変わった錆

柄の交換。

割って膨張している錆を落としてみると変わった状態になっていた。

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拡大。

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虫食いのように穴が空いて、二層になっている。

これはいったい何か?

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峰側から見ると割り込み利器材であることがわかる。

つまりおそらく、これは錆びにくいステンレスに錆びやすいハガネを割り込んだ利器材だ。

中心のハガネが柄が膨張するほど腐食して、写真に写っている部分ではもはや無くなっている。

そして両側のステンレスは、ステンレス特有の孔食によって虫食いのような穴がたくさん空いているわけだ。

こういう状態のものは初めて見た。


どうしよう。

芯のハガネはボロボロだが全体としてはけっこうしっかりしているので、少し補強すればこのまま活かせそうだ。

ハンダでも流し込もうかと思ったが、ガルバニック腐食という現象で錆びやすくなってしまう危険があるのでやめた。

する私にある選択肢は金属パテかエポキシだが、浸透性が良いのでエポキシで補強を試みることにした。


現在作業中。

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刃物油のこと

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機械に油を注す主な目的は、潤滑と防錆だと思うが、刃物に潤滑は必要無いので、刃物油の主目的は防錆だ。

水と酸素が無ければ鉄は錆びないので、水か酸素のどちらかを防げばいい。
油は酸化するので酸素は防がないと思うが、水をはじくので防錆能がある。

油が皮膜として鉄の表面に付着しているかぎり防錆効果が期待できるが、油の中には乾くものがある。
油が乾くとサラサラになるのではなくベタベタになる。換気扇に付着した油が乾燥しつつある油だ。完全に乾燥すると樹脂のように固化する。

油は乾きやすさによって、乾性油、反乾性油、不乾性油に分類される。
乾性油は油絵の具に使われるテレピン油だ。多くのサラダ油は半乾性油である。
植物性油の中で不乾性油は、椿油、オリーブオイルなどがある。椿油は匂いも無いので古来刃物油に利用されてきた。

機械油に使われる鉱物系の油はほぼ不乾性油だ。
鉱物系の防錆油の方がコストが安く機能的な物が多い。
刃物油として販売されている油も、ほとんどは鉱物系の油である。

椿油や丁子油と称して販売されている油も、鉱物系の油が添加されている物が多い。紅椿化学工業所や黒ばら本舗やAZが刃物用椿油を販売しているが、成分が明記されていないものも、価格から、椿油は配合されている程度だと考えられる。

多くの鉱物系油は、可食かどうかわからないという問題がある。
今の日本で最も多く身の回りにある刃物は包丁なのに、刃物油と称して販売されている油は包丁に使って良いかどうかわからないのである。
包丁に使用する場合は使う前に良く洗い流すこと、といった注意書きのある刃物油もある。
成分表示も注意書きも無いものもある。
よく洗い落とすことが前提なら、別に刃物油ではなくミシン油でもいいんじゃないかと思ってしまうのだが。

無害であることを明記しているのはAZの刃物油だ。ベビーオイルや食品機械用の油と同じ流動パラフィンが使われている。


食品調理に使う刃物でなければ可食性は気にしなくていい。
庭仕事に使う植木用のハサミや鎌は水滴が付着することもあるので水置換オイルがお勧めだ。配合された界面活性剤が油の中に水分を取り込むので、細かい隙間に残った水分も除去してくれる。
ただし水置換オイルには長期防錆性能が良くないものもあるようだ。
長期間保管する場合は、防錆用の油と明記された油が良い。

株式会社エーゼットは製品情報を詳しく開示してくれているので信頼できる。
私は、炭素鋼系の錆びやすい包丁やナイフ、キッチンハサミにはAZの刃物専用錆止油、裁ち鋏や刈込み鋏には同じくAZの水置換オイルを使っている。

一般の家庭でしばらく使わないかもしれないハガネの出刃包丁や刺身包丁を保管しておくような場合は、オリーブオイルがいい。
不乾性なので普通のサラダオイルより皮膜が長持ちする。
多少匂うが健康に害が無いことは確かで、入手しやすく、値段もさほど高く無い。

本稿は防錆油の専門家ではない私が個人的に調べた結果なので、間違っている点があるかもしれない。見つけたらご指摘いただきたい。

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中子の錆

お客さんに見せるために撮った写真。

元の状態。
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きれいな面
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酸化腐食した面
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錆を落とす前の写真は撮っていない。残念。
はじめの写真で柄の隙間の中に見えるこんもりしたものは、全て鉄錆。
木が腐食して盛り上がっているわけではない。

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帰ってきた包丁

数年前に研いだ包丁。
ハードな環境でがんばって活躍している様子。

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中子が錆びて柄が膨張していたので、エポキシで埋めたのだが、

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これだけ周りが錆びる環境でも内部の錆の進行は食い止めてくれている様子で、なにより。
効果観測にはとてもありがたいお客さんです。

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柄の修理@牛刀

少し隙間が開いている程度ならエポキシ接着剤を流し込んで水が染み込まないようにして様子見してもらうのだが、前の部分の鋲が取れてしまっていたので、修理。

・ディスクサンダーで金属部分と木材部分を分離。

腐食が進んで柄が折れてしまっていると面倒なことになるが・・・

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包丁の柄が膨らんでるものはだいたいこんな感じになっている。
柄に隙間ができてるなと思ったらナル早で防水処理すべきだ。ステンレスでもたまにこんなになってるのがある。

中心部分がゴソっと取れてしまったが、外側はしっかりしていたので幸い溶接せずに済んだ。

次の作業。

・砥石の小割れで磨いて剥離しやすい部分を除去
・金属が膨張している部分の木材側を削る。
・エポキシ接着剤で片面を接着。半日以上安置。

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ピンク色は金属が膨張している部分。
柄材と合わせるために金属側を削ると強度が落ちてしまうので木材側を彫刻刀で削ったのだが、そのとき、干渉する部分を確認するため絵の具を塗りながら作業をしたのでその痕跡。色がピンクなのはあーりん押しなわけではなくたまたま。

あとの作業写真が無いが、

・片側が接着できたらボール盤で鋲の穴を開ける。
・今回は凹凸が大きくエポキシ接着剤で隙間を埋めきるのは困難だったためエポキシパテを利用し、隙間を埋めつつもう片方の柄を接着。半日以上安置。
なお、エポキシパテにも接着力があるがエポキシ接着剤よりは弱いとのこと(セメダイン談)。
パテは硬化速度が非常に速いので手早い作業が必要。
接着剤のような流動性は無いので流し込むような作業には使えない。目的に応じて使い分ければいいと思う。
・両面接着後、あらためてボール盤で鋲の穴を貫通。
・ベルトサンダーでおおまかに柄を削る。特に厚みを決める。
・鋲止め。
・ベルトサンダーで鋲止めした面を削って平らにする。
・ベルトサンダー、リューター、ヤスリでさらに整形。
・細かい隙間にエポキシ接着剤を流し込んで半日以上安置。
・最終整形して耐水ペーパーで研磨。
・木固めエースで仕上げ。24時間以上安置。
・研ぎ、刃付け。
・布などで最終磨き。

乾燥で4段階あるのでそれだけでも四日以上。
研ぎの仕事と並行してできないので一週間以上はかかると考えてもらいたい。
この柄の交換で3000円(研ぎ代別)。たぶん時給にするとコンビニのバイトより安いが作業は楽しく練習にもなるのでご希望の方はどうぞ。但し忙しい時期はお断りするか1ヶ月以上かかるかもしれない。
また溶接が必要なものは外注するので別途実費請求する。いくらかわからない。溶接が必要かどうかは割ってみないとわからないので後日請求になる。



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ハンドメイドナイフを作ってみたくなってきた。


ヒルト部分の腐蝕が表に達していたのでこんな感じに。
パテで正解だった。

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こちらがもとの状態。

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参考までに和包丁の柄の交換。
こちらは1080円(研ぎ代別)、ちゃんと利益も出るのでどしどしお持ち下さい。

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エポキシパテの耐熱性はどうだろう。
と思って熱湯に数分漬け置きしてみたが、少なくとも柔かくなることはなかった。
たぶんこれなら接着力も落ちないと思う。

しかしエポキシ接着剤は熱湯をかけるとボロボロと崩れるので引き続き熱湯厳禁だ。ろう埋めも同じ。

食洗機は熱湯洗浄するのでダメ。
暑い環境ほど腐食は進みやすい。食洗機は細部まで洗浄できるように霧状の熱湯を多方向から吹き付けるので、水道でジャブジャブ洗うより柄のちょっとした隙間にも水分が浸透しやすい。
エポキシ接着剤だけでなく錆にとっても食洗機は大敵なので、たとえ食洗機対応と書いてあっても、包丁だけは手洗いをお勧めする。
包丁の刃に使われているステンレスは同じステンレスでもスプーンやフォークに使われているステンレスよりずっと錆びやすいのだ。

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光友 柄の交換

柄が腐食膨張、切っ先がコンドル。
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洋包丁の柄の交換は値段が高くなってしまうので和包丁の柄を挿げることに。

ビニールを剥いでみると予想以上にヤヴァい状態。

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「光友」「安来本焼」という刻印。近年廃業した神奈川の鍛冶屋さんのようだ。

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安来は日立金属の安来鋼。おそらく錆びやすい炭素鋼。黄紙、白紙、青紙とあるがどれかはわからない。
本焼と書いているが土盛りしているわけではなさそう。正広なども全鋼の洋包丁を本焼と称しているが、ややこしいので好かない。

割ってみるとこの状態。

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柄に合わせて削る部分にしるしをつける

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削って磨いたところ。中子は元の長さの半分も残ってない。

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身卸し出刃の柄に挿げた。
桂のあたりまでしか中子が入っていないのでぐらぐらする。エポキシ接着剤を奥までみっちり詰めこんで固定した。

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この包丁は、刃元から刃先にかけてテーパーになっていて、薄くて粘りがある。鍛冶屋さんがしっかり叩き伸ばして作った製品。
以前研いだかね惣の菜切りと同じぐらい良い感じ。
まだ売ってる店があるようだが、お勧めです。

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錆び落とし

錆びたのは高いのかと聞かれますが。


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洋包丁だと見た目がこれぐらいハデに錆びてても、刃線が問題無ければ・・・

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これがたとえば貫通してしまっていると、欠けているのと同じなので高くなるが、


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幸い問題なかった。


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赤錆は全部落とすが、ピカピカに磨くわけではないこの程度までの錆落しなら、規定料金の範囲です。

両刃の包丁はこんな感じの物が多い。


ただし、片刃の刃物で裏の刃線が錆びてるものは倍以上手間がかかる場合があるので、値段もあがる場合が多い。



ところで。

以前の記事で、ホームセンターで買った錆落しグッズをいくつか紹介しましが、ここのところ活躍してくれているのは昔100均のダイソーで買った砥石。


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手のひらサイズと小さすぎるので、上手な人以外には包丁を研ぐのにはお勧めできないが、手に持って磨くには使い勝手がいい。砥石としては柔らかい。錆落しには最適。

で、このまえ久しぶりにダイソーに行って探してみたんだけど、もう置いてなかった。

人気商品で在庫切れなのか、コストが高くなって生産中止したのか、はたまた不人気商品で廃盤になったのか?

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和包丁は裏が命

錆びた片刃の和包丁。

裏さえきれいになれば使えるようになります。


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深くない錆は研磨剤で軽くこすって落とせばいい。

大雑把に表面の錆を落とすとこんな状態になります。

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上が表。
虫食いのように小さな点錆があります。これが深い錆。
裏は表よりマシ。

図示するとこんな感じ。

(表)
表2_Color

(裏)
裏_Color



さて、片刃包丁はどう研ぐか。

基本的には表だけ研ぎますよね。

たとえば赤い破線の部分を研ぐわけです。

表2_波線_Color

表は見た目に多少点錆が残っていても、刃線には出ません。研ぎあがりはまっすぐ。
刃線がガタガタになってしまうのは錆がハガネを貫通している場合だけ。

裏はどうか。

裏_波線_Color

裏は少しでも凸凹が残っているとそのまま刃線に出ます。刃線がガタガタになる。
理屈がわかるかな?

だから、裏の錆だけはしっかり除去しないといけません。

ちなみにこの作業、素人がうかつにグラインダーやリューターを使って削ると、焼きが戻ったりハガネの層を貫通してしまうキケンがあります。
私は砥石の小割れ(欠片)で磨きなさいと教わりました。時間がかかるけど刃物を壊す危険は少ないです。


錆を削った状態。

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中砥までしか磨いてない状態なので粗いですが。
あと、皮一枚削り落とすのが勿体無いからアゴはちょっと欠けたままですが。(こういうところは、修理品の場合お客さんと相談してどうするか決めます。)


これでいちおう使える状態になります。使い続けることができる状態。

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錆び落とし用品

ホームセンターで錆び落とし用品を買ってみた。
私は研いで薄くなった砥石を割った小割れで落とすけど、あまり売られてないので他人に勧められない。(※1)

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下のみっつはシャイネックスという会社のサンドシートEXという商品
この倍の大きさ(150×230)。1枚190円ぐらい。
左の焦げ茶色が120番、真ん中の緑が400番、右のグレイが1500番。

上に乗ってる細長い青い物は、スエヒロ砥石の錆び取りゴム。
写真の物は中目。2つ入って600円ぐらい。
ほかに荒目と細目が売られていました。
高いので中目と荒目1本づつとか、中目と細目1本づつといったセットも売ってほしい。


今回の被験者。


その1、替え刃式ノコギリ「スーパー技工」の錆びた刃。
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その2、兼寛の裁ち鋏。入手時点でこの状態。
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スーパー技工にスエヒロの錆び取りゴムを当ててみる。
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錆び水を拭うとこう。(※2)
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100回ほどこすってこの状態。
落ちると言えば落ちるけど、ここまで錆びのキツい物はもう少し粗い目の物からはじめたほうがいい。


サンドシートEXの1500番から。
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錆び取りゴムと同じ、目が細かすぎ。

次に400番。
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かなり頑固な黒錆びもある程度除去できた。これぐらいなら「使える」といってお勧めできる。
砥石の小割れの800番ぐらいかなあ?石のように深い傷はつきません。逆に言うと深い錆びは落とせないということだけど、それは仕方無い。

そして最後に120番。
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ラクチンラクチン。よく落ちる。傷の深さもしれてる。
錆が立体的に盛り上がっちゃってるような、かなり深く浸透しているものでないかぎり、これで簡単に落とせるでしょう。しっかり錆びてる物にはオススメ。


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◆ 使用感

・スエヒロ 錆び取りゴム 中目
炭素鋼の刃物などで、まだ錆びにはなりきっていないけど表面が曇ってきたといった状態で、これを使うとかなり奇麗になる。
水に濡らしてもいいので炭素鋼の包丁を使っている人はキッチンに常備しておくといい。(※2)
柔らかい固形なので刃先にも当てられるし柄の際など細かい部分にも当てやすい。
小さいのでコストパフォーマンスが悪い気がするが、一般家庭なら何年も使えると思う。

・シャイネックス サンドシートEX
総評
スポンジタワシの裏の硬い部分だけ、というイメージ。
#120と#400はある程度の厚みと硬さがあるので刃先に当てても指を切る不安は感じなかった。
耐水ペーパーよりはるかに耐久性がある。
削って掘りこむような力はなく、深い錆びには対応できない。逆に深い傷をつけることも無い。
黒錆びは放置していいから表面の赤錆びだけ落としたい、といった場合に有効。



ハサミの錆び落とし。

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裏だけは、柔らかい物を当てると刃先に触って丸めてしまう危険性があるので、石を使う。

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裏以外はサンドシートEXと錆び取りゴムだけで。
こんなもんでしょう。上等上等。
鏡面にしたければこのあと耐水ペーパー#600ぐらいから#2000ぐらいまで、前の番手の研ぎ痕が消えるようにコツコツ磨いて、最後にピカールや青棒で仕上げ。手作業だけでも光らせることはできます。



※1
京都のさざれ銘砥さんで小さい天然砥石を売ってます。
http://www.330mate.com/product/342
http://www.330mate.com/product/85
一般家庭の錆落としにはタイル型の伊予砥がいいです。

※2
錆取りゴムは水をつけず乾燥状態で使ったほうが効果的。継続使用で判明しました。

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錆落とし

刃物の錆落としや傷消しは、欠け取りと同じです。
鉛筆で書いた文字を消しゴムで消すこととは違います。

錆は部材そのものが酸素と結合して変質した状態です。傷は部材がえぐれた状態です。
鉛筆で書いた文字は紙の上に炭が付着した状態だから、付着した炭を除去すれば消えます。一方、錆や傷の除去は、錆や傷がついた深さまで周囲を削って均さなければいけません。

部材が酸素と結合したなら酸素だけ除去することはできないのか?と思われるかもしれません。
酸化鉄から酸素を取り除くことは可能です。還元といいます。
酸化鉄を高温で熱して、酸素を炭素と反応させて鉄から除去します。
要するに、錆を製鉄会社の溶鉱炉に入れればドロドロの鉄になって出てくるのです。
残念ながら刃物の形状のままで鉄から酸素を除去することはできません。

部材を削るために、手作業なら砥石やサンドペーパーやスチールウールなどを使います。
溶剤の錆取り液もありますが、これは強酸性の液体で部材表面を溶かしています。


ゾーリンゲンのハサミ。裁ち鋏だと思います。かなり錆がきついです。
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刻印は 「SPENGLER & MEURER」 とありました。
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これを砥石でごりごり磨いて落とします。
ネズミ色の大きいのはC系荒砥。右下薄水色が中砥。右上オレンジ色は伊予砥。
他にも何種類か使います。
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薄い錆や傷なら耐水ペーパーやスチールウールでも落とせますが、深い傷は力を入れてゴリゴリ削らなければいけないので石の方がいいです。
研ぎに使う大きな砥石では表面の微妙な凹凸に対応できないので欠片を使います。


錆を落とした状態。
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鏡面には程遠いですが。
研ぎ傷が荒いままだと傷口に水分が付着して錆びやすくなるので、一定レベルまでは磨かないといけません。
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深い錆の拡大写真。
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さらに拡大。
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完全に錆を落とす場合はこの一番深い錆の奥まで、表面全体を削らなければいけません。
写真で見えているより更に深いかもしれない。


ちなみに元はこんな状態。
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薄い刃先部分がこういう状態になってると、錆が刃体を貫通してしまっているケースもあります。そうなると修復不可能です。
刃先の場合は切れ味に影響するので完全に除去しないといけません。貫通してる場合はハガネが残っている部分まで刃先を下げてしまう必要があります。

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