正本総本店 本霞薄刃 七寸 (2)

修復しました。
とりあえずこれで完了扱いとします。


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錆が貫通しているという最悪の状態ではありませんでした。

とはいえ、アゴの部分と裏の刃線の真ん中あたりの錆がけっこう奥まで浸透してたから、赤錆を落としただけの状態では刃をつけてもデコボコになってしまいます。
そこで錆が浸透している深さまで荒砥の小割れでゴリゴリ削って、鎌砥(中砥)、仕上げ砥、スチールウールに研磨剤までかけてしこしこ磨いた結果が写真です。

裏の錆跡はよく見れば数点残ってる程度までしつこく落としました。刃線の錆はもちろん完全に落としたからこれから実用上の問題が生じることはありません。
磨いたあとで裏押ししたから、そのときのカスレがあります。

切刃(表面の、真ん中の線[しのぎ]から刃に続く平面部分)の錆跡は、使って研いでるうちに目立たなくなるもんだから削ってません。肉が痩せちゃうから。

下砥ぎの跡は残ってるけど表はだいたい鏡面に仕上がっています。お客さんの前で使ってもまあ恥かしくないでしょう。ちゃんと水はじきます。
新品並みとまでは言いませんが、じゅうぶんキレイなレベルにはなりました。

手間はかかったけどいい物を仕上げるのは楽しいです。
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正本総本店 本霞薄刃 七寸

未使用、ないしほとんど使っていない状態のものを、悪環境で長期間保管していたもののようです。
表は全く砥石に当てていなかったようですが、裏押しの形跡はありました。


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上代35,600円(税込み37,380円)
高い包丁だけど最高クラスの包丁じゃない、あくまで実用品です。

実用上問題になるのは、まず赤錆があること。


錆っていうのは鉄が酸素と結合した(酸化した)状態なんだけど、鉄っていうのは地球上では本来酸化した状態が安定なのです。
気温0度~99度なら水は液状が安定っていうのとおんなじ。さむーいところだと凍るし暑ーいところだと気体になります。鉄は酸素で満たされた地球上では酸素と結合しているのがふつうな状態です。

錆びるっていうことは、鉄が本来の状態に戻ってるってことなんです。水が蒸発したり凍るよりも反応速度は遅いんだけど。

完全に安定してるのが鉄鉱石とか砂鉄です。こいつらは黒いです。黒錆はそれ自体で安定してるのです。
周りの金属に影響しないので、表面の黒錆は内部の金属を錆びから守る役割も果たします。だから見た目を気にしなければほおっておいてもかまいません。

だけど赤錆は完全な安定状態じゃなくて、周りの部材に広がります。だから、赤錆を発見したらすみやかに落とさなければいけません。

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角巻に抉れた傷。これは治せません。


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とくにヤバいのは刃線の錆です。
刃が薄いから、もし貫通してしまってると錆の無いところまで砥いで刃を後退させるしかありません。
それから裏の錆。
片刃の和包丁はふつう裏側を研がないから、放置するとずっと残ってしまいます。表の切刃の部分は使って研いでるうちに目立たなくなるから使うことを考えれば砥ぎすぎない方がいいんだけど。

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東鋏

ふるーい裁ち鋏の修復です。


裁ち鋏は明治時代に刀鍛冶だった弥十郎というひとが原型を作りました。
羅紗鋏(らしゃばさみ)ともいいます。

明治時代になって明治政府から廃刀令が出て、武士の帯刀が禁止された。それで刀関係の職人さんがたくさん職にあぶれた。
いっぽう西洋文明がどっと入ってきた。羅紗というのは生地です。洋服の生地。
これを切る西洋鋏も輸入されたんだけど、なんだかデカくて使いにくかったのだそうです。

そこで刀鍛冶をやっていた弥十郎さんが工夫して、今の裁ち鋏の原型を作った。
弥十郎さんの造った鋏の銘は「弥吉」です。

弥吉は何人か弟子を取って、弟子達がまた弟子を取って、というふうにして、いまは4~5代めぐらいになっています。

系統図はこちら。

いまでも続いてるのは「長太郎」「兼吉」、そして兼吉の弟子の「庄三郎」の系列です。



この鋏は、何代目かわからないけど庄三郎。
京都の古い家から出てきたものだそうです。

(表)
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(裏)
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(部分)
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もちろんこの状態ではぜんぜん何も切れません。
グラインダーで削って砥ごうとした形跡がありましたが、砥ぐ角度を間違っていたので汚れや黒錆びが無かったときでも切れなかったろうと思います。


がんばって磨いて砥ぎあげました。

(表)
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(裏)
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(部分1)
ちなみにこの面は汚れだか黒錆だかではじめは全く見えませんでした。化石を発掘するようです。
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(部分2)
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良く切れるようになりました。
できれば柄の黒い部分も塗装し直したいんだけど今は粉体塗装だそうで専門設備がないと同じ状態にはできません。ペンキでいいのかな?

同じような状態のものを10本ぐらい直したんだけど、この庄三郎と与三郎はとくによく切れます。そしてむちゃくちゃ硬い。ソリの修正が大変でした。
なにか、造り方とか素材とかが違うんでしょうか。
初代庄三郎の時代だとしたら玉鋼の可能性もあります。
裏を磨いてても、どうも鋼と地金の合わせ目が見当たらないんですね。
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