分で修理代を立て替えた。
最悪、踏み倒されたら、自分の任意保険の免責額5万円と、これから保険代がちょっと高くなる分が持ち出し損になる。
しかし家も会社もわかっているので、夜逃げしてまで踏み倒すほどの金額では無いはずだ。

事実関係と賠償に関する合意事項を書いた念書みたいなものをこちらで作成する。
やり取りがぜんぶ終わったあとの示談書は相手に作ってもって内容確認させてもらう。
念書みたいなものを印刷して、相手に配達証明郵便で郵送する。

それで26日に支払いされてれば、相手が送ってくる示談書に署名捺印して一件落着だなと思って忘れていた。


昨日がその26日だったのだが、先方の会社のひとから電話があった。







「すみません今日支払日なんですがお金の都合がつかなくて、半額ぐらいしか払えません。」









エ”-----!!!



おまえなー、

払わんのやったらもともと会社なんか関係ないんやから払うとか口挟んでくるなよ。


しかもなに当日になって電話してきてんねん?

オレが仕事の支払いで使う資金で不渡り出したらどうするの?




なんてことは口には出さなかった(と思う)が、



「ダメですね、今日払ってください。払わないのならあなたもう関係無いので〇〇さんと直接話します。メールするので確認してほしいと伝えてください。」



と言って電話を切った。コイツを怒鳴っても疲れるだけで意味がない。


現在この状態(^^;


なお本人にメールを送ると返信はすぐに来たので少し安心。
会社ではなく自分で払うがやはり今日は半額ぐらいしか用意ができないと伝えてきた。

言葉ヅラからは私が高利貸しの借金取りみたいな役回りになってしまっているのだが、見知らぬ他人に無担保の債権を持っているという状態だから、私の立場が最も危険なのだ。
逃げ出されると裁判して債務名義をとらないと取り立てられない。
逃げなくても公正証書作りに行くとか、めんどくさいなー。
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包丁の刃先の厚みを観察してみたよ その2

【C】と【D】を研いだあとの刃先厚の画像。

【C】牛刀
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研いだ後の画像。最終仕上げは4000番。

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1~2ミクロン台ぐらいの幅だった。
4000番の砥粒の粒径の理論値は3~6ミクロンということなので、砥粒の大きさの半分以下の薄さだ。
砥粒が破砕して小さくなるとか砥泥の中でこねくり回すように研ぐとか、いろんな理由が考えられるが、そもそも砥粒のサイズが3~6ミクロンかどうかも確認していない。
撮影した範囲も数十ミクロンの幅なので全体を表しているのかもわからない。


【D】ペティナイフ
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研いだ後の画像。同じく最終仕上げは4000番。

petit01.jpg

petit01_1.jpg

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こちらも4000番で仕上げているのだが、おおむね1ミクロン前後という結果だった。
何故こちらの方が薄くなったのかはわからない。
まあこれも観察する場所によって違うかもしれないのだが。

思ったより刃先は薄くなる。砥粒の粒径より薄くなる。これは確からしい。


研ぎながら観察してみたいなあ。ちょっと難しいかなあ。

機械ほしいなあ。

数百万円するみたいだけどw
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包丁の刃先の厚みを観察してみたよ

刃物の切味について私は「刃先R」と「側面抵抗」という概念に分けて考えている。

「側面抵抗」は刃体を食材に押し込んで行くときに側面にかかる摩擦や圧迫抵抗で、摩擦係数や刃角度や厚みといったいくつかの要素があると考えられ、うまく要素分解・整理できていないのだが、刃線近くの厚みが重要と考えていて、一般家庭で使われる包丁の場合刃線から3㎜の位置の厚みが0.45~0.55ミリぐらいならOKということにしている。
刃角度のことがよく言われるが、包丁の刃先を顕微鏡レベルで観察した画像を見ると、数ミクロン~数百ミクロンの範囲でも段刃になっていたり蛤刃状になっていたりしていて一定では無いものが多いようなのだ。するとそもそも、どの範囲の角度を問題にするのかという議論が必要になる。そして100ミクロン以下の刃先の状態はけっこうな手間をかけるかけっこうな値段の機械を使わないと観察できない。私が毎日お客さんの包丁を研ぐときに確認することは難しい。厚みはわりと簡単に測れる。

「刃先R」は旋盤機のドリルなどに使われる概念で、確立されている概念なので用語として使っているのだが、要は刃の先端の厚みのことである。刃先が薄ければ薄いほど被切断物に接触する面積が小さくなり、一定の力を加えたとき単位面積あたりに加わる力は大きくなる。この力が被切断物の組織の結合力を上回ると組織が破壊される。ものが狭い範囲で点または線状に破壊される様子を私たちは「切れる」と表現している。物理的な現象は「割れる」「壊れる」「ちぎれる」「破れる」といった現象と同じでも破壊されかたの態様によって言葉を当てはめ分けて人が概念区分しているのだ。

刃先Rは300倍のルーペでも観察が難しい。
理屈としては砥石の粒度に相関すると考えられる。1000番の砥石というのは1インチ四方に1000個の穴が開いたメッシュを通過する大きさの砥粒が含まれる砥石ということだ。理論値で14~22ミクロンだそうである。
4000番で3~6ミクロン。8000番で2~4ミクロン。
ここから、8000番で研いで2~3ミクロンぐらいの厚みになるのかなと考えていた。砥泥をたっぷり出して研げば砥粒自体も破砕して小さくなるし砥石当たりが柔らかくなるので2ミクロン以下になる可能性もある。

鉋の薄削り大会の「削ろう会」では例年5ミクロン以下の削り華が出ているので、刃先の厚みが2~3ミクロンとは考えづらい。1ミクロン以下ではあるだろう。
包丁はそこまでの切れ味は必要ではなく、砥粒サイズが14~22ミクロンの1000番程度の中砥石だけを使って研いでいる人も多いので、50ミクロン未満ぐらいであれば包丁の用途として問題無い程度にはよく切れるのではないだろうか。
ちなみに成人の毛髪の太さが80ミクロンぐらいである。

これまではこんなふうに考えていたのだが。

このたび、実際に、使われている包丁の刃先の厚みを観察する機会に恵まれた。
観察機器を利用させて頂いた先の要望で、画像は自由に使っても良いがデータに対する保証はできないので利用させてくれたところの名前は出せない。
電顕ではなく光学式だが5000倍まで拡大表示できる機械だ。光学式だと光が電子より波長が長いせいで0.1ミクロン以下ぐらいになるとはっきり映らないのだが、けっこう満足できる感じで観察することができた。

観察したのは、お客さんから預かっていた、明らかに切れ味が悪くなっている包丁が2本と、うちで使っている包丁2本の、4本。

お客さんから預かったものの1本はヘンケルスインターナショナル ハイスタイルの、全鋼、ステンレス、120ミリのペティナイフ【A】。

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もう一本は、Chef G 240と側面にプリントされた、メーカー不明、割り込み、ステンレス、165mmの三徳包丁【B】。

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私が使っている包丁の1本めは、千葉の古川刃物店で作った160mmぐらいの白紙の三徳包丁【C】。
タモリ倶楽部でよくタモリさんが使っているのと同じもの。これは切れ味は悪くなっていないがしばらく研いでいないものを、研がずにそのまま確認した。

さいご、私のもう一本の包丁は薄刃包丁。堺菊虎。180mm。【D】
薄刃包丁の中でも相当薄い。鋼材はわからないがあまり硬くは無い。
これは北山8000番と天然砥石でちょっと丁寧めに研いだ。

撮影状況はこんな感じ。直上から光を投下して一方向から撮影する。
002_20190805131406fbf.jpg


【D】から順番に紹介する。


【D】堺菊虎 薄刃包丁
研ぎ済み (最終仕上げは天然砥石)

薄刃1

薄刃2

薄刃3

三枚とも同一の写真で、いちばん上が元の写真、真ん中がその厚さを記録したもの、下がアップ。ほかの包丁の写真も同様。
直上から当てた光が反射してくる幅、ということになるのだが。
おおむね1ミクロン以下のようだった。
想像していたより薄かった。


【C】古川刃物で作った三徳包丁。
使用中、切れ味は悪く無い状態で研がずに持って行ったもの。最後にいつ研いだかは忘れた。

古川三徳1

古川三徳2

古川三徳3

1ミクロンちょい。2ミクロンは無い。
たぶん、ふだんは4000番で仕上げていると思うのだが、もしかしたら8000番かもしれない。天然砥石では無いはず。
こちらも想像より薄かった。


【B】Chef G 240三徳包丁
切れ味が悪くなったお預かり品。

預かり三徳1

預かり三徳2

預かり三徳3

厚みはマチマチで、2.5ミクロン~5.7ミクロン。
これでも、想像よりかなり薄かった。切れ味が悪い包丁は数十ミクロンぐらいはあると思っていたのだ。

立体表示させるとこんなかんじに。

牛刀013D

使い込んだ刃先は円弧状ではなくけっこう平らっぽくなっていた。
ちなみにこの立体画像は、ひとつのレンズで焦点を変えて撮影した複数の写真を合成したもの。
光源も撮影方向も一方向からだけで、【C】【D】ぐらいの薄さだとわかりやすい形状になってくれなかった。


【A】 ヘンケルスインターナショナル ハイスタイル ペティナイフ

ペティ1

ペティ2

ペティ3

これだけなにか別のもののような雰囲気を醸している。

本来は倍率をもう少し落として観察した方がいいのだろう。しかし比較する意味では他と同倍率の方がわかりやすい。
しかしこれでも30ミクロンぐらいなのだ。これでも想像よりは薄いのである。
ここまでは使っていたわけだから、10~30ミクロンでもガッツで使えないことは無いということになるだろうか。

立体画像はこんなふう。

ペティナイフ3D

平ら。
この形状も切れ味の悪さの一因ではないだろうか。
刃先Rという概念を使ってきたが、もしこの刃先の形状が円弧状だったとしたら、もう少し切れ味は良かったかもしれない。
刃先を円弧状と仮定することに問題があるかもしれないので、これから「刃先R」という言葉を使うのはやめて単に「刃先の厚み」ということにする。

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オカマ続報

みなさまご心配頂き感謝しております。

病院には行ってませんが体は完全体で事故の影響はありません。

荷室に仕事道具満載でしたが荷崩れも無く積荷の損害ありませんでした。

エンジンルームがまだ覗けていないので車の状態はわかりませんが、液漏れやオイル漏れはなく、各ドアの開け閉めに以前と比べて異常は無いのでフレームも問題無さそうです。

車は修理屋さんに入れて代車を出してもらいました。


木曜日の18時ごろの事故だったのですが、そのあと大問題だったのは、金曜日丸一日先方の保険屋から連絡が無く、なんと先方も電話に出ない、会社にも電話がつながらない、ということでした。

トンズラ????

自分の保険で車両保険に入ってたので最悪そっちで修理できたわけですが、こっちの保険を使うと保険料もあがるし5万円の免責額は持ち出し損になります。

腹が立ったので会社と本人に何回も電話をかけまくっていたら会社の方に繋がって、土曜日の午前中にようやく本人に連絡がつきました。

「どないなっとるんじゃドアホー!!」←ママ

と大怒鳴りして、「車検切れてて保険が効かないんだろう」と詰めたら、「車検も自賠責も入ってるけど任意保険が切れていた」と弁明しよりました。大怒鳴りしたのは、激おこしてビビってもらわないと優先されない危険があるのでわざとです。怒るのはしんどいのでふだんは滅多に怒りません。

車屋さんは、外観見たかぎりだけど修理代は20~30万ぐらいじゃないかということなので、相手が会社をやめてトンズラするような額では無いでしょう。
保険屋が間に入ってくれないので個人でやり取りしないといけないのがめんどくさいのですが、なんとかなる方向に動いています。
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オカマ掘られた!

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ぼくのポルシェがオカマ掘られてしまった!

今のところ大きな問題はないけど、ぶつかって凹んでるところがですね、バンパーなんだけど。ふつうの車だったらそれだけなんだけど。
知ってる人なら「ヤヴァっ!」と思ってもらえると思うのだが、、旧サンバーはポルシェスタイルのRR車なので、ちょうどあそこらへんにエンジンが積まれているのだ。

火とか煙とか変な液とか吹いてないし、30分以上自走して帰って問題無かったから、大丈夫だろうとは思うのだが、凹んでいるリアバンパーがエンジンルームハッチになっているので開けて見ることができない。
なので、さすがにこのまま乗り続けるわけにはいかないので早く修理に出して代車を出してもらいたいのだが、先方の保険屋さんからまだ連絡が無いのが心配。「車検証を積んでない」とか言ってたのが心配。
まんがいち車検切れてたら保険きかないよね。。

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10円玉1~2枚問題を考えてみた

包丁を研ぐときの角度としてよく「10円玉1~2枚」と言われる。

実際のところどうなのだろうか。

まあ突っ込みどころ満載のものすごくアバウトな表現であることは言うまでも無いのであるが、それは言わないことにして。

まず必要な要素と数値を決定する。

(1) 10円玉1枚の厚さ
(2) 包丁の身幅
(3) 包丁の厚さ


(1)+【(3)÷2】=高さ
(2)=斜辺の長さ

この要素を満たす直角三角形のθ角が、研ぐときの角度ということになる。


(1)は実測値で1.5mmであった。

10円玉前横


(2)は包丁によって異なり、また、同じ包丁でも計る位置によって異なる。

身幅とは包丁の刃線から峰までの幅のことだ。

あまり研ぎ減っていない刃渡り16センチ~21センチぐらいの家庭用両刃包丁を数本計ってみたところ、いちばん広い部分で45mm強ぐらいだった。

今回は45mmと仮定する。

(3)は峰の部分の厚みとする。これも包丁によって異なるし、包丁によっては峰の部分でも刃元から先端にかけて薄くなっているものがある。

量産包丁では、比較的安価なものが2mm、高級品は2.5mmの鋼板が使われている場合が多い。

2mmないし2.5mmであるが、大きな差にはならないので計算では2mmを採用している。

包丁横縦


台の上にセットした仮の図はこんな感じになるだろう。10円玉2枚の場合である。

セット図


これに各要素の数字を入れると、

セット図2

となる。

高さは10円玉1.5mm×2=3mmに、包丁の峰の厚みの半分である1mmを足した4mm。

この条件でθ角を計算すると、

5度

約5.1度という計算になった。
両刃包丁であれば刃角度はこの2倍、約10.2度ということになる。

あれ、けっこう良い数字じゃない?(笑)

私は刃線際3ミリの位置の厚みが0.45mm~0.55mmの範囲になるように調整しているのだが、底辺が0.5mmで斜辺が3mmの二等辺三角形の頂角は10度弱なのだ。
だいたいいっしょだなあ(笑)


なお、10円玉1枚で計算した場合は約3.1度になる。両刃でも刃角度は6度ということになる。
ほんとにこの角度であれば浅すぎだ。

3_1度



「10円玉1~2枚」

などというようなアバウトな説明は、

「質問者をわかったような気にさせるための方便である」

と、これまで私は考えていた。

しかし今回の計算であながち的外れとも言えないな、と、考えを改めさせられた。


ところでこの「10円玉1~2枚」説のほかに、刃角度に関して巷間に流布している言説に、「20度~30度ぐらい」というものがある。「15度ぐらい。」と言われることもある。

これについても刃先のごくわずかな糸刃の角度という意味であれば決して的外れな数値では無いと思う。

ただしサバイバルナイフのような頑丈さが必要な刃物じゃないかぎり、刃角20度で1ミリ幅も小刃がついていてはならない。せいぜい0.1~0.3ミリぐらいまでだ。

これは「10円玉2枚ぐらい」の片面5度ぐらいの角度で刃線際3ミリぐらいまでの厚みをちゃんと抜いたうえで、仕上の刃付けとして少しだけ研ぐときの角度なのである。
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鍔屋ダマスカス包丁

鍔屋のダマスカス包丁。




ダマスカスみたいな模様が出る理屈は刃境線とか刃文なんかと同じなんだけど、基本的には隣接する異種鋼の硬度の違いのために、同じ砥石で同じように研いでも、金属表面の表面粗さに違いが出て、光の反射率に差が生まれるからだ。柔らかい方が乱反射するので曇る。


例外はエッチング。
エッチングは腐食によって金属の色自体が黒っぽく変わる。反射率が変わるのではなくて、光の吸収率が変わる。

白という色は、ものの表面が全ての波長の色を反射している状態。
ものの表面が光を正反射するほど平滑だったら白ではなく鏡面に見える(ものの表面に当たる前の光源の色が白であれば白く見えるが)。
赤は、赤の波長の光を反射している状態。黄色は赤と緑の光を反射している状態。

黒は、ものの表面が全ての波長の光を吸収して反射しない状態。
灰色は、全ての波長の光をちょっと吸収してちょっと反射している状態。

この灰色がエッチングによって得られる灰色。


ものの表面の粗さが大きくて光をハデに乱反射する場合も、目に届く光の量が少なくなるので、光の一部が吸収されるのと同じように灰色に見える。

エッチングの灰色具合は腐食反応の強さで変わるので、表面粗さとは必ずしも同じではない。
だから隣接する異種金属で硬い方が柔らかい方より色が濃くなる場合もある。
また、砥石で研いで模様が出る場合よりも色が濃く、模様がくっきりする。

だから、エッチング処理してあるダマスカス包丁を砥石で研いで、元と同じように見せるのは不可能だ。


エッチングでダマスカス模様を出しているのはヘンケルスのボブクレーマーモデル。あの包丁の造りも模様も嫌いじゃないけど、側面なんか研ぐもんじゃないと言われてるみたいで、そういう意味ではキライ。もし研ぎに出てきたら遠慮なくゴリゴリ研ぎますが。
ほかには包丁ではちょっと記憶に無い。
黒打ちがエッチングと同じ作用ではあるから、それならいっぱいあるが、ダマスカス模様を目立たせるためにエッチング処理をしている包丁はほかに記憶が無い。
ナイフはよくある。強度のため刃体が厚く小刃がくっきりしているナイフであれば側面は研がないという方針は有りだ。
エヴァンゲリオンコラボ展で刀鍛冶が作っていたロンギヌスの槍もエッチングで模様を出していた。


多くの新品のダマスカス包丁はショットブラストという方法を使っている。
たくさんの小さなビーズ玉みたいな”メディア”をスプレーみたいな機械で包丁の表面に当てて曇らせるのだ。
曇らせたくない場所にはマスキングテープを貼っておく。
この方法でも砥石で研ぐのと同じように硬い部分と柔らかい部分の表面粗さに違いが生まれてダマスカス模様が目立つようになる。
ショットブラストは表面全体にムラなくメディアを当てることができるのできれいな仕上がりになる。砥石だと力加減でムラができやすいし、表面に少しでも凹凸があると研ぎ方に関係なくムラができるのだ。
ショットブラストで綺麗に見えている刃物も砥石で研いでみるとムラムラになってしまうものがほとんどだ。
口悪く言うとムラ隠しに使えるのである。


砥石でダマスカス包丁をきれいに研ぐのはけっこうめんどくさい作業ではあるのだが、楽しい作業でもある。
今回の動画の包丁は何度か研ぎに出してもらっているので表面のエクボみたいなものは無くなっている。

ポイントは以下のような感じ。

・砥石がムラなく当たるように表面を整える → 荒砥石の作業
・下研ぎの傷が残らないように段階的に砥石の番手をあげてきれいにして行く → いろんな砥石を使う
・中砥石以降は砥泥が多い砥石の方がいい
・人造砥石は仕上砥石は番手をあげすぎない → あまり高番手になると硬軟の差が無いテカテカの鏡面になってしまう
・天然砥石は質の良し悪しが如実に出る

まだ私自身ぜんぜん上手ではないのだが、以上については間違いでは無いと思っている。
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柳刃包丁 反りと裏スキの修正 大工事

2ヶ月ほど前に兵庫県の実家に帰省したとき、見慣れないヤヴァい刺身包丁を発見してしまった。
うちの実家には中古の包丁が集まるヒミツの仕組みがあって、その中の一本なのだと思うが。
実家には面直ししていないナゾの中砥石が一本あるだけなのに、これ以外に薄刃包丁も使っている。出刃包丁もあったかな。
片刃包丁使うなら裏押し用に仕上砥石と面直し砥石は必需品ですよと常々お客さんに言っているのに、自分の実家がこの体たらくなのであった。
その砥石だけではごまかしきれない何本かを東京に持ち帰って、よく使うであろう薄刃なんかはすぐに研いで送り返したのだが、この柳刃だけは見ただけでゲンナリしてほったらかしていたのだが、動画撮影のネタと考えれば良い包丁だろうと考えをあらためて、ようやく着手した。
研ぐというより修理。
工賃を時給で計算すると買う方が安かったかも。



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