FC2ブログ

ナゾなハサミ

いつも熊野神社へ行く木曜日が雨などのため休みが続き、お客さんからチラホラと催促の電話が掛かって来るようになったので、先週は臨時で金曜日に出店した。

関西弁のおじさんがふらりとやって来て、

「散髪用のハサミもできるのん?」

と尋ねた。

「できますよ。」

「ほなあとで持ってくるわ。」

数刻の後お持ちになったのは変わったアームの形をしたプロ用のシザーだった。

DSC05296.jpg

DSC05298.jpg

刺繍用の鶴形の鋏なんていうのがあるが、それに似た感じだろうか。


しかしこれは装飾のための形というわけでは無いようだ。

ふつうはこういうふうに持つが、

DSC05301.jpg

こんな持ち方もするそうだ。

DSC05303.jpg

刃を手前に向けて持って、カットする。
指を通してみるとこのとき小指がいい塩梅でアームに掛かるのである。

「良かったらもう一本持ってくるから。」

と言っておじさんは飄々と去って行った。

これがけっこうナンギなハサミで、おじさんが行ってしまってから試し切りをしてみると、良く切れてしまう。欠けなど無いし刃も摩耗している感じはしない。反りも狂っていない。
どこがどうおかしいのかわからない(=どうして欲しいのかわからない)刃物というのが宇宙で一番厄介な預かり物だ。
よくよく試してみると先端だけ少し切れ残ることがあったので、先の方だけ研いだ。
研ぐということは刃物を削り減らして形を変えるということで、盛って増やすことはできない。
理美容のハサミなんかは特に、一日何千回もチョキチョキしても手に負担が無いように最低限の大きさと軽さで作られていて、立体的な全体構造で切れるようにしてあるから、刃体の三分の一も研ぎ減ったら使えなくなる可能性がある。たぶん平気で5万円以上とかすると思うし。だから切れる部分は研ぐべきじゃないのだ。

取りに来たきたおじさんに作業の次第を説明して試し切りしてもらった。

「うん、ええなあ。」

幸い見立ては間違っていなかったようだ。

「まあとりあえず、実際に使って試してみてもらえますか。」

「うん、ほんならこれも頼むわ。」

と言って、もう一本の同じ形のハサミを置いて行った。
そちらは刃線全体で切れ味が落ちていることが確認できたので普通に研ぐだけで良かった。

研ぎ終わったら連絡をするという約束だった。
ところがまだ電話をかけていないのに、ふらりとおじさんが現れた。

そして、

「これ、やっぱりアカンわ。」

と言った。
ラップに包んだ毛束を取り出して切ってみせると、毛束は刃の二枚の刃体の間に滑り込んでしまった。

「こう切るのはいいねんけど、こう切るとアカンねん。」

ふつうに刃の先端を向こうに向けて持つと切れるのだが、刃先が手前を向くように持つと噛みこんでしまうのだという。

「このへん(刃体の中ほど)からすべってしまうから、先だけ研いだって言うてはったけど、やっぱりぜんぶ研いでもらえます?」

試してみた。
すると、なるほど実際に噛みこんでしまうことがある。切れることもあるが。
毛束が少し分厚いせいかもしれない。
そういうこともたまにある。

布切り用の裁ち鋏で、二枚重ねにした雑巾を切りたいというお客さんがいた。しかしそもそも鋏はそんな分厚いものや硬いものを切るための道具では無いのだ。鉄板を切る金切り鋏や木の枝を切る剪定鋏というものがあるが、こういった鋏は硬いものを切ることを前提に作られた特殊な例外で、逆に薄いものや細いものはうまく切れない。

分厚いものを切ろうとすると二枚の刃体を外に押し広げようとする力が強く働いてしまうので噛みこんでしまいやすくなるのだ。
改善策はふたつ考えられる。ひとつは反りを大きめにすること。もうひとつはネジを強めに締めること。
反りを大きくすると却って噛みこみやすくなるのではないかと思うかもしれない。隙間が広がるから。しかし実際には反りが大きい方が鋏を閉じるときに二枚の刃体を擦り合わせる方向に働く力は大きくなる。しかしそのせいで刃先の摩耗は早くなる可能性があるし、反りが大きすぎるとまっすぐに切りづらくもなる可能性がある。
ネジを強めに締めるというのは更にリスキーで、先端が常に強めにこすれ合うので切っ先だけが摩耗して反りの曲線が狂ってしまい切れなくなる。先端だけが余計に摩耗して切れなくなるとそこだけ曲げて直すのはまず無理で、短く切り詰めるしかない。さらに強引にネジを締めまくって以前の記事で紹介したハサミのように触点が平らになってしまったようなものもある。理美容シザーでここまでムチャをする人はまずいないと思うが。

いずれの方法にせよ鋏自体にダメージを与えない程度のわずかな調整に限定しなければならない。
しかしわずかにしか調整しないということは、劇的な改善は期待できないということだ。

そもそも、雑巾二枚重ねというような構造的にムリな分厚さのものを切ろうというのではなく、ひとつまみぐらいの毛束なのだから、あらためてよく考えてみると切れないということ自体がおかしいのである。

んんんんん~~~~~~????

なんでだ?

ふつうに持てば切れるんだから、刃の鋭さも十分なはずだし反りも狂っていないはずなのだ。
刃を手前に向けて持つと何か変わるのか?


あっ!!!!!!

変わるじゃん!!!!!!


スンゴイことに気づいてしまった。


この状態でハサミを閉じると、

DSC05306.jpg

親指を動かすと手の平から離れる方に押し出すような動きになる。
すると親指を通している動刃には要ネジを支点にして、刃体が開く方向の力が働いてしまうのだ。

こういうこと。

011_20190310094953f5e.jpg

つまり、この持ち方をすると左利き用のハサミを使うのと同じことになってしまうのである。

ナント!
構造問題じゃん。

気づいて良かった。うっかり反りを大きめになんかしてしまうと逆にもっと噛みこみやすくなっただろう。
使い方自体がおかしいと普通の鋏であれば言いたいところだが、この鋏はこういう使い方もするように作られているわけだからそうも言えない。

とりあえず、支障が無い程度にいつもより少しだけネジを強めに締めて、刃先が毛髪に刺さるようにピンピンに研いでみた。
裁ち鋏は鋭くしすぎるとサテンみたいなツルツルした布が逃げてしまうことがあるので仕上は2000番ぐらいまでにするのだが、10,000番まで使ってピンピンの刃先にしてみたのである。
しかしネジの締め加減は緩すぎない程度なので抜本的な改善は期待できない。ピンピンの刃先はどれぐらい持つかわからない。

お客さんにはコレコレコウと気づいた原因を説明したので、使い方でも少し改善してくれるといいのだが。つまり親指をやや手の平側に引くように切ってみてもらいたい。

一本づつ仕上げてお渡しして、二本めはお店に持って行ったのだが、とりあえず初めに渡した鋏は

「ええわ。」(←良いという意)

ということだったので、ほっとした。

しかしモヤモヤは解消しない。

どう調整するのが正解なのか、メーカーさんにも質問してみようと思う。

テーマ : 髪型
ジャンル : ファッション・ブランド

ハサミの研ぎに関するご質問

鋏の研ぎ方について質問があった。
勝手で申し訳ないが一部引用してブログ記事で回答させていただく。


****************

時々裁ちばさみを研いでもらいたい、という要望があるのですが、現在はお断りしています。ただ、安い事務用ハサミは、動刃も静止刃も刃線が直線なので、小刃の角度に気を付ければ研げるので、これは包丁砥ぎのサービスとして砥いでいます。

裁ちばさみは、動刃の刃線が直線ではなく、アールを持っているので、下手に研ぐとアールを崩してしまうのではないかという恐れがあります。

貴殿のyoutubeで見させていただいても、動刃のアールを崩さずに砥ぐにはどうしたらよいか、読み取れませんでした。

何かご教示いただければ幸いです。

****************


「動刃」「静刃」は理美容シザーで使われる用語だ。

理美容シザーは親指と薬指を輪っかに入れて使う。主に親指を動かしてハサミを開閉するので、親指を入れる方の輪っかの先にある刃を「動刃」といい、小指を入れる方の輪っかの先にある刃を「静刃」というのである。
裁ち鋏では親指を入れる輪っかと四本指を入れる輪っかがあるが、どちらも動かすからだと思うが「動刃」「静刃」といった呼び分けはされていない。文具用の鋏には左右対称の形状で左右の区別が無いものもある。


さて質問についてだが、文中の「アール」は刃体の広い面のシルエットに見える刃線のカーブを意味すると考えられる。
鋏の刃体は立体的な曲面で構成されていてそれぞれに意味があるので、どの「アール」のことかがはっきりしないと議論がテレコになってしまうのである。
仮にこれを「刃線R」と呼ぶことにする。「刃先R」と混同しそうでややこしいのだが。

刃線Rはぶっちゃけて言ってしまうと直線でもかまわない。

ベルヌーイの螺旋理論を利用したという触れ込みのフィットカーブという鋏が一時評判になったが、要はカーブしていないと「切断点」が尖先に近づくほど力が必要になる、カーブが強いと先端でも軽い力で切れる、という理屈である。
画期的な発明のように持ち上げられていたが、そんなことはベルヌーイ螺旋理論を持ち出さなくてもわかっているから、鋏の刃線Rはむかしから緩やかにカーブしていて、先端にかけてカーブが強めになっている。フィットカーブという鋏はベルヌーイ理論を強調するためにカーブが強いせいで身幅が広くずんぐりむっくりした形になってしまっているが、身も蓋もないことを言ってしまうと、そもそも文具鋏なんかでは、切るために強い力が必要なものは切ってはならない。ふつうのナイフで切るか刃元で注意深く切るべきだ。

多少のカーブがあった方がベターである、というだけなのだ。
むろん、不必要に刃線Rを直線にしてしまうことは避けるべきだ。
機械研ぎ器で切れるようになるまでがむしゃらに研ぎまくった結果まっすぐになってしまった、なんていうのは論外である。

刃線のRを崩さずに研ぐ方法は、鋏だけでなく包丁やナイフも同じであるが、立体軸でいうところのロールの軸を変化させながら研げばいい。(ロール、ピッチ、ヨーは説明がめんどくさいので各位調べてください。)
研ぐときに、右手で鋏を保持して、左手の指を添えて砥石に当てている場合、右手を上下させる動きである。
私はロール軸とピッチ軸の変化で研ぐ場所や刃体を当てる角度を変えている。研ぎながらヨー軸を動かすことはほとんど無い。砥石によってヨー軸を変えることはあるが、一つの砥石では基本的に一定である。

刃線Rを崩さないように研げるということは刃物研ぎの基本的な技術であるが、切れない鋏を切れるようにするための本質的な問題ではない。

切れない鋏を切れるようにするためには、まず、なぜその鋏が切れないのかという原因を見極められなければならない。
一定の角度で小刃を研ぐことで切れるようになる鋏は、刃線の損耗が原因で切れなくなっていた鋏である。
現実には刃線の損耗で切れなくなることがいちばん多いと思うので、小刃を研ぐことで切れ味が回復することが多いの。小刃を研ぐにしても、コピー用紙などを切る場合はごくわずかな繊維の切り残しがあっても千切れるので、文具鋏はそれほど精度は必要とされないのに対して、布は糸が一本でも切れずに残ると繋がったままになってしまうので、裁ち鋏は文具鋏と比べてずっと高い精度が求められる。私はまだメガネはかけていないが乱視なので、鋏を研ぐときにはヘッドルーペで小傷が無いか確認している。

しかし鋏が切れなくなる原因は刃線の損耗だけではない。
最低限「反りの狂い」と「裏スキ角(造語)の狂い」は見極められなければならない。
このふたつと刃線の損耗で、ほとんどの切れない鋏の切れない原因はカバーできると思うので、まずはこれらの三つについて理解できている必要がある。
しかしこのほかにも、触点が摩耗していたり要ネジが変形していたり要ネジのネジ穴が広がっていたりと、通常考えられない部分に問題があるものもある。
やはり鋏の全体的な構造を理解している必要がある。
簡単には説明できない。

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

アリエナイ(^^;

分解しようとしたら、アレ?なんか違う。

002_20161118105154286.jpg



よく見ると、

001_20161118105152305.jpg


違うだろ・・・・・



もう一本も、

005_20161118105158b78.jpg


006_20161118105208dcb.jpg


前後はひっくり返ってないしワッシャもあるけど、チガウ。。。


ちなみに上のネジを取り外したのがこの状態。

004_201611181051575d2.jpg

スプリングワッシャがさみしそう・・・

下のはちょっと多めでこの状態。

008_20161118105211058.jpg




ちなみに新品は、こう。

009_20161118105213efb.jpg


これは庄三郎のだから、たぶんパーツ点数は一番多いんだけど。
メーカーによってはワッシャを含めて4つのものもある。
にしても、ダテに部品が多いんじゃなくて、多いなりの意味はあるんだからさあ。


このハサミは、所有者じゃないひとが持ってきたので、本人が無くしたのか、前の研ぎ屋が無くしたのかはわからない。
もし研ぎ屋が無くしたんだとしたら、表の錆も落とさずにこの状態で返したってことになる。


【ハサミを分解する方へ】
ハサミのネジは大事なので、分解するときは、決して無くさないように注意してください。

・部品が転がっても無くならないような場所(状態)で、分解する。
・バラした部品を入れておく小皿を用意しておく。(マグネットトレーなどがあればベター)
・分解しても、ワッシャやベアリングが、本体やほかのパーツにへばりついていることがあります。よく観察して、それらしいものがあったら、爪楊枝や竹串などをつかって傷つけないようにはがしてください。
・裁ち鋏はこんな状態でも切れなくはありませんが、性能は悪くなります。
・理美容鋏なんかは、ウスウスのワッシャが1枚無いだけで、切れなくなる場合があります。


テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

茅の輪

003_20151218174835d26.jpg

「茅の輪(ちのわ)」というそうだ。

左に1回、右に1回、左に1回、合計3回まわってから参拝すると、半年間の穢れが落ちる、とのこと。

渋谷区神宮前の青山熊野神社にて絶賛設置中。
みんなも茅の輪をくぐって穢れを落とそう!


木曜日はここで刃物研ぎを実施しています。
お近くの方は参拝のついでに包丁をご持参ください。
今年は24日が最終です。クリスマスイブですが関係ありません。



錆びた剪定鋏の動画をアップした。



ビフォー
DSC06645.jpg

アフター
DSC06646.jpg

研ぎやTOGITOGIは結果にコミットします!


しかし「結果にCommitします」というのはよくよく考えた倒したコピーなのろう。
「ギャラント」とか「トラスト」といったよく聞く単語だと、カタカナでも景品表示法に抵触しそうだ。
日本語で「保証します」とか「約束します」とかいうのはもっての他だ。

”あの広告”はあくまでインパクトのある映像が主で、施設を貸すだけじゃありませんよ、ちゃんと目標を立てて結果を出すためのサポートをしてますよ、ということを、法律に触れない言い回しで表現するために搾り出したコピーなのだろうと思う。

当店も研いでもムダな可能性が高いものはあらかじめお断りするようにしているが、歯医者のようにレントゲン写真を撮るわけじゃないので、錆がどれぐらい深いかはかなり研ぎ進めてみないとわからない。
研いでみたけどダメだったからお金は頂きませんとばかり言ってはいられない。
だから結果保証は残念ながらできない。
とはいえ、見た目をピカピカにするのではなく良く切れるように道具本来の機能を回復向上させる方向で、がんばっている。

そういう意味で「結果にコミットします!」を解釈していただきたい。

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

カットシザー

001_201308062229157b1.jpg

カットシザーのお客さんには、なんで安いの?と聞かれることが多い。

修理の仕事は付加価値がつくわけではないので、基本的に作業時間で値段を決める。

ハサミの研ぎ代が包丁より高い理由は、

・刃が2枚ある。
・分解組み立てにも時間がかかる。
・組み立てないと試し切りができないので、問題があった場合は二度手間がかかる。
・プロ用ほど高精度が求められるので二度手間の率が高い。

といったことだ。

しかし作業自体は同じハサミである裁ち鋏や刈込鋏と変わらず、カットシザーが特別手間がかかるわけではない。プロが大切に扱っているので、むしろ短時間で終わる物が多い。

すると私の場合はほかの鋏とのバランスで値段を決めるから、カットシザー専門で研いでいる人より割安になるようだ。


理美容師の皆さんも自分の道具は自分で研いでみてはどうだろう?
シザーは下研ぎ用に#700ぐらいと、仕上げは#2000とか#3000ぐらいの砥石があればいい。
#10,000とかいう人もいるが、カミソリ並みに研ぐと髪に引っ掛かって逆に使いにくいのだ。
基本的な研ぎ方を覚えて日常の研ぎは自分でやって、大きく欠けたときや落として曲げたときだけプロに直してもらえばいいのに、と思う。

刃物の善し悪しは、研がなければ評価できない。

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

裏錆

ビフォーアフター

上が錆を削った方。
下も少し削ってるけど、まったく切れない状態。
003_20121116143029.jpg


拡大。ルーペで見るとこんな感じ。凸凹。
004_20121116143028.jpg

005_20121116143027.jpg

006_20121116143026.jpg


ハサミは表なんか錆だらけでも切れ味には関係ないけど裏だけは錆させちゃいけない。
掘るように削るんだけど、片刃包丁と違って刃境が見えないから鋼の層の厚みがわからない。削り過ぎて貫通したらオシャカ。だから何度も同じような修理はできない。

内装の仕事に使ってるということだが、何か錆びやすい使い方をしてるんだろう。
使い終わったら水や汚れを拭って、防錆用のシリコンスプレーを吹いておくといいんじゃないだろうか。

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

ハサミいろいろ

シルクフラワーという乾繭でつくる造花を教えている先生。
それを造るハサミにはこれがいいとのこと。

001_20121107123239.jpg

鋼板を打ち抜いてプレスして作った量産品なので品質は手造りのこんなのの方が
http://www.masutaro.com/jkm580.htm

いいはずだが、

「軽い」「長さがちょうどいい」

といった理由でこれがいいそうだ。
開閉が重いものや引っかかるものがあるので、軽くならないだろうかというご相談。

要がハメ殺しなので難しいがネジに交換すればなんとかなるかもしれない。
最悪分解して壊れてもいいという了解を得て2本あずかってみる。


一本は切っ先あたりに引っかかる感触があったが、えぐれていた。
鋼材が比較的やわらかいのだと思う。

002_20121107123239.jpg

これは研ぐだけでまあまあいい感じになった。

もう一本は開閉が重く、個体差によるものと思われた。
そこでネジ式に改造。

003_20121107123238.jpg

感触はかなり良くなったと思う。調整もできるようになった。
しかし改造と研ぎ代で新しいハサミ2本分ぐらいに・・・

価値があったかどうかは実際に暫く使ってみて判断して頂くしかない。


裁ち鋏。
切っ先あたりの裏に錆があって切り残しが出ていた。

004_20121107123237.jpg

これぐらいで極薄の裏地や芯地でもスカっと切れる。

005_20121107123236.jpg


ところがこの鋏、刃元あたりから活用して4枚重ねのサラシを切るのに使うとのこと。
噛み込まないよう反りをなるべく小さく戻す方向に調整してみたが、残念ながら満足な完成度にはならなかった。


別の裁ち鋏。増太郎のSLD。厚物を切るのでわざと寸を詰めたもの。

008_20121107141137.jpg


SLDは日立金属製のダイス鋼。金型などに使われるステンレス系の鋼材。
鋏というのは包丁やナイフとは違って、刃先をまな板のような硬いものにぶつけて凹ませることは少ない。二枚の刃体がこすれ合うことによる磨耗が最も激しい。
ダイス鋼は耐摩耗性に優れた鋼材なのでハサミには非常に良い鋼材だと思う。庄三郎の「硬刃」というシリーズもSLDを使っているらしいがHRC60そこそこなので特に硬いわけではない。

切っ先あたりの裏。

007_20121107123235.jpg

ステンレスも錆びる。
ステンレスの錆は性質が悪い。「孔食」といって範囲は広がらないが放置すると奥深くまで錆が進行する。
炭素鋼は広く赤錆になるので奥深くまで進む前に気づいて対処することが多いが、ステンレスは錆びないと妄信して苛烈な環境に放置すると、遠目には小さな黒いゴミがポツポツついてる程度にしか見えなくても修復が難しい状態になってしまっていることがあるのだ。

写真は既にだいぶ削ったところ。これ以上削ると刃線や反りの狂いがひどくなる。錆が深いのであとどれぐらい削ればいいのかわからないし。

薄物は切らないようなのでこれぐらいで妥協してもらう。


理容シザー

006_20121107123253.jpg

理美容のシザーも構造は同じだけど、めんどうくさいのは研いだ後の磨き。研ぐより手間がかかる。小傷が見えなくなるまでには磨けない。小刃の角を削って蛤刃にするのとか。
切れ味とは関係無い手間で研ぎ代が高くなるって知ってました?

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

ハサミの鋭さ

廉価版の打ち抜きステンレス材で作られた華鋏です。

001_20121025180903.jpg


こんな刃になっていました。

002_20121025180902.jpg

あまり多くはありませんが、なぜこのハサミはノコギリ刃になっているのでしょうか?


他にノコギリ刃になっている刃物は、どんな物があるでしょう。
文字通りノコギリ。パン切り包丁。
ナイフにもセレーションブレードのものがあります。

いずれも、刃を対象物に強く押し付けず、横にスライドさせながら徐々に切り進む刃物です。
横にスライドさせるときに、対象物の表面を削るようにかき切ります。そのとき、表面への食い込みがいいように、ギザギザになっているのです。


しかし、このハサミのノコギリ刃の役割はそれとは異なります。


ハサミというのは特殊な刃物です。包丁でもノコギリでも、切る対象物はまな板や作業台の上などに固定されていますが、ハサミで切る対象物は、多くの場合空中に浮かんでいたりして固定されていません。その対象物を、まず二枚の刃体で捕まえる必要があります。

このハサミは捕まえた枝や葉っぱが滑って逃げないようにノコギリ刃になっているのです。


刃角度はかなり鈍角でぜんぜん鋭くありませんが、細い枝ならこれで十分にサクサク切れます。

用途にもよりますが、ハサミはそれほど鋭く無くても良く切れます。

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

庄三郎訪問

庄三郎に電話して、要ネジだけ入手できるか聞いてみた。


「私、研ぎ屋なんですが、要ネジがバカになってる鋏があるんですが、ネジだけ買えますか?」

「基本的には、預けてもらってこちらで全部修理させてもらうことになるのですが。」

「アリャま。もう研いで、組み付けるときに気付いたんですよ。お客さんには部品の実費下さいとだけ言ったんですが。二重で料金貰うわけにはいかないし・・・そちらの修理代がわからないと私が勝手にお願いすることもできないんで。」

「修理代は鋏を見ないとわからないです。」

「そうですね。ともかく一度、お持ちします。それからお客さんに決めてもらいます。」



行ってきた。

008_20121009213045.jpg


足立区。うちから約30分。
国道4号線を少し入ったところにある。


斯く斯く然々説明してモノを見せると、

「うわーなんだこれー。」と。


新しいネジを専用のヤットコで取り付けてくれてるところ。

009_20121009213044.jpg

へーそんなので回すんですね。と感心したら、

「そこらの道具屋さんに売ってるよ。うちに来る研ぎ屋さんはみんな持ってる。焼いて赤めて曲げて、みんな自分が使い勝手のいいように調整して使ってるんだよ。」

ザンネン。持ってません。検討します。だけど火床が無いので焼いて赤めてはできません。


「通りにくかったらネジ穴削って調整してね。」

刃体のネジ穴は手造りなので個体差があるのだ。

スプリングワッシャーはやはりどの鋏にもついているとのこと。他のメーカーの裁ち鋏では見ないから、たぶん庄三郎のオリジナル。刃体を軽く押し付けるので隙間が開きにくく、そのため、布を噛み込みにくい。理美容シザーは同じような役割をするバネがついてる物が多い。


“お預け”になると面倒だなあと思っていたがあっさり解決した。行ってよかった。


「おいくらでしょう?」

「あげる。」

「え?」

「いいよ、あげます。遠いところわざわざ来たんだから。」


ありがとうございました。

だけどどうせ部品代はお客さんに貰うんで。というと、交通費もらっときなと。

せっかくそう言ってくれたので、ありがたく頂戴しました。

尚これは私の人徳なので、誰が行っても貰えるなどと思わないように。(本来は部品売りもしてません。)


「直してばっかりいないで新しいの売ってよ。」

「いい鋏は簡単に直ってスパーンと切れるようになっちゃうんで(笑)」


実は研ぎ屋は刃物メーカーの敵。

壊してしまうヘタクソな研ぎ屋の方が、メーカーにとってはありがたかったり、とか。


ネジ一式。
順番が一箇所間違ってますが。

010_20121009213043.jpg


ダメ夫くんとヨシ子ちゃん。

012_20121009223711.jpg

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

マヂデヤヴァイ。

これはなんでしょう。

004_20121009024005.jpg

正解は、裁ち鋏の要ネジ。

↓ これがパーツを分解したぜんぶ。

003_20121009024006.jpg

銀色のワッシャは前に修理した研ぎ屋さんが追加したもののようです。
あとこれは庄三郎の鋏なので、もとはスプリングワッシャーがついてて無くなっているかもしれません。全製品の仕様はわからないので元々ついてないものもあるかもしれませんが。


で、何がヤヴァイかというと、

これが普通の要ネジです。

001_20121009024008.jpg

四角いですよね。上のはエグれて舐めてしまってるのです。

ネジを締めると共回りするのです。

微調整ができません。


パーツだけ取り寄せできるかどうか、庄三郎さんに相談に行ってきます。

テーマ : ハサミ
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

BROさん

Author:BROさん
東京都練馬区の研ぎ師です。
営業案内
ご依頼はこちら
ご意見・ご質問はこちら
ご利用頂いたお客様からのご意見ご感想はこちら

カテゴリ
最新記事
最新コメント
検索フォーム
QRコード
QR
リンク