片刃で裏スキのある刃物は、なるべく元のシェイプを崩さないように研がなければならない。

丸包丁。本惣ともいうらしい。なぜ本惣というのかはわからない。
表具師の方が伝統的に使われている刃物らしい。
レザークラフトマンの利用も多いそうだ。

004 (2)

通常は写真の右の辺がもっとまっすぐ。これは研いだあとの写真なのだが、研ぐ前はもっと斜めだった。


裏はこんな状態。
はじめは裏押しが切れていた。

004 (3)

紙や布や革をまっすぐ切るための刃物だから、直線が大事なはず。
裏押しが切れてしまうと、刃道が曲がってしまう。

裏スキがどんな形に窪んでいるかはだいたいわかると思う。これはもともとの刃物のシェイプに準じた形になのだ。
刃物の形を大きく変えてしまうと、刃線が裏スキが深い部分と浅い部分を横切ってしまう。
すると裏押しを作るためには一番深い部分まで裏を押さなければならなくなる。

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ギリギリなんとか裏を出した状態で、これで刃線を直線にできる。
しかしちょっと研いだらすぐに裏切れするので、都度裏押しもしなければいけない。

裏を研ぎ減らすこと自体はそれほどナンギではないのだが、研ぎすぎるとハガネの層が無くなる「ハガネ切れ」になってしまうおそれがあるのだ。

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この丸包丁もまっすぐな辺の側が強く研がれていて、ミミのあたりがハガネ切れしていた。

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ミミが切れないのはマズいので、このあともういちど研ぎ直してなんとかハガネが出る状態にした。

これは全ての裏スキのある刃物に共通の問題である。
片刃でも裏スキが無ければこういう問題にはならない。
出刃包丁で、裏を研ぎすぎて先の方がハガネ切れしてしまっているものを何度か見たことがある。
出刃包丁や刺身包丁は牛刀や三徳包丁以上に、元のフォルムが崩れないよう注意して研がなければならない。

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薄刃包丁 まっすぐじゃない?

「刃線がまっすぐじゃない。まんなかあたりが少し凹んでいる。」

という薄刃包丁。

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一見してもよくわからないのだが。
凹んでいるといえばそうかもしれない。

こういう包丁はまず、裏がちゃんと平らになってるか確認する。
ピカピカ光ってるからといって平らとはかぎらない。

面直しした中砥に当ててみると、

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やはり凹んでる。

ゴシゴシ研ぎ込んで裏押しを作るしかない。

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これぐらい出れば大丈夫。

切刃と裏押しを平らに研げば刃線は必ずまっすぐになる。

完成。

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薄刃包丁本刃付け!

久しぶりに動画つくりました。



下田在住のお客様。週末に用事で東京までお越しになったついでに、薄刃包丁を2本お持ちいただいた。
動画は新品の本刃付け。
時間があったのでけっこう丁寧に研いだ。良い包丁だったし。

ふだんも研ぎ抜きはするが、基本的に切刃までゴシゴシ磨かない。切れ味は変わらないが見た目の研ぎ痕がくっきり残る。
ただ、和包丁はどうせご本人が研ぎながら使わなければだめなもので、きれいにしてもいっかい研げばムラは現れてしまう。高級割烹料亭でお客様の前で包丁を振るうとかいうのでないかぎり、研ぐたびに切刃をゴシゴシこするなんてめんどくさいことはやってらんないだろうから、研ぎムラのできる包丁はムラが見えるままお渡しした方が、ご自分で研ぐにあたってはその部分が当たればいいのだとわかって、むしろ良いかもしれないとも思っている。

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和包丁は裏が命

一見きれいに見えるかもしれないが

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よく見ると

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刃元の欠けが取り切れない。

なぜなら、


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裏もこんなふうに錆びてるから。
もしかすると貫通しているかもしれない。
錆の深さは研ぎ込んでみないとわからない。

表の錆なら、ふつうは見える範囲を研ぎ込んでいけばそのうち消える。
しかし片刃の合わせ和包丁の裏は、錆を無くそうと研ぎ減らしすぎるとハガネが無くなってしまう。

もしこれがカンナや布切り鋏だったら、刃道に欠けがあると使い物にならない。ダメ元で錆が消えるまで研ぎ込んでもいいかもしれない。
しかし包丁なので、ちょっと欠けがあって引っ掛かりを感じたとしても切れないわけではない。
妥協して使っていただきたい。


ほかにも、

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こんなふうに裏に錆が巣くっている。

拡大。

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研ぎ減るにつれてこの裏錆が刃線に出てきて、ブツブツと欠けた状態になる。


合わせ包丁の裏は錆びさせてはいけない。

私は、オークションで中古の刃物を物色することがあるが、片刃の刃物で裏の錆がキツそうなもの、裏の状態がわからないものには、基本的に手を出さない。

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惜しい!

「これ、研ぎに出してもらったことありましたっけ?」

「いいえ、初めてです。」

「へー・・・・」

あるお客さんがもってきた包丁を、しげしげと眺めてみた。
身幅の半分以上まで砥石を当てて、しっかり刃肉を落として研がれている。
しかし肝心の刃先はつぶれていて、大きめの小刃がついたような状態になっている。
指を押し付けてスライドさせてもまったく傷つかない。

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「誰が研いだんですか?」

「自分で研いでみたんですが、ぜんぜん切れるようにならないんです。」

「えー、自分で研いだんですか!」

ふつう、こんなふうに研げる人は研ぎ屋に頼まないのではないかと思うのだが。

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「・・・惜しいです!研ぎ方は非常にいいです。もうちょっとですね。荒砥石は持ってないんじゃないですか?」

「いえ、荒砥石も持っています。鎌倉彫をするので研ぎはするんですが。やっぱりステンレスだからでしょうか?この包丁は切れるようにならないんです。」

実に惜しい!!
あとちょっとなのに(笑)

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「なるほどー!彫刻刀と同じように研いでるんでしょうね(笑)」

自分でも研いでいるという包丁を研ぎに持ってこられるお客さんの、99.99%は、刃先だけ角度をつけて研いでいる。
ところがこのお客さんは側面だけベタっと砥石に当てて研いで、刃先に角度をつけていないのだ。
片刃ならこれでいいのだが。

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・側面はたいへん上手に刃肉を落とせている、スバラシイ。毎回研ぐたびに側面も研いだほうがいい。
・刃先だけ少し大きめの角度をつけて研がないと、このままカエリが出るまで研ぎ込むと刃が薄くなりすぎてペラペラになる。
・この包丁は全鋼で、彫刻刀や割り込み包丁ほどハガネが硬く無い。

というようなことをひとくさりブッて、

「がんばってこれからも自分で研いでみて、わかんなかったらまた持って来てください。」

といってお渡しした。
基本的に大変お上手に研いでいらっしゃる。
研いだあとの包丁も撮影したがそう変わり映えしないので載せないでおく。

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なんじゃこりゃ2

預かったときにはくすんでいたので、なんでこんな刃境線になってるのかわからなかったのだが。

なるほどダマスカスだったのか。
薄く研ぐとこんなふうになるのか・・・・(笑)

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模様をクネクネさせるために先の尖ったハンマーか何かで反対側から叩いたのだと思う。
なんかカワイイ。

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いい包丁

この仕事をしていると

「良い包丁ってどんなの?」

と聞かれたり、

「あんまり良い包丁じゃないんだけど」

とか

「これって研いでもらうほど良い包丁かしら?」

とか

「この中でどれかいちばん良い包丁選んで(それを研いで)」

とかしょっちゅう言われる。

洋包丁の値段は、

・大きさ
・鋼板の厚み
・柄の構造
・製造の手間
・鋼材

ぐらいの要素でだいたい決まっているようだ。

しかし値段とは別に「良い包丁」の私にとっての定義はもっと単純だ。「持ち主に愛される包丁」である。

高価できれいな包丁でも飾られているだけで使われていない包丁は私にとっては「良い包丁」に見えない。いや、飾って愛でられているなら、それはそれで良い包丁かもしれない。高価でカッコイイ白一水本焼き尺二の柳刃包丁を買ってみたけれど、狭いキッチンで刃を欠いてしまい、研ぐ技術が無いので仕舞い込んでいると錆びてしまった、というような包丁は最低だ。包丁が悪いわけではないし、必ずしも持ち主が悪いとも言い難いのだが、持ち主にとってそれが良い包丁じゃないことは間違い無い。

真っ黒に錆びて刃道は大きく変形してしまい、柄も取れてしまっている、おそらくそれほど高価でも無かったであろう包丁を、

「研ぎ代と柄の交換で3000円かかりますが。」

と言っても

「直してちょうだい」

と渡されるような包丁の方が、私からすると良い包丁である。
どんな素晴らしい新品の包丁もその包丁には代えられないのだと思う。



ただ、問答無用で良い包丁だ、と思うものも中にはある。

これもそういう包丁。

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「頂き物で錆びてしまっているんだけど、研ぐほどのものかしら。」と持って来られた。

源正金の牛刀。関のOEMでは無い、本物。

いやいや、ぜんぜんもう、むちゃくちゃ良い包丁ですから。
それにしてもよく残っていたもんだ。
包丁は一生物とか孫子の代までとかよく言われるけど、良い包丁をしっかり研いで良い状態で使い続けると、一般家庭でも10年ぐらいでかなり小さくなってしまうと思う。良い包丁ほど使われるので残らない。
使わなくなって錆をまとうと捨ててしまう人も多いと思うし。

黒錆は残しておくかどうか確認したが、せっかくなのでひととおり磨いてほしいというご依頼であった。

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正金は、何がすごいかっていうと、厚みの抜き加減がスバラシイのだ。

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こんなに薄く研ぎ抜いている包丁は他には見たことが無い。

刃線に沿って3mm幅のマスキングテープを貼って、刃線から約3mm離れた部分の厚みを、先端から刃元まで何か所か測ってみた。
小さい方が平均して0.5㎜台の前半。
大きい方は、刃元付近以外は0.4㎜台だった。
斜辺が3mmで底辺が0.5㎜の二等辺三角形の頂角は10度以下になる。
こういう薄さになると、へなちょこな鋼材では簡単に塑性変形してしまう。
硬すぎたり粘りが無いと割れてしまう。
こういうところまで絶妙に成形するとき、鋼材の質や焼き入れの良否が問題になるのだろうと思う。

源正金はもう会社が無いので入手困難だ。
そういえば一竿子忠綱の牛刀もウスウスだったなあ。いつか入手して測ってみよう。

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タダフサ

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タダフサの三徳包丁は素晴らしい。
何が素晴らしいかって、形が素晴らしいのだ。

ふつうの包丁は側面を砥石に当てて研ぐと、

こんな感じになったり、

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こんな感じになったりする。

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しかしタダフサの包丁はこんな感じになるのだ。

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当たり面が湾曲するのは側面がまっ平らないしきれいな曲面になっておらず、うねりがあるからだ。(当て角や力加減や砥石の平面崩れの問題もあるが。)
うねりがある理由はいろいろ考えられるのだが、材料の鋼板がもともと平らではないから、という理由が一番ではないかと思う。
平らではないといっても、通常は砥石に当ててみるまで目視でも指で触れても判別できないような程度だから、実用上の問題は全く無い。

タダフサの包丁の側面にはなぜうねりらしいうねりが無いのだろうか。
材料の鋼板そのものの平面精度はほかの包丁と変わり無いと思う。
おそらく、側面全体をかなり精緻に研ぎ込んでいるのだ。
タダフサの包丁は、刃縁の肉が薄い。
おととい、スーパーで貯めたポイントで安く買ったという新品の柳宗理の包丁の刃付けをしたのだが、新品の段階で刃線から3mmぐらいの部分の厚みはおおむね0.7mm台ぐらいだった。
いっぽうこの写真のタダフサの包丁は使用品で、研ぐ前は細かい欠けもいくつかあったのだが、「研いだことは一度も無い」とのことだった。おなじあたりの厚みを調べると0.5mm台ぐらい。これは相当な薄さなのである。たった0.2mmの違いなのだが、使ってみると誰でも明らかな違いを感じると思う。

材料の鋼板は同じようなものでも、刃先がこれほど薄くなるように側面全体を精緻に研ぎ抜いた結果、タダフサの包丁は、もとの鋼板にあった微妙な凹凸が無くなっているのではないかと考えられるのだ。
逆にいうと、本来あるのがあたりまえの側面のうねりが、タダフサの包丁には無い。
研ぎ屋としてはそういうニッチなところでスバラシイ!と感激するのである。

こういうものをテキトーな研ぎ屋に研がせると、刃先だけ大きな角度をつける乱暴な刃付けをしてしまい、元の包丁の良さが台無しになってしまうので注意が必要だ。簡易研ぎ器の類を使うこともあまりお勧めできない。

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府中市出張

こんどの日曜(10/29)と月曜日(10/30)に、府中市出張予定です。
お近くの方、切れない包丁・ハサミ持ってお越しください。

追記:雨天中止なので日曜は行かないかもしれません。
追記:月曜も雨予報になっちゃった!ヒ~~~!!!

追記:雨天中止の場合翌週に変更します。11月5日(日)/6日(月)

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当日オートバイご購入のお客様、包丁一本無料でお研ぎします!!(笑)


場所:東京都府中市白糸台2-11-3

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ふるーい菜切包丁

菜切包丁はけっこう古いものが多いのだが、これは60年ぐらい前のものとのこと。
年月を考えればきれいな状態だと思う。
刃がそれほど減っていないのであまり使われていなかったのではないだろうか。

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“伊豆守”という見たことの無い銘。

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 「伊豆で買ったんですか?」

と尋ねると、

 「栃木で。」

伊豆の鍛冶屋さんのものを栃木の刃物屋さんが売っていたのだろうか。

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この包丁、異常に薄い。
先端の厚みは1ミリ以下だった。
今まで見たなかでもいちばん薄いかもしれない。
薄い菜切包丁は好きなのだが、下手な鍛冶屋さんの打ったものだとハガネを出すのが大変な場合がある。
1ミリ以下の厚みで3枚の割込みになってるわけだから、鍛冶仕事については詳しくないのだが、技術的にけっこう大変な作業なのではないかと思う。

この包丁はさらに、すごく柔らかかった。
ふつうのものは薄くてももう少しパリっと張りがあるのだが、欧米のフィレナイフのようにフニャフニャなのだ。

で、研いでみてわかったのだが、

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なんと、割り込みではなく全鋼だったのだ。
刃先のあたりがナミナミの波線状に見えるが、刃体がまっ平らじゃないので小刃をつけたときの段差にムラができているだけなのである。たぶんあんまり切れ味良くないんじゃないかなあ。薄いからまあまあ切れると思うけど。

考えてみると60年前というと1950年代で、東京オリンピックも開催されていないし新幹線も走っていないしアームストロング船長も月に降り立っていない、まだ戦後の復興期だ。
朝鮮戦争は休戦しているので特需であるていど復興しているかもしれないが、グーグル画像で昭和30年を検索してみると、まだまだぜんぜん貧乏そうだ。
物資が豊かではなく、日立金属の白紙だの青紙だの、武生特殊鋼材のVG10だのといった刃物用高級鋼材なんていうしゃれた鋼材なんてまだ無かったか、あっても庶民の手に届くものではなかったのかもしれない。
だけど活気に満ちているなあ。高度経済成長期がはじまった頃で、日々目に見えて暗い時代から立ち直っている時期じゃないだろうか。ある意味ではこういう時代が一番楽しいのかもしれない。

残念ながら商業的な観点からは良い包丁では無い。しかし時代背景を考えると感慨深い包丁である。
実用に供される道具としてほとんどのものは消耗され捨てられたと思うので、こういう形で残っていることは貴重だと思う。
切れ味や刃持ちが少々甘かったとしても、これを60年ちゃんと保管してきたお客さんが安易に捨ててしまうなどということは考えられない。
こういう包丁は、幸せな包丁だと思う。

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