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包丁の刃先の厚みを観察してみたよ

刃物の切味について私は「刃先R」と「側面抵抗」という概念に分けて考えている。

「側面抵抗」は刃体を食材に押し込んで行くときに側面にかかる摩擦や圧迫抵抗で、摩擦係数や刃角度や厚みといったいくつかの要素があると考えられ、うまく要素分解・整理できていないのだが、刃線近くの厚みが重要と考えていて、一般家庭で使われる包丁の場合刃線から3㎜の位置の厚みが0.45~0.55ミリぐらいならOKということにしている。
刃角度のことがよく言われるが、包丁の刃先を顕微鏡レベルで観察した画像を見ると、数ミクロン~数百ミクロンの範囲でも段刃になっていたり蛤刃状になっていたりしていて一定では無いものが多いようなのだ。するとそもそも、どの範囲の角度を問題にするのかという議論が必要になる。そして100ミクロン以下の刃先の状態はけっこうな手間をかけるかけっこうな値段の機械を使わないと観察できない。私が毎日お客さんの包丁を研ぐときに確認することは難しい。厚みはわりと簡単に測れる。

「刃先R」は旋盤機のドリルなどに使われる概念で、確立されている概念なので用語として使っているのだが、要は刃の先端の厚みのことである。刃先が薄ければ薄いほど被切断物に接触する面積が小さくなり、一定の力を加えたとき単位面積あたりに加わる力は大きくなる。この力が被切断物の組織の結合力を上回ると組織が破壊される。ものが狭い範囲で点または線状に破壊される様子を私たちは「切れる」と表現している。物理的な現象は「割れる」「壊れる」「ちぎれる」「破れる」といった現象と同じでも破壊されかたの態様によって言葉を当てはめ分けて人が概念区分しているのだ。

刃先Rは300倍のルーペでも観察が難しい。
理屈としては砥石の粒度に相関すると考えられる。1000番の砥石というのは1インチ四方に1000個の穴が開いたメッシュを通過する大きさの砥粒が含まれる砥石ということだ。理論値で14~22ミクロンだそうである。
4000番で3~6ミクロン。8000番で2~4ミクロン。
ここから、8000番で研いで2~3ミクロンぐらいの厚みになるのかなと考えていた。砥泥をたっぷり出して研げば砥粒自体も破砕して小さくなるし砥石当たりが柔らかくなるので2ミクロン以下になる可能性もある。

鉋の薄削り大会の「削ろう会」では例年5ミクロン以下の削り華が出ているので、刃先の厚みが2~3ミクロンとは考えづらい。1ミクロン以下ではあるだろう。
包丁はそこまでの切れ味は必要ではなく、砥粒サイズが14~22ミクロンの1000番程度の中砥石だけを使って研いでいる人も多いので、50ミクロン未満ぐらいであれば包丁の用途として問題無い程度にはよく切れるのではないだろうか。
ちなみに成人の毛髪の太さが80ミクロンぐらいである。

これまではこんなふうに考えていたのだが。

このたび、実際に、使われている包丁の刃先の厚みを観察する機会に恵まれた。
観察機器を利用させて頂いた先の要望で、画像は自由に使っても良いがデータに対する保証はできないので利用させてくれたところの名前は出せない。
電顕ではなく光学式だが5000倍まで拡大表示できる機械だ。光学式だと光が電子より波長が長いせいで0.1ミクロン以下ぐらいになるとはっきり映らないのだが、けっこう満足できる感じで観察することができた。

観察したのは、お客さんから預かっていた、明らかに切れ味が悪くなっている包丁が2本と、うちで使っている包丁2本の、4本。

お客さんから預かったものの1本はヘンケルスインターナショナル ハイスタイルの、全鋼、ステンレス、120ミリのペティナイフ【A】。

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もう一本は、Chef G 240と側面にプリントされた、メーカー不明、割り込み、ステンレス、165mmの三徳包丁【B】。

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私が使っている包丁の1本めは、千葉の古川刃物店で作った160mmぐらいの白紙の三徳包丁【C】。
タモリ倶楽部でよくタモリさんが使っているのと同じもの。これは切れ味は悪くなっていないがしばらく研いでいないものを、研がずにそのまま確認した。

さいご、私のもう一本の包丁は薄刃包丁。堺菊虎。180mm。【D】
薄刃包丁の中でも相当薄い。鋼材はわからないがあまり硬くは無い。
これは北山8000番と天然砥石でちょっと丁寧めに研いだ。

撮影状況はこんな感じ。直上から光を投下して一方向から撮影する。
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【D】から順番に紹介する。


【D】堺菊虎 薄刃包丁
研ぎ済み (最終仕上げは天然砥石)

薄刃1

薄刃2

薄刃3

三枚とも同一の写真で、いちばん上が元の写真、真ん中がその厚さを記録したもの、下がアップ。ほかの包丁の写真も同様。
直上から当てた光が反射してくる幅、ということになるのだが。
おおむね1ミクロン以下のようだった。
想像していたより薄かった。


【C】古川刃物で作った三徳包丁。
使用中、切れ味は悪く無い状態で研がずに持って行ったもの。最後にいつ研いだかは忘れた。

古川三徳1

古川三徳2

古川三徳3

1ミクロンちょい。2ミクロンは無い。
たぶん、ふだんは4000番で仕上げていると思うのだが、もしかしたら8000番かもしれない。天然砥石では無いはず。
こちらも想像より薄かった。


【B】Chef G 240三徳包丁
切れ味が悪くなったお預かり品。

預かり三徳1

預かり三徳2

預かり三徳3

厚みはマチマチで、2.5ミクロン~5.7ミクロン。
これでも、想像よりかなり薄かった。切れ味が悪い包丁は数十ミクロンぐらいはあると思っていたのだ。

立体表示させるとこんなかんじに。

牛刀013D

使い込んだ刃先は円弧状ではなくけっこう平らっぽくなっていた。
ちなみにこの立体画像は、ひとつのレンズで焦点を変えて撮影した複数の写真を合成したもの。
光源も撮影方向も一方向からだけで、【C】【D】ぐらいの薄さだとわかりやすい形状になってくれなかった。


【A】 ヘンケルスインターナショナル ハイスタイル ペティナイフ

ペティ1

ペティ2

ペティ3

これだけなにか別のもののような雰囲気を醸している。

本来は倍率をもう少し落として観察した方がいいのだろう。しかし比較する意味では他と同倍率の方がわかりやすい。
しかしこれでも30ミクロンぐらいなのだ。これでも想像よりは薄いのである。
ここまでは使っていたわけだから、10~30ミクロンでもガッツで使えないことは無いということになるだろうか。

立体画像はこんなふう。

ペティナイフ3D

平ら。
この形状も切れ味の悪さの一因ではないだろうか。
刃先Rという概念を使ってきたが、もしこの刃先の形状が円弧状だったとしたら、もう少し切れ味は良かったかもしれない。
刃先を円弧状と仮定することに問題があるかもしれないので、これから「刃先R」という言葉を使うのはやめて単に「刃先の厚み」ということにする。

テーマ : 包丁研ぎ
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変わったナイフ

こういうナイフ。

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別にそんなに変わってないじゃないかと思うだろう。
私も思った。

物の形には意味がある。
ポイントが峰側上部に向いていてやや反っているナイフは、押したり突いたりして切る動作に適している。
ナイフで典型的なのはスキナーだ。
これは狩猟で使われるナイフで、動物の皮(スキン)を剥ぐときに反りの部分を押し込んで切っていくから、こんな形になっている。
欧米のシェフズナイフは日本の牛刀と比べるとポイント(切っ先)が峰寄りになっている。そして牛刀と比べて刃線に直線部分が少なく、全体が曲線気味になっている。これは俗に「欧米は押し切りだから」というような理由であるよりも、切り方が違うからだと思う。

↓この動画の1分30秒ぐらいのところでスライスの方法を説明している「ロッキングモーション」というやつ。



先端をまな板に当てたままロッキングチェアーでゆらゆらするみたいに刃元を上下させて切る。
この切り方だと刃線が全体に緩やかな曲線になっている方がいいのだろう。
和食の板前さんが書いている伝統的な包丁の使い方の本では、包丁をまな板と水平に上下させて切ると説明されている。だから菜切包丁や薄刃包丁の刃線はまっすぐで良いのだ。牛刀は明治時代以降に食肉文化とともに日本で普及した形の包丁なので、ポイントが少し刃線寄りに下がって直線部分が増えたのかなと推測される。さらに日本の調理スタイルに合う形にアレンジされたのが三徳包丁だ。

さて、はじめのナイフに戻ろう。
スキナーという特殊な例を挙げたが、多くのナイフは実際のところ用途が特化されておらずいろいろな使い方をされるものなので、ポイントが峰側か真ん中あたりかということにそれほど大きな意義は無さそうなものが多いのである。作った人、使う人のデザイン的な好みの問題であったりする。
逆に言うとかなり特異なデザインの場合には何か意味があるのだろうと推測されるのである。
そしてこのナイフはかなり特異なデザインだったのである。

実はこれが正しい姿。ツイッターみたい。

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そう、直線の側に刃がついているのである。

しかも片刃。

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反対面はフラット。

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カエリを落とすのに少し砥石に当てたような痕跡があるが、角度はついていないのだ。
表も裏も側面はホローグラインドで凹んでいて、”裏”に小刃がついている。表には小刃がつけていない。裏押しも無い。
左利き用の裁ち鋏と同じような構造。

フローリストナイフと言うそうだ。
実は先端を欠いてしまって直線気味になっているが、元々はもっと内反りの曲線になっていたらしい。
左利き用ではなく右利き用だ。

残念ながら研いでいるところも研いだあとも、写真も動画も無いのだが、こういう小さくて内ぞり気味になったものは砥石を横にして立てて、側面を使って研いだりする。そして左手が使えれば左手で持って研ぐ。だいぶ普通じゃない研ぎ方になるのである。

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本焼き

ちょっとした事情でお盆前の週に兵庫県伊丹市の実家に帰省してきた。
平日に関西に来たのは久しぶりで、せっかくなので地元ではあるがちょっと観光してみることにした。

実は刃物の町堺を廻ったことが無かったので行ってみた。
阪堺電車という路面電車が走っていて、その沿線近傍に有名な刃物店が軒並み点在しているようだった。駅でいうと3~4駅ぐらいの範囲なのだが、駅と駅の間隔がバスの停留所ぐらいしかないので歩いて回ることができる。
平日の昼間であったがこの日は炎暑で、路面電車の走る広い通りには人の姿がほとんど無く、バグダッドカフェのワンシーンのようであった。
お店はどこも入口を閉め切っており人の気配が無い。買い物の予定は無いので中に入るのは気が引ける。おずおずと引き戸を開けて入るがやはり客はいない。
冷やかしなら酷暑なのでまだいいかもしれないが、どちらかというと暑苦しかったであろう野次馬の客に、何件か覗かせていただいたどのお店も嫌な顔ひとつせず気さくに対応してくれた。

水野鍛錬所さんではツナギを着た職人さんが話し相手をしてくださった。
さりげなく本焼き六寸の和牛刀がショーケースに入れられていたので、参考までですがと値段を聞いてみたら、税込みで8万円ちょっととのこと。OMG!

本焼き包丁について世間で言われている噂には実は迷信じみたものが多いのではなかろうかと私は疑っている。たとえば本焼きと合わせ包丁では本焼きの方が硬いという噂があるが本当なのか。尋ねてみたところ、同じ鋼材でも本焼きの方が硬いだろうとのお考えであった。
包丁の本焼きは刀と違ってかなり研ぎ減って小さくなっても使えなくてはならない。刀剣は身幅が三分の一も研ぎ減ってしまうとハガネの有る無しとは関係無く物体としての強度が著しく劣り武器として役に立たないから、大きく研ぎ減るという想定は必要無い。だから刃線際のわずかな幅にしか焼きが入っていない細直刃という刃文もある。しかし包丁は半分ぐらいまで研ぎ減っても使えてほしい。せめて三分の一ぐらいは。すると土置きして焼きが入らず柔らかいままにする部分の面積は控えめにならざるを得ない。柔らかい部分を残すのは刃物全体が硬いと破損しやすいためだから、硬い部分の面積が広い本焼き包丁は、多少でも壊れにくいよう焼きが入って硬くなる部分の硬さを少し控えめにするのではないだろうか。
そんな想像をしていたのである。私自身は本焼き包丁を持っていないし、検証のために購入するにはだいぶ高価なので、想像していただけである。
しかし作っている鍛冶屋さんにして硬いというのだから、その可能性が高い。
しかし硬いとしてもそれは機能的な優位性と関係ない。
本焼きの優位性として、合わせ包丁における鍛接時のストレスが無いので、鋼材の良さを最大限活かしきることができるといった点があるようだ。なるほど。ふだん合わせ包丁のグネグネ曲がったやつらと悪戦苦闘している身にとってはたいへん素晴らしい利点だ。

しかし研ぎ屋という立場から、本焼き包丁の最大の価値は、研いでいると浮き出てくる刃文の面白さである。ダマスカスはケレン味が強すぎて趣に欠ける。刃境線は創意工夫の余地がない。
本焼きで、表の土置きを多くして裏を少なめにするということはできないのだろうか。もちろん焼き入れすると裏に曲がってしまうだろうが、そこは何とかしていただいて。
それができれば表にはかなり自由な刃文を描くことができると思うのだ。山鳥毛のような刃文を描いた先丸蛸引きなんかができたら(ケレン味たっぷりだが)、50万円以上でも買いたいという人はいっぱいいるに違いないと思うのである。


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ヒツ鉈

このまえ「ヒツ鉈」というものを研ぐ動画をアップした。



これは、使い勝手を試してみたくてヤフオクで自分で購入したものだ。

ヒツ鉈の「ヒツ」というのは、柄と刃体を接続する穴の部分のことである。「櫃」だろう。
丸ヒツと角ヒツがあって、地域によって違うらしい。作り方にも違いがあるようだ。

あとで調べてみると、これはヒツ鉈というより「柄鎌(エガマ)」と呼ぶ方がふさわしいような気がする。

ヒツ鉈は刃体の部分がもっと鉈らしい形をしている。
先端に突起のついたトビ鉈と比べてみると、

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この柄鎌は刃線が大きく内反りしていることがわかるだろう。
真ん中のものも少し内反りになっているが、柄鎌ほど顕著ではない。ちなみにこれは越前鉈である。
右端がオーソドックスなトビ鉈で、刃線はストレート。けっこう研いだので元の形がどうだったのか自信が無いが。
ちなみにトビ鉈には刃線が出っ張ったものも見かける。実に研ぎにくそうだ。

内ぞり気味の鉈はあるが、柄鎌ほどあからさまには反っていない。
柄鎌の刃鉄は、突起の下の部分にまで伸びている。偶然そうなったはずは無く、あきらかにそこまでハガネ伸ばして刃物として使用するために伸ばしている。
この点において、越前鉈のように刃線が内ぞり気味の鉈の先端に突起がついたものとは構造的に異質だと言えるのである。

もっとも、柄鎌とヒツ鉈という言葉は、必ずしも厳密に区別されているわけではない。
地域ごとに呼び名が違う場合が多いようで、この手の形の鉈を全て「ヒツナタ」と呼ぶ地域や「エガマ」と呼ぶ地域があったりするのだ。
もっというと、少なくとも昭和初期あたりまでは「ヒツナタ」型と「エガマ」型の両方が同時に使われている地域なんて無かったのではないかと思う。鉈というのは比較的多用途に使える携帯刃物だ。山仕事に柄鎌とヒツ鉈の両方を持って行くとは思えない。
つまりある地域にはヒツ鉈という言葉しかなく、別の地域には柄鎌という言葉しかない、といった事情があったと考えるのだ。

ヒツ鉈と柄鎌という言葉を使い分ける必要があったのは、全国各地に鉈や鎌や斧を販売していた土佐や越前だろう。形を区別して定義しなければ注文が受けられない。

むらの鍛冶屋」という本によれば、土佐の鍛冶屋は明治から昭和初期にかけて日本全国に鉈や斧や鎌や鋸を出荷していたそうだ。ご当地の形でなければ受け入れられなかったようだ。交通が発達していなかった時代で、四国各地は自転車で回って地域ごとの山林業者を回って刃物を勉強し、作った刃物は荷車に乗せて手で引いて足で売って回ったというからすごい。四国以外の地域にも出向いて、地域ごとの刃物を作って出荷していたようである。
ところで、いろいろな形の刃物を作っていたせいなのか、いろいろ調べてみても「土佐型」という形の鉈や斧は見聞きしたことが無い。土佐で作られた刃物は北海道から九州まで全国に出回っているようなのだが、土佐の独自の形の刃物が全国で受け入れられて売られているわけではないのである。

さて話を戻すが、たとえば土佐打刃物協会のホームページで「伊那鉈」と「諏訪鉈」が別の形の鉈として紹介されている。ところが信州打刃物協同組合のホームページでは土佐で「伊那鉈」と紹介されている形が「諏訪鉈」と紹介されていたりする。どちらが正しいのだろうか。
この場合は強いて軍配を上げるならご当地である信州側になるだろうが、土佐における認識が間違いだと言えるわけではない。土佐ではそういうふうに区別していて、土佐においては正しいとも言える。
ヒツ鉈と柄鎌というようなものになると、どちらかに軍配を上げること自体が間違いでは無いかと思う。

しかしヒツ鉈と柄鎌に関しては、上に挙げたような構造的な違いがあるようなので、私としてはヒツ鉈と柄鎌はとりあえず区別して呼ぶことにする。

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鉈の補強

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鉈の目釘が折れてしまった。

数年前に入手して、研いで、そのままほとんど使わずに置いてあった鉈なのだが、春ごろから鉈と斧を実際に使う練習をしてみている。
2~3回使ったら目釘が折れてしまったのだ。

目釘は二か所で、3mmのステンレスボルトを使っていた。
ボルトとナットで留めて、研ぐときに外せるようにしていたのである。
折れた理由は、おそらくガタがあったためだ。衝撃が目釘にダイレクトに伝わったのだろう。

友達に話すと、やはりボルトなんていうものは目釘としては弱いのではないかと言われた。
しかしやはり研ぎ好きとしては分解できる構造は維持したい。
そこでこんどは4mmのボルトを使うことにした。


しかし考えてみると、ふつうの鉈も真鍮やド鉄の釘を目釘に使っている。これらがステンレスボルトより強いとは思えない。ネジ山を切っている分太さを差し引いて考えるにしてもそんなに圧倒的な差だとは思えない。
やはり主な理由はガタつきがあったせいだろう。

逆に目釘が強すぎると中子がダメージを負ってしまう。
たとえばハサミの要ネジでも、ちゃんとしたものは刃体本体よりも柔らかい素材のものが使われていて、酷使されても刃体の穴が広がったりすることはなく要ネジがすり減るようになっている。
日本刀の目釘なんか竹である。煤竹という丈夫なものが使われるそうだが、それにしたって金属より強いわけがない。刀は鉈より数段重たい刃物だ。日々鍛錬を重ねた侍が両手でしっかり握って渾身の力を込めて敵に打ち込むといった使い方をするので、鉈よりも絶対に負荷は大きいにはずだ。そんな戦場で命を託す武器に強度が不十分な材料が使われるわけがない。
刀の目釘が鉄じゃないのは、錆防止の目的も大きいのではないかと思うが、何より竹で実用的に問題無い強度があるということが前提としてあるはず。


ところで目釘の折損もさることながら、柄自体にも目釘穴を中心に亀裂が入ってしまっていた。
他の鉈でもこういう亀裂が入っているものをよく見かける。

鉈の柄は、縦にスリットが刻んであって、そこに鉈の中子を挟み込んで、横から目釘を噛ませて留めるという構造になっている。
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目釘にガタつきが無いように留めても、負荷が2本の目釘に集中してしまうことには変わりがないのである。目釘より木製の柄の方が弱いので、柄にヒビが入ってしまうのであろう。
目釘の二点に応力が集中してしまうのはどう考えても構造的に弱いと思う。

刀でこのような亀裂が入った柄は見たことがない。
おそらくその理由は、刀の柄の場合、一振ごとの刀に合わせて鞘師がピタっと合うように彫っているからだ。そうすると、刀を敵に叩きつけても、目釘の点に負荷が集中するのではなく中子の側面全体で負荷を受け止めることになるのだと考えられる。そうであれば、刀の目釘の役割は主として縦方向のズレを防ぐことである。柄の中で中子がガタつかなければ良いわけだ。ガタつくと負荷がどこかの点に集中してしまう。なるほど、そういうことならば竹でも強度は足りるのかもしれない。


そこで、この鉈も負荷を面で受け止められるように補助プレートを挿入することにした。

腰鉈は振り下ろして叩きつける使い方しかしない。
バトニングで峰を叩くことはあるが、そのときは柄に負荷はかからない。柄を握って峰側でものを叩くと言うことは無い。

すると、柄の中ではこんなふうに負荷がかかっているはずだ。

鉈にかかる力

目釘の部分に下向き青矢印のような負荷が集中すると考えられるのである。
そこで、

受け金

中子の下面にあわせて切削した金属プレートをこさえてスリットにピタっと嵌めこんで、何かで固定してやれば、面で負荷を受けることになって耐久性はグっと向上する。目釘に負荷が集中してヒビが入るということはない。はず。


実際に作ったのがコレ。

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今回は鉄で作ったけど、木でもいいと思う。

これをはめて、さらに何かで巻かなければならない。
革が良さそうだが、革細工は下手だしめんどくさいし材料を買ってこなければいけない。どうやって脱着可能にするのかもピンと来ない。

とりあえず手近に2㎜の細引きがあったので、試しにこれで巻いてみた。

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予想以上にいい感じ。
巻いてるだけなのでズレないか心配したが、ビクともしない。
外すのも簡単。

何度か試行錯誤して、現状はこんな感じになっている。

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後ろに手を通す輪っかを作ってみた。
山歩きをするときは引っ掛かると危険だが、いまのところ山歩きをする予定は無いので、しばらくこのまま使ってみたい。

テーマ : 刃物の修理
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【オススメ!】 庄三郎のキッチンバサミ

庄三郎のキッチン鋏を買った。

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これまで使っていた貝印のキッチン鋏が壊れたのだ。

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分解洗浄できるところが気に入っていた。
二回は研いだと思う。まだまだ使えると思っていたのだが、予想外の壊れ方をした。

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プラスチックには寿命があるので、こんな構造になっている時点で5年~10年ぐらいで消耗する前提の商品だと言っていい。

それにしても自家用で新品の刃物類を買ったのは何年ぶりだろう。

候補としてヘンケルスのツインクラシックと、同じ形の増太郎さんのキッチンバサミを検討していたのだが、どちらもドライバーを使わないと分解できないのが難点だった。用途や使用環境から汚れがたまりやすいものなので分解洗浄できるという点は譲りたくなかった。

同じ形で分解できる構造になっていて値段も圧倒的に安いのが、下村工業のヴェルダンのキッチンバサミ。
これにしようかと思っていたのだが、どこかのレビューで「折れた」と書いてあったので迷っていたら、庄三郎が同型で分解できるものを販売しているのを見つけたのだ。




ちゃんと分解できる。

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反対側はプラスねじになっていてスプリングワッシャが噛ましてあった。
スプリングワッシャは庄三郎の拘りだろうか。

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汚れや水が溜まって錆びたりカビが生える原因になりやすいので、できれば部品は少なく形状と構造はなるべく単純な方がいいのだが。
まあ、完全分解できるわけだから面倒だけど洗えはするし、締め付けの調整ができるのは研いで調整するには必要だ。長く使うなら必要要件になるのだろうか。
ともかく暫く使ってみようと思う。

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裏スキと反りの具合は素晴らしい。
1000円台、2000円台の量産品には望むべくもない。壊れた貝印のハサミもほぼフラットだった。それでもキッチン鋏の用途としては支障無かったのだが。
鋏屋庄三郎としてはこれが当たり前なのだろう。いや、ヘンケルスクラシックも同じようにちゃんと鋏のフォルムだった。増太郎もそうだと思う。
しかしこの庄三郎のキッチン鋏、価格は3000円台なのだ。ヘンケルスや増太郎の半額ぐらい。

良い買い物をした予感。
5年ぐらい使って結論を出したい。

ところでアマゾンのキッチン鋏のレビューを読んでいるとどの商品に関してもネガティブ評価は「錆びる」ということばかり。
いつもこのブログを読んでくれている方には釈迦に説法だが、刃物用のステンレス鋼は、錆びる。包丁でもハサミでも錆びる。
スプーンやフォークなどに使われているステンレス鋼より、刃物用の硬いステンレス鋼の方が、錆びやすい。
おなじように扱おうとすることがそもそもの間違いなのだ。
知らなかった人は常識として覚えておいてほしい。
酸性の洗浄剤に漬け置き洗いなどぜっていにしてはならない。食器洗浄機も、高温多湿という非常にサビが進行しやすい環境で洗浄するご法度だ。
ハサミや包丁といった刃物類はステンレス製でも洗い桶の水の中につけっぱなしにしたりせず、水分をよく拭き取って片付けなければいけない。
特にハサミというのはどうしても二枚の刃体の隙間に水分が残りやすい道具なので、そういう意味でも、長く使うことを考えると簡単に分解できる構造は重要だと思うのである。

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竹割鉈

ヤフオクで手頃そうな竹割鉈があったので落札した。
鉈は2本持っているのだが細かい細工には重くて大きいのだ。

落札した竹割鉈の商品紹介画像。
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(以上、ヤフオクの商品写真を拝借。)


うーんこれは、アレじゃないかなあ?
と思ってはいたが、届いてみると、やっぱりアレだった。


残欠。

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柄に差し込んだままずーっと使っていたようで、中子の腐食が激しい。
刀身の朽ち込みもかなりひどく、軽くざっと錆を落とすぐらいではどうにもならなかったので、あらと君でゴリゴリ削ってなんとかシノギが立つぐらいに整形してみたが。

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これ以上削るのはマズいかもしれない。
というか、そもそも形が変。
刀に詳しい方なら一見して気づくと思うが、ハマチが無いのだ。
魚ではない。刃区と書くハマチだ。
棟区(ムネマチ)はちゃんとあるのでその反対側におなじぐらいの幅の刃区が無いとおかしいのである。
どうも、刃区が無くなるまで研ぎに研ぎまくったらしい。
刀というのは包丁と違って割込みとか合わせという構造ではなく、真ん中に柔軟性のある芯棒が入っていて外側を硬いハガネでくるむという構造になっている。
指で撫ぜた感じでは、どうも先端から3分ぐらいのところから刃元にかけて、ハガネが無くなってしまって柔らかい芯鉄が出てきてしまっている気配だった。違うかもしれないが、確認のためには砥石を当ててみなければならない。刃元はこれ以上減らしたくない。
刃物としてはもう再利用不可能で寿命の可能性があると思った方がいいのだろう。

もう一本の方はちゃんと使えるし。それ一本で総額3000円ぐらいと考えると割高だが、変わったオブジェがついてきたということで良しとしようw

観光の外人さんなんかは喜びそうなのでオブジェとして活用できないかと思っているのだが、こんなのでもやっぱり「刃物」扱いになって銃刀法とか軽犯罪法の携帯規制の対象になるのだろうか?ぜんぜん切れないけど。切れなくても「少許の加工」で切れるように刃付けができると刃物扱いになる、という理屈は知っているが、物理的にハガネ切れしてそうだしなあ。
「少許の加工」ってどれぐらいよ?とか、切れるってどの程度?とか。
刃物関係の法規は判断基準がアバウトで困ります。

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武峰作

昨日は、朝の天気予報では、日中曇りで夜半から雪になるという予報だった。
仕事の軽ワゴンはノーマルタイヤでチェーンもない。青山熊野神社で仕事の予定だったが凍結すると帰れなくなってしまうので、休もうかとも思ったのだが、先週も大雪明けで休んでしまい問い合わせの電話が数件あったので行くことにした。しかし4時には作業を終えて早仕舞いすることにしていた。

ところがこんな日にかぎって予想外にご依頼が多い。
昼前には当日渡しの注文をお断りすることになってしまった。

若い男性客が黒打ちの三徳包丁を持ってきた。
一見して手間はかからなそうだったので、当日中に3本研いでほしいというご依頼をお断りした後だったが、4時渡しで良ければということでお預かりした。

曇りの予報だったのに昼前からぽつぽつと雨粒が落ちはじめ、午後1時ぐらいからはしょぼしょぼと小雨が降り続ける一日だった。

男性の黒打ち三徳がこの日の最後の仕事である。
あまりよく確認しないまま受け取ってしまったのだが、手に取ってみると、刃縁の肉は全く無く、刃先も2~3か所にわざと糸刃をつけたといってもおかしくない程度のわずかな反射が見える程度で、包丁としてはまず切れ味に問題は無い、というより、相当良く切れるはずという状態だった。

こういう包丁は困る。
何が気に入らなくて研ぎに出したのかわからないからだ。
コピー用紙でも試し切りして引っ掛かりでもあったのだろうか。
ぶら下げたティッシュペーパーを一刀両断できない、なんてクレーム言ってきたりしやしないだろうか。
ともかく預かってしまったのだし刃先を整える余地はあったので、砥石に当ててみた。
1000番で簡単に刃がついた。
刃先はかなりウスウスだが全くヨレる感じがないので、焼きが硬いようだ。
よく見ると裏に「青一」と書いてあった。なるほど。
表の銘は武峰作とあった。しらない銘だった。

あらためて峰側から見てみると、先にかけて細くなっていくテーパーの加減が絶妙で素晴らしかった。

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磨き包丁ならこういうものをいくつか知っている。しかし黒打ちでこういうのは記憶にない。
磨き包丁なら研磨で形が調整できる。しかし黒打ちということは鍛造しっぱなしということだ。強力なスプリングハンマーで打ち広げるので、これできれいなテーパー状に整形するのはブルドーザーで植木鉢に土を盛るような繊細な技術が必要ではないかと思う。

受け取りに来たお客さんに尋ねてみたところ、鍛冶屋さんが高齢でもうあまり入荷しないのだが、販売店から連絡があってたまたま入手できたものということだった。
新品の状態で料理に使ってみたものの、いま一つ切れ味に満足できなかったので、自分で研いでみた。しかし自分の砥石が湾曲していたりもするので、いちどプロに研いでもらおうと思って持ってきた、とのことだった。
自分で研いだあとは一度も使わずに持ってきた。ということだったが、たぶん自分で研いだ状態で使ってみれば満足できたに違いない。そうであってほしい。
持って来てもらったときと切れ味自体はほとんど変わらないと思いますよ。と3回ぐらい念を押してお返しした。


こういう包丁は、晴れていてもう少し暖かい暇な日に持って来てほしい。

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テーマ : 包丁研ぎ
ジャンル : 趣味・実用

なんじゃこりゃ?

昨日は臨時で、金曜日なのに青山熊野神社でお仕事。
朝行ってみたらテレビのロケがあるとのこと。(私が映ったわけではない。)
車関連のBSの番組だそうだ。

「撮影してるところを撮影していいですか?」

とADらしい人に聞いてみたら、

「スミマセン演者さんが撮影NGです」

とのことで、画像は無い。
有名なタレントさんが来るのだろうと思ってみていたら、ダチョウ倶楽部の肥後さんと研ナオコさんだった。研さん若いなあ。



さて、柄の交換依頼の包丁。
割ってみたら、なんか変だった。

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中子が無い・・・

でも割ってしまったものは後戻りできない。。。



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割りすすめていったら、少し出てきた。
でも短いなあ。


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外してみたら、こんな状態。


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なんか曲がってるし・・・

おそらく以前にも交換されていて、なんかかなり強引に取り付けられていたような印象。
ふつうの包丁の柄じゃない。柄の素材が朴の木ではなくなんだか硬い木で、形はまん丸で、口輪がかなりしっかりした金属。
長いノミの柄みたいな感じ。

どうしよっかなあ。溶接するか、擦り上げるか・・・
持ち主さんに連絡がつかない。
溶接だったら月曜までに決めないと。

刃物研ぎ講習が無事終了

日曜日、刃物研ぎ講習会が無事終了。
ご参加いただいた皆様、お手伝いいただいた高野さん、会場をご提供いただいたレクトサンドカフェの毛利さん、まことにありがとうございました。

6月と7月に講習会を実施したあと、なんだかテキストがまとまっていない気がして修正したいと思っていたのだが、思うばかりで前に進まずダラダラと開催せずにいたら、「次はいつやるのですか?」というありがたいご催促を頂戴したのでバタバタと今回の開催に至った。

講習会開催日という締め切りが決まると気に入ろうが気に入るまいが完成させなければいけない。金曜日まで加筆したり削ったりと修正していて、まだ付け足したいこともいろいろあるのだが、全体的には今回はけっこういい感じにまとまったんじゃないかなと自分では思っている。
パソコンモニターで見るのと実際に出力したものを見るのとでは印象がかなり変わるので、ゆうに10回以上は試作バージョンをプリントアウトしたのだが、ボリュームが増えたのでコピー用紙があっという間に無くってしまう。開催間近の月曜日にはトナーカートリッジの警告が出た。こういうときアマゾンのお急ぎ便は重宝する。前日に出ていたらムチャ高い純正品を買うかキンコズに走るかしなければいけなかっただろう。
コピー用紙は3束買った。トナーカートリッジも心配無い。
準備万端で土曜日にようやく予備も含めて12冊分の印刷製本に取り掛かったのだが、分厚くなったせいでホチキスの針が通らない。いや通るものもあるのだが、3発に1発ぐらいの確率で失敗する。
もちろん一般的なサイズの文房具用のホチキスではなく、もう少しがっちりした針を使う、建築などにも使われるタッカーを使っているのだが、それでも針が通らない。
3発に2発ぐらいは通るので、力が逃げないように固い台の上に置いてブレないように直上からバシっと力を入れてみたりするのだが、どうも「こうすれば高確率で成功する」というポイントが見つからない。そのうち3発に2発ぐらい失敗するようになってしまった。あれこれ試行錯誤したが、うまく刺さるかどうかは「運」という結論に至った。
このままでは埒があかない。調べてみるとホチキスにもいろいろサイズがあり、30枚までとか70枚までとか100枚までとか、それに応じて針もサイズもいろいろあるようだった。今回のテキストは40枚+製本カバーぐらい留められれば良いのだが、安全を期して「30枚以上110枚まで」というタイプを、アマゾンのお急ぎ便でも間に合わないので急遽ホームセンターで購入してきた。
刺さる刺さる。
それまでのタッカーの悪戦苦闘はたとえると、爪楊枝二本でご飯を食べようと苦労していたような感じだ。なぜ折れるんだ!こういう持ち方でこんな力加減ならうまく肉が持ち上げられたぞ、ああまた折れてしまった!!みたいな苦労をしたあげく、いよいよお箸というものを使ってみたら、魔法のように何の苦労もなくなんでもつかんで食べられた!!という感じ。

このほかにもプリンターが「お待ちください」という表示のまま2時間待っても動かなくなってしまいドライバを再インストールしてパソコンも再起動してやっと動いたりして、土曜日は午前中にサクサクっと印刷して準備万端になるつもりだったのに気持ち的に大変焦らされる一日になってしまった。
これからは、準備は前々日までに完了させて、前日は準備の予備日にしようと思う。

バタバタのせいか、やはり当日は大事な忘れ物をしてしまった。
カメラを三脚に設置して電源をonにしたが電源が入らない。バッテリーが入っていない!だいじょうぶ予備がある。2本も。バッテリーを入れて電源を入れた。「NOCARD」というオレンジ色の文字が点滅した。カメラを片付けて三脚を折り畳んだ。
タブレットでも撮影できたのだが、なんだか心が折れてしまったので、今回は動画も静止画も撮影していない。


個別の講習はだいぶ前からやっていた。
砥石も販売しているので購入したなじみのお客さんには簡単に研ぎ方をお教えしたりもしていた。講習会で想定している対象者はこういった未経験者や初心者で、ご家庭の普段使いの包丁2~3本を寿命になるまで10年ぐらい良い状態で使い続けて頂くということを目的としてる。
ところが6月と7月の講習会をやってみてどうもなんだか様子が違うことが判明した。
まず参加者がほとんどオッサンなのだ。女性率1割以下。ちなみに講習ではない刃物研ぎのお客さんは8割方女性である。
高円寺のこじゃれたカフェでエプロンをつけたオッサンの集団が包丁を研いでいる様子はとても怪しいらしく、通り掛かる人達が怪訝な顔をして覗き込む。
そして「何しに来たの?」というような想定外の上級者がチラホラ混じっている。こうするんですよと説明する通りに初めからできてしまうので、実習の二時間は退屈ではないか?と不安になる。程度の差こそあれ、総じてなんにもわかりませんというズブの素人はほとんど来ないということがわかった。テキストをもう少し掘り下げた内容にしたいと思っていた理由のひとつもこういう事情による。実際のところ今回のテキストの変更点は内容より図とか構成の組み換えが多いのだが。

もちろん初心者や女性も少ないが参加されるので、そういう人でもわかる内容でなければならない。
ポイントを絞り込みづらい参加者層の幅の広さに悩まされる。

さて、今回は予想以上に参加希望者が増えたので午前の部も開催することになり、午前5名、午後も5名という構成になった。
その午後の部が、5名のうち女性が3名で、しかもその中の2名が全くの初心者という異例の状態だった。
しかもそのうち一人はセラミック包丁と100円ショップの包丁しかもってない、お料理はあまりしない、という人だった。
なぜ参加!!??
とりあえず講義と2時間ほどの練習でけっこう上手になっていただけたと思うのだが、せっかくなのでこれからは研いだ包丁でひんぱんにお料理するようになってもらえると嬉しい。
しかし初心者の女性に切れ味を試してもらうとちょっとしたことで大袈裟気味に歓声をあげてもらえるので、この点については大変ありがたい。けっこうベテランな男性だと眉間にしわを寄せて「ウーンマダマダ」と言ったりするし、喜んでもらえても「スゲ~~!」とはしゃいだりすることは決してなく、野太い声で「おお~~・・・」と唸るのである。やはりウソでもいいから「キャ~すご~いこんなの初めて~!」と言ってほしい。
イベントごとでよく女性割引されている理由が納得できる。
こんどからサクラ雇おうかなあ?

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