簡易砥ぎ器を使ってみる。

簡易研ぎ器にもいろんな種類があります。
今回は100均のダイソーで売っていた安い研ぎ器を使ってみました。


まず外形からわかること。
kanitogiki01.jpg

左側の白い部分を左手で握って押さえて、右の透明な樹脂カバーの隙間に庖丁を差し入れて、ゴシゴシとこすります。
kanitogiki02.jpg

すると、樹脂ケース内に仕込まれている、独楽を2つ向かい合わせたような形状の砥石が回転して、庖丁をこする、という仕掛けです。


この仕組みでは以下のような問題が考えられます。


1.刃が荒れる。
砥石というのはどんなものでも水を使うものです。すべりが悪いと刃に大きな傷がつくから。この研ぎ器には、説明書を読んでも水を使うといった説明書きがありませんでした。念のために水を入れて使っています。

2.包丁をこする方向から考えて直刃がつく可能性がある。
砥石が刃に対して水平にスライドするのではないかと考えられます。そうだとすれば、ノコギリ刃がつきません。カンナやカミソリのような直刃になってしまいます。

3.砥石が変形したらおしまい。
中にはいってるのは小さい砥石なので寿命は短いと推定されます。

4.刃先や刃元を砥ぎにくい。
意識して刃元から刃先まで均等に刃がつくようにしないと、砥ぎやすい真ん中ばかりを当てて刃線が変形する可能性が高いと思います。真ん中が凹んだ包丁になる可能性があります。
砥石では面を当てて砥ぎますが、この研ぎ器では点しか当たりません。線すら当たらないのです。

5.変形した包丁を修正するのは不可能。
包丁研ぎでは、刃を付けるだけじゃなくて、変形した包丁を修正したり欠けを修正したりすることもありますが、そういうことはまったくできません。



【実際に研いでみました。】

どのように砥石が当たったかを調べるために、あらかじめ#8000の仕上砥までかけて刃を付けた包丁を使っています。


こんな感じでゴシゴシ前後させます。

saki.jpg
ago03.jpg



そして、簡易研ぎ器にかける前。

before.jpg



かけた後。

after.jpg


期待通り小傷がつきました(笑)(平の部分はもとからある傷です。刃線の部分の傷。)
だけど直刃になる方向にこすってるわけじゃないですね。縦に傷がついてます。
刃先を荒らしてひっかかりを作るのが主作用でしょう。回転精度がよくないから砥石がグラグラします。
これを使って包丁を削るまでゴシゴシこするとタイヘンなことになると思います。
当たってるところもテキトーっぽいから、これだったら研ぎ棒の方がいいんじゃないかなあ??

京セラなんかのもう少し高い研ぎ器だったらもっとキレイに研げるんだと思いますが。

少なくとも、100均で売ってるこのタイプの包丁研ぎ器は役に立たないだろうというのが結論です。
100均の包丁は研げばなんとか使えるけど、この研ぎ器はがんばってもムリっぽいです。
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100均包丁を研いでみる。(2)

包丁の切れ味には、実は客観的な基準がありません。

硬さを測ることはできますが、切れ味を正確に測ることはできないのです。

刃先の鋭さがおなじでも、刃の角度や包丁の重さによって切れ味の感覚は変わります。切る物の硬さや大きさによっても変わるのです。

砥ぎやさんの基準は、爪に15度ぐらいの角度で当ててみて、沈めば合格。滑ると失格です。


この基準に照らすと、GALAXYの新品は残念ながら失格です。


切れ味を写真や図や文章で説明することはできませんので、せめて画像だけでもアップしてみます。

まずはアゴの部分のアップ。


砥ぐ前。新品状態。
ago01.jpg



砥いだ後。
ago02.jpg


ちなみに同じGALAXY777ですが三本買った中の別の包丁なので切刃の状態が違います。砥いだほうの切刃の面がなんだかうろこ状になっていますが、この個体は特にこういう模様が派手でした。ハンディーリューターで切刃を削ったように見えます。いくらなんでもそんなことをしたらかえって手間だろーと思うのですが、中国のことですから人件費の方が安いのかもしれません。
ほかの2本はそん風じゃ無いのですが、いずれにしてもしのぎ線がウネウネです。工員の熟練度や使ってる機械の問題でしょう。


次に、刃元側から見た縦の画像。

新品。
hasaki01.jpg


砥いだ後。
hasaki02.jpg


刃先の中途半端な小刃とかなくしちゃってます。
これで、わたし基準で「切れる」状態になっています。ニンジンもスカスカ切れます。これが100円で売ってたらバカ売れでしょう。だけどわたしが砥ぐと1050円もらいます(笑)
この状態で、もしかすると2~3000円の新品の包丁よりよく切れるかもしれません。

じゃあ1050円はらって100円の包丁を研いでもらったほうが2000円の包丁を買うよりお得かというとそうでもなくて、たぶんこの包丁は、すぐに切れ味が落ちてしまうと思います。硬い物や大きい物を切るとすぐに刃が欠けると思います。研いだ感じでは、欠けるというより曲がっちゃうかもしれないと思いました。とにかく柔らかい。
野菜ぐらいは大丈夫だと思いますが、総合的に勘案すると、やっぱりオススメできる包丁じゃありません。しかし100円でこんだけ造れるのはやっぱりすごいなと感心します。


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100均包丁を研いでみる。(1)

100均の包丁の硬度を調べるという動画がYouTubeにアップされてます。
http://www.youtube.com/watch?v=f0vhC7hDtHw&feature=related

ロックウェル硬度計なんかふつうの人は使えないから、なかなかマニアックで楽しい動画。100円といってもいちおう刃物鋼が使われているらしい。SK材かなー?

そしてその続編だと思うけど、研いだら切れるのか?という動画も同じ人がアップしていた。
http://www.youtube.com/watch?v=wB51-H-TmnE

しかしこれについては残念ながら、この人がプロじゃないからどれぐらいのものかはっきりしない。
そこで私も買ってきて研いでみました。


ダイソーで買った三徳包丁。 NEW GALAXY

gxy00.jpg


まず、これだけの大きさ・形状の品物が、100円で売ってるということ自体がスバラシイです。それもこれも中国の低賃金労働者のおかげです。
中国が為替自由化したら日本の物価は一気に上昇します。話が逸れますけど、安い元の恩恵を最大に受けているのは中国の新興プロレタリア階級で、いちばん割りを食らってるのは中国の低賃金労働者達です。
中国人が金持ちになったなんて幻想。低賃金労働者の生活環境は悪化していると思います。


さてこの包丁の特徴。

峰からしのぎまでは刃厚が同じ。一枚の鉄板をプレス抜きしたものです。
スーパーや量販店で2~3000円ぐらいで売ってる包丁もプレスですけど、峰から刃先にかけて徐々に薄くなっています。研ぎ減らして行くならこの方がいいです。使い捨てならあんまり関係無いかもしれませんけど。

gxy01.jpg


しのぎ線がウネウネ。商品によって線の形状がまちまち。
どうやら小さなグラインダーを使って手作業で削っているようです。
そもそも両刃の洋包丁にはしのぎなんて無いのが普通で、しのぎのある和包丁では「しのぎが命」と言われるほど重要ななの部分ですが、100円なので仕方ありません。

gxy02.jpg



しのぎから刃先までの面が凹んでいる。
ナイフだったらホローグラインドといってよく使われている手法です。
http://www.watanabeblade.com/info/ho.htm
ナイフは分厚いから、こうしないと切れ味が悪くなるのです。だけどこの包丁は刃が薄いからそういう意図じゃないと思います。おそらく単に、こういう径の小さなグラインダーを使っているから。ということでしょう。

gxy03.jpg
アゴの方から写したアップの写真です。ビミョーに凹んでるのがわかるでしょうか。


外見上の特徴はこんなところです。


つづく。


+++++
他の種類の包丁との比較


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last modified 05.18.2012
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菜切り包丁ステキ!

菜切り包丁って持ってなかったんです。機能的にはいいよなーと思ってたんですけど、なんか持つ機会がなかったんです。
研ぎの練習用に以前オークションで買ったものがあって。
キレイになったから再販しようと思って使ってなかったんだけど、思い立って引っ張り出してきて使ってみました。

菜切り


そしたらやっぱり思ってた通りすんごくいい。切れ味サイコーデス!

トマト切ってみました。

あんまりスイスイと薄く切れるもんだから、25回も包丁入れた薄切りになっちゃいました。だからどうってわけじゃないけれどw

トマト

切り残しもありません。

刃が直線!というのはやっぱり、いいもんです。野菜料理が増えそう。

気に入ったから、これは売らずに使います。

菜切りを買って使おうって思ったひとは、シャンとした砥石と面直しも買ってください。直線命の包丁です。


[菜切り包丁]
和包丁の一種。和包丁には珍しい両刃包丁。刃厚が薄く、刃線は直線。
関西型は刃先が尖っていて、関東型は丸い。
刃線がまっすぐでソリが無いので千切りなどに便利。たくあんを切ってもつながったりしない。刃厚が薄いので切れ味が鋭い。一般的な野菜切りには最高の性能を発揮する。
一方、大きな物や硬い物を切ることには不向き。
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錆び(2) 黒錆びと赤錆び

包丁の錆びには黒錆びと赤錆びがあります。このふたつは、結晶の構造が違っています。

赤錆びは「鱗鉄鉱(りんてっこう、lepidocrocite、レピドクロサイト)」という組織で、顕微鏡で見るとウロコのような結晶構造になっています。
黒錆びは「針鉄鉱(しんてっこう、goethite、ゲータイト、ゲーサイト)」と言います。針のような結晶構造になっています。

さて、鉄というのは重量比でいうと地球の30~40%を占めるといわれる最も多い成分です。実は地球というのは鉄だらけなんです。だけど地球の表面を削っていくと中身がピカピカ光ってるってわけじゃありません。
鉄は、地球の環境では酸素と結合した、つまり酸化した状態で安定して存在しています。
言い換えると、鉄というものは本来錆びているものなのです。
身近なところでは砂鉄がそうです。黒いですよね。鉄鉱石も黒いです。

錆びは黒錆びも赤錆びも酸化鉄ですが、このうち、黒錆びが鉄の地球上での本来の姿なんです。
赤錆は黒錆に変わる過程の物質です。ほおっておくと最終的には黒錆になります。

製鉄というのは、鉄を溶鉱炉なんかで熱して溶かす過程で、酸素を分離させる作業のことなのです。


さて、安定した黒錆び、ゲーサイトですが、これは放置しておいてもかまいません。見た目は悪いけど。
南部鉄器とか鉄のフライパンみたいに、鉄製の調理器具で黒いものがあります。包丁にも黒打ちといって表面が黒い物があります。これらはゲーサイトとは違うんですが安定した黒錆びで表面を覆って内部の酸化を抑えているんですね。

一方の赤錆びですが、これはさらに化学変化する不安定な錆びです。また、組織が緻密じゃないから内部の金属を酸化から守る働きもありません。
赤錆びは放置せずに削るなり溶かすなりして取り去る必要があります。


ちなみにアルミニウムやクロムやチタンは、金属の表面に非常に薄い不動態皮膜を形成するため錆びにくいです。
要するに、表面がうっすらと錆びているんです。この錆びが緻密な組織で、内部に酸素や水を通しにくいから、内部まで錆びが進行しにくいんです。
ステンレスは鉄の一種なのですが、鉄にクロムを少なくとも10.5%以上添加した合金なので、クロムが形成する不動態皮膜のおかげで錆びにくいのです。

金(GOLD)も錆びませんが、こいつは別の理由で錆びません。「標準電極電位」というものの関係で、原子の最外殻にある自由電子が移動しないのです。もともと酸化腐食しないのです。
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錆び

鉄が錆びるということは、原子レベルでみると「溶ける」ということだそうです。
「溶ける」というとトロトロの液体になるというイメージですが、原子レベルだからそんなふうにはなりません。原子核を分裂させたら大爆発です(原子爆弾)。


むずかしい話を少し書きます。

原子は、「原子核」とその周りを飛び回ってる「電子」とで構成されています。太陽の周りを惑星が飛び回ってるのと同じような感じです。

電子の軌道とか数と、原子核の中にある陽子の数によって、原子の種類が変わるそうです。

むかーしスイヘイリーベボクノフネっていうのを高校の化学か何かでやった覚えがありますが、あれが原子の種類です。鉄はFeという原子です。

金属は一種類の原子が規則正しく並んだ物質です。
複数の異なる原子が結合したものが分子です。有機物は原子でできています。
金属にも異なる種類の原子が混ざったものがあります。合金といいます。しかし結合の仕方は分子とは異なります。
たとえば鉄(Fe)に一定量の炭素(C)が混ざった合金を鋼(スチール)といいますが、炭素の量が1%でも2%でも鋼であることに変わりはなく、性質も同じようなものです。
しかし炭素(C)に酸素(O)が結合した物質は、酸素が1個なら一酸化炭素(CO)、酸素が2個なら二酸化炭素(CO2)で、全く異なる性質の物質になります。

さて、「錆びる」ということが「溶ける」ということだ、というお話しに戻りますが、原子のいちばん外側を回っている電子は「自由電子」といわれます。そしてこの「自由電子」だけは、隣の原子に移動したり、隣の原子から移動してきたりします。

そして自由電子がどこかに行ってなくなっちゃった原子は、原子同士の結合から離れやすくなります。
ちなみに自由電子がなくなった原子が「イオン」といわれるものです。「マイナスイオン」なんていう俗語がありますが、科学的にはそんな物質は存在しません。
それで、原子が金属の結合から離れることを「溶ける」と表現するのですね。

なぜ「溶ける」という表現になるのかというと、原子は必ず水分の中に離れていくからなんだと思います。大気中にも微細な水分があります。水分が無いと鉄は錆びません。

つづく。
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包丁を研ぐこと。

包丁を研ぐのに、砥石を使う方法と簡易砥ぎ器を使う方法があります。
本来的にはやはり、砥石を使う方法が正当ですから、ここでは砥石を使って研ぐ意味について書いてみます。具体的な研ぎ方は、いろんなホームページや書籍で紹介されていますから、信頼できるサイトを参照してください。藤次郎のサイトなんかいいですよ。
http://tojiro.net/jp/training/sharpen.html

包丁を研ぐ目的はふたつです。ひとつは刃を鋭くすること。もうひとつは形をキレイにすること。

刃を鋭くするということは、使い込んで丸まった刃先を尖らせるということです。これが研ぐということの基本です。
あまり使ってなくて形が歪んでいない包丁なら、これだけを考えればいいでしょう。
しかし実は、単純に尖らせさえすれば良いというものでもなかったりします。
包丁の刃はノコギリ刃になっています。ギザギザなのです。
これに対してギザギザが無い真っ直ぐな刃の代表は、カミソリです。この他には、鉋(カンナ)、鑿(ノミ)、彫刻刀などが真っ直ぐな刃です。
真っ直ぐな刃の刃物は、削る(切る)対象に対して刃を水平にして滑り下ろすように使います。野球グラウンドをトンボでならすような使い方ですね。
ノコギリ刃にするのは横に引いて使う刃物です。ハサミもノコギリ刃です。カッターナイフもノコギリ刃です。包丁も当然、横にひいて使うから典型的なノコギリ刃の刃物です。
ふつうギザギザは見てわかるような大きさじゃありません。顕微鏡で見てわかるような大きさです。

刃がギザギザじゃないとどうなるのかというと、取っ掛かりの部分で刃が切る対象物にめり込まない、滑っちゃうことがあるのです。
良く滑るのは表面がツルツルなもの。典型的なのはトマト。トマトは皮がけっこう頑固にツルツルです。
テレビショッピングなんかで包丁や包丁研ぎの宣伝をするときによくトマトが使われますが、トマトはギザギザがわりと荒い方が切りやすいのです。

包丁研ぎでは、刃先を尖らせつつ細かい部分ではギザギザにするわけですが、特殊な研ぎ方をしない限り刃先はまっすぐになりませんから、あまりギザギザを意識する必要もありません。


次に形をキレイにする、つまり整形です。
長いこと使っていると、研ぎ癖などで形が狂ってくるものがあるのですね。
また、両刃包丁の場合は峰の方が刃の部分より厚くなってるものがあります。こういうものは、研いで減っていくにつれてだんだん刃が分厚くなっていきます。こういう包丁を長いあいだ砥いでいると、同じ角度で砥いでても刃厚が邪魔になって切れ味が悪くなることがあります。
すると、どこかのタイミングでいちど、刃全体を薄く仕上げてやる方が切れ味が良くなります。
平らな砥石を使って丁寧に研いでいれば大きく整形する必要はあまり無いのですが、砥石というのは研いでるうちに歪んでくるものですし、簡易砥ぎ器や棒状のシャープナーばっかり長いこと使ってると、元の形を維持するのは困難です。
どこかのタイミングで整形が必要になる、整形しないと研げない、あるいは研いだつもりでも切れるようにならないといったことに、いつかなります。
ちなみに片刃の和包丁のほうが両刃の洋包丁より形を維持することは簡単です。


研ぎに出てきた包丁でキレイなものは、元の形のままで刃先を鋭くするだけだから簡単なのですが、スンゴイやつは、まずどういう形に仕上げようかなーという想像力を働かせなければいけません。鉄板を削って新しく包丁を造るぐらいの勢いで整形しなければいけないものもあります。
そういうのは値段も高くイタダキマスので、包丁研ぎはなるべく形を変えてしまわないように、丁寧に。変わっちゃったカモ、と思ったら、ひどくならないうちに早めにプロにお願いして修正しといた方がいいです。ちょっとした修正のうちなら料金はおんなじです。

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三徳包丁と牛刀

一般家庭で使われている包丁の多くは、両刃の洋包丁です。

両刃の洋包丁にもいろんな種類があるのですが、洋包丁というぐらいだから西洋から明治時代に輸入されてきたものが原型で、その当時入ってきたものは牛刀だったそうです。

牛刀っていうと牛の肉を切るための包丁みたいな感じですけど、そういうわけじゃありません。欧米では“料理用の大きなナイフ”とか“シェフ用のナイフ”などという名前で呼ばれています。「ブルナイフ」とか「カウナイフ」なんていう名称の包丁はありません。肉食文化といっしょに入ってきたために日本で牛刀と名づけられたようです。

この牛刀がちょっと不評だったそうです。
先が尖っててコワイから。なんていう説明を見たこともありますが、出刃包丁だって刺身包丁だって先は尖ってますからちょっと怪しい説です。
ともかく、牛刀の改良版として作られたものが、三徳包丁なのだそうです。


よく、牛刀と三徳包丁はどちらがいいのかと聞かれます。

三徳包丁は「万能包丁」や「文化包丁」とも呼ばれます。グローバルのように三徳包丁と文化包丁を区別しているメーカーもありますが、一般的には同じ物です。
刃渡りは18センチ程度までです。分厚い物は見たことがありません。もし大きくて剛性の高い包丁が欲しいなら、牛刀を選ぶことになります。
現代日本の一般家庭用なら18センチで問題ないと思います。
私は24センチの牛刀をよく使います。特に大きい肉の塊を捌くときや生のカボチャのような硬い食材を切るときには重宝します。
しかし多くの調理は15~18センチ程度で間に合います。女性には20センチ以上の牛刀は扱いづらいという方が多く、15センチ程度のペティナイフでほとんどの調理を済ませるという方もいらっしゃいます。


形状の大きな違いは、先端の尖り具合と、刃線の曲がり具合です。

牛刀と三徳_説明文


先端は、牛刀の方が尖っています。
これは、大きな肉や魚を骨に沿って切り離す場合などには便利でしょう。魚を捌くため出刃包丁も牛刀と同じように先端が尖っていますが、三枚卸するときに先端が尖っているとても便利です。
しかし一般家庭では、骨付きの大きな肉の塊を切り分けたり魚を丸ごと一匹捌いたりする機会はあまりないと思います。

細かい作業をする場合も先が尖っている方が便利です。ペティナイフが無く中型包丁一本で作業をするなら、先の尖った牛刀がいいかもしれません。
先が尖っていないために有利なことは、比較的安全だということぐらいじゃないでしょうか。


刃線の曲がり具合について考えてみます。
牛刀の方が反りが大きく、三徳の方がまっすぐです。
まっすぐな部分が長いほど、千切りなどに向いています。反りが大きいとタクアンを切ったときつながってしまうことがよくあります。

大きくて比較的硬いものを押し切るとき、この反りの部分を対象に当てると力を入れやすいです。「押し切り」に便利なのです。

牛刀colo_動き


欧米から入ってきた牛刀が、日本でわざわざ三徳包丁のような形状に変更されたことには理由があるはずです。
現在の和食につながる様々な料理が考案されたのは江戸時代です。
昔の日本では六畜を食べることは穢れ(けがれ)であるとされ忌避される習慣がありました。全く食べられていなかったわけではなく、焼き鳥などは江戸時代から一般的だったようですが、現代のように大量に畜産されているわけではないので、肉自体が高価でもあったようです。
魚と野菜を使った料理が一般的で、魚には出刃包丁と刺身包丁、野菜は菜切り包丁や薄刃包丁が使われました。

菜切り包丁のシェイプは長方形で、刃線がだいたい真っ直ぐです。

この菜切り包丁で牛刀と同じように斜めに対象に切り込もうとすると、角だけが当たってしまいうまくいきません。

菜切りcolor_動き2


この形状の包丁は、刃を水平に維持したまま斜めにトントンと上下させる刻み物に向いているのです。
菜切りcolor_動き
刃線のカーブ牛刀などでこれと同じように切ると、切れ残りができてしまいやすい。タクアンを切るとつながってしまうわけです。
牛刀で刻み物をするときは反りから切り込んで刃元まで少し弧を描くように動かすのが正解です。

菜切り包丁と牛刀ではそもそも包丁の動かし方が違うと言えるでしょう。

そこで刃線が比較的まっすぐで、身幅が比較的広いけれど、少しは反りもある三徳包丁の形が定着したのではないかと思います。

押し切りもしやすい。
santoku01.jpg


刻み物もしやすい。
santoku02.jpg


こういった特徴を念頭に、ご自分のお料理スタイルに応じて選択なさってみてください。

個人的には、

・長さが18センチで問題なければ、身幅が広めの三徳包丁
・20センチ以上の長さがほしければ牛刀
・やっぱりどっちかよくわかんないって人は三徳

にしておけば良いと思います。

ちなみに私は仕事柄いろんな包丁を持っていますが、24センチの牛刀を使うことが多いです。

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(最終更新 2012/05/18)
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欠け取り

包丁の欠けを取るというけど、実際に取るのは欠けた部分じゃなくて欠けの回りの刃の部分。

家で使ってる尺(30センチ)のフグ引きがちょっと欠けたまま使ってたんだけど、昨日挑戦してみたら半日かかっても完成しなかった(TT

フグ引き包丁とは刺身包丁のさらに薄いものです。
だからムリにガリガリできない。
出刃だったら、初めに荒砥の上に刃を立てて欠けが無くなるところまでゴリゴリ削っちゃってから刃線を整えます。だけどフグ引きの薄くて繊細な刃では怖くてそんなことできません。

また、刺身包丁って厳密にまっすぐな包丁だから、全体を少しづつ、満遍なく減らしていって、常に狂いがないか確認しないといけない。牛刀なんかは反ってる部分が大きいから、バランスさえ取れていれば反り具合はちょっとぐらい変わっても問題ないんです。

また、硬くて長いから砥石の平面にもすごく気を使います。平面が狂ったまま研いだら刃も曲がっちゃうから、頻繁に面直しをしないといけません。


堺の砥ぎ職人さんがグラインダーでガリガリやってる画像がyoutubeにありますけど、すんごいですねー。
自分で手砥ぎやったあとに見るとすごさがよくわかります。


荒砥ぎ
http://www.youtube.com/watch?v=hP2eUWIGMHA&feature=related

円砥
http://www.youtube.com/watch?v=Dym61BvH5rA&feature=related

仕上げ、木砥掛け
http://www.youtube.com/watch?v=vZhrvYCqsGk&feature=related


ほかにも包丁砥ぎの動画がたくさんあったけど、それはだめだろーっていうのがわりとありますねー(^^;



欠け取り(1)

こういう欠けた包丁があったとして、欠けの周りだけ砥石をかけると、


欠け取り(2)

こんな感じになってしまうから、


欠け取り(3)

こうしないといけない。角度を保つためシノギも押す。
切刃全体を一気に砥がないといけない。部分部分に分けて研ぐと段刃になる。砥石を使うなら尺の包丁を安定して振れる技術が必要。ヘタな人がグラインダーなんか使うと壊れてしまいます。


Last modified 28.01.2011
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あたらしい砥石

砥石を3本ほど追加しました。

arado

左が新しい荒砥、200番。右は先週買った荒砥で180番。
一週間で1/3減りました。
2ヶ月で何本使うんでしょうか(^^;

荒砥の減りが早いのは、力を入れて凹ませるからです。平面を出すために、いちばん凹んだ部分に合わせて周りを削ります。ほとんど修正砥石で減らしてるのです。
包丁については、荒砥で形を決めてしまえば中砥や仕上砥はあんまり使わなくていい。中砥や仕上砥で削ってるようじゃいかん。ということでしょうか。他の刃物は中砥が荒砥の代わりをするものもあります。

きょうは鑿(のみ)を終了間際に少しやりました。
これがなかなかタイヘンです。平面・命なのです。(包丁はちょっとぐらい誤差を許容します。)
本来は鑿や彫刻刀は中砥からはじめるんですが、練習用のギトギトの鑿をやってるから荒砥を使ってます。そして荒砥の平面を出すためにまたまたごりごり削っています。
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