刃断面の画像

包丁の断面、というか、アゴ側から撮影した写真ですが。
このような見方で、刃線の歪みも確認します。砥石の平面も同じように見ます。

tyokusen.jpg



片刃包丁。

hakakudo_kodeba.jpg

写真は木屋の小出刃包丁です。
出刃なのでアゴは二段にしています。裏から二段にする場合もあるし裏表両面から三段にする場合もあります。
研ぐときは切刃全体を砥石に当てて研ぎます。



両刃包丁。

hakakudo_kiya.jpg

写真は木屋の古い牛刀です。
国産の一般的な両刃包丁はだいたいこんな感じです。峰から刃先に欠けて緩やかなカーブを描いています。



中国製両刃包丁。

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写真は100均のダイソーで買った三徳型の包丁。Galaxy.777と書いてあります。
国産のような緩やかなカーブは無く、平らな鉄板の途中から刃先端にかけて斜めに角度がつけられ、刃先に鈍角な刃がつけられています。



古くてでっかい、野鍛冶が打ったと思われる包丁。

hakakudo_dai.jpg

参考までに。
この包丁は刃渡りが245mm、中華包丁をスリムにしたような長方形、和鋼の包丁です。
刃線がまっすぐじゃないことがわかると思います。
刃厚や刃の硬さが場所によって微妙に違うので、完全な直線に治すのが難しい。難しいのでこの包丁は研ぎの練習に使っています。



柳刃(河豚引き)。

hakakudo_hugu2.jpg

築地正本、尺の霞です。
微妙に真ん中が凹んでます・・・(><
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片刃の方が両刃より研ぐのがタイヘン、ということについて。

片刃の包丁の修正はけっこうタイヘンだということは前にも書きました。

もうちょっとわかりやすく書くと、

両刃の包丁が欠けたとき、修正するために必要最低限研ぐとしたらこんなイメージ。赤いところが欠けとして。両側から研ぎますが。

gyutou.jpg

いっぽう、片刃だとこれぐらい削り落とさないといけません。

yanagi.jpg

片刃は鎬(しのぎ)まで平面のまま押さないと刃角度が変わってしまうんですね。両刃は片刃でいう鎬の部分がずっと刃先に近いところにありますから、面ごと削る必要はありません。
それから、柳刃みたいな直線部分の長い包丁で、直線部分が欠けると、アゴから全部研ぎおろさないといけません。牛刀なんかだと反ってる部分が大きくて、沿ってる部分の欠けならRの具合はちょっと変わってしまうけど、刃線全部を後退させなくても修正できるんですね。

そして柳刃包丁は薄くて刃こぼれしやすいから、研削力の強い荒砥が使えません。

手砥ぎで長い刺身包丁を研ぐと、ちょっとした欠けでも半日以上かかることがあります。


+++++

記事が前後しますが、「刃断面の画像」に使った写真で説明してみます。

この洋包丁の場合

hakakudo_kiya.jpg

この範囲を研ぎます(両面)。

gyuto02.jpg



一方、このふぐ引き(柳刃)包丁の場合

hakakudo_hugu2.jpg

これだけ研ぎます(片面)。

hugu.jpg


しかも牛刀は刃渡り18センチ、ふぐ引きは30センチ。
牛刀は少しぐらい刃線が歪んでもそれほど問題ないけどふぐ引きは刃線もシノギも直線で切刃も平面じゃないといけません。

直線と平面を維持するには先から元まで一気研ぎできないといけません。
30センチを一気研ぎするには研ぎが安定していなければいけません。

とはいえ。
それほど長くなくて形も狂っていない片刃なら、切刃をペタンと砥石に当てて包丁にまかせて研げばいいだけなので、自分で角度を決めなければいけない両刃よりも簡単であるという側面もあります。

そんなこんなですが。
欠けた包丁や長い間研いでない包丁についていうと、概して片刃の方が両刃より手間がかかります。
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蛤刃(はまぐりば)

先日ワールドビジネスサテライトで、日本の包丁が海外でも売れてるって話題が取り上げられていました。
そこで新潟県燕市にある吉田金属のグローバルの包丁が紹介されていて、「当社の製品は他社と違って蛤刃」で、「ぐっと入っていく感じ」「衰えにくい切れ味」「刃持ちが良い」などと紹介していました。

蛤刃というのは包丁の断面図を見たときに側面が平らじゃなくて蛤の貝殻みたいに曲線になっている刃のことです。Rが小さいものは浅利刃(あさりば)とも言います。

こんなかんじ。

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洋包丁は蛤刃になってる物がけっこう多いです。グローバルだけじゃない。



ちなみに100均のダイソーで売ってた包丁はこんな感じでした。

101.jpg


日本製だと刃先が蛤刃になっていないものでもだいたいこんな感じです。

106.jpg


ついでに片刃の和包丁の断面はこんな感じ。

105.jpg



包丁の値段差は、素材である鋼材の違いもあるけど加工の手間の違いが大きいのです。

ちなみに下図のようにエッジの部分を削って造ります。
104.jpg

角を削ると、削らない状態より斜面抵抗が減りますし、切った物が張り付きにくく身離れが良いという効果があります。
たとえば剪定鋏は必ず蛤刃なんですけど、切断対象物である木の枝は硬くて樹脂で汚れて、刃の表面が平らだと抵抗がすごく大きくなるのです。
食材は木の枝ほど極端じゃないけど、きゅうりを輪切りにしたとき張り付きにくいといった効果はあります。刻み物をするときなんかけっこう違う。

摩擦抵抗や斜面抵抗が小さくなると期待されるから、切れ味も良くなるでしょう。
ちなみに片刃の和包丁の裏すき(裏の凹んでいる部分)も抵抗を小さくする効果があります。それで切れ味を増している。

和包丁の刃先を蛤刃気味に丸めて使っている人もいらっしゃいます。
シノギじゃなくて刃先側を削っているので、もちろん身離れも良くなるけど、刃角度を鈍角にすることで刃持ちを良くする効果が大きいんじゃないかと思います。

107_20110114085155.jpg




ところでこの蛤刃は、理美容鋏でも流行しています。
この理由がどうしても私にはわからなかった。
毛髪の直径は約80μmです。平面部分の摩擦抵抗や斜面抵抗なんか関係ありません。

たとえば「蛤刃は刃先を鋭角にできる」などと説明しているサイトもありましたが、平面部分の角を削るだけなので関係無いでしょう。剛性が問題ならむしろ削らない方がいいはずです。剛性を保ちながら軽量化できるのかなとも思いましたが、ほとんど変わらないでしょう。
蛤刃についてホームページで何らかの説明をしているシザーメーカーさん数社に質問してみましたが、「なるほどねー」と思える回答は今のところもらっていません。

理美容鋏については、私は理美容鋏の蛤刃には機能的な意味は無いと思っています。
もし理美容鋏について蛤刃の具体的な機能をご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

見た目はきれいです。それは大事なことだと思いますが。
デメリットはユーザーが研ぎにくいこと。研ぎ屋さんに出しても仕上げにひと手間かかる分の手間賃で高くなります。


昔は理美容鋏や包丁はユーザー自身が研ぐのが当たり前だったんだけど、そういう習慣が無くなったのはステンレスの普及に拠るところが大きいと思います。ハガネしか無かったときは、手入れを怠ると簡単に錆びるから逆にユーザー自身のメンテナンス意識が高かったのです。
研ぎ屋さんとしてはありがたいことなのかもしれないけど、メーカーに出したら1回3千円、送料込みで5千円近くもかかると、ちょっと切れ味が落ちたぐらいでしょっちゅう研ぎには出せません。
ハサミ自体の値段もふつう2万円以上、高いものは10万円以上するから、しょっちゅう研いですぐ減ってしまうのも困ります。
そういった理由で、研ぎに出される物はかなりギタギタになっているものが多いです。

プロが使う道具がそんな状態というのは問題でしょう。

切ってもらう立場としてもイヤです。

私は、安くてシンプルなハサミでも自分でコマメに研いで使っているお店が正しいと思います。

メーカーや研ぎ屋には欠けたり曲がったりしたときだけ出したらいいんです。
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ハサミの力学

ハサミに加わる力について説明します。

二枚の刃体がすり合わさって髪を切っていく部分の模式図です。

sissor_powers.jpg

赤い矢印 ↑は、指でハサミを閉じようとする力です。

青い矢印 ↑は、毛髪が切断されるときの抵抗によって生じる力です。ハサミを押し広げようとする方向に力が働きます。

人毛の直径は約80μmだそうです。0.08mm。
押し広げようとする力はごく小さいものです。しかし二枚の刃体の隙間が40μm程度も開けば髪は切断されずに二枚の刃体の間に噛みこまれてしまう可能性があります。
切る対象が細い物や薄い物、また柔軟な物であるほど、噛み込みが発生する可能性は高くなります。厚みがある物やある程度の硬さや張りがある物の方が、簡単に切れるのです。たとえば薄いティッシュを切る場合でも、濡らして柔軟になっている方が切りにくいです。
また紙や布のような連続体は、たとえば横方向に80μm程度の欠けがあり切れない部分があってもその前後が切断されることで欠けの部分も引き切ってしまえる場合があります。しかし毛髪のような非連続体では欠けた部分で1本だけ噛み込んでしまうことがあります。


黄色い矢印 ↑は、青の矢印に抵抗する力です。
この力はいくつかのハサミの構造によって複合的に造られ、また補強されています。

ひとつは指の構造。
切るときにハサミに対して赤矢印の方向だけでなく黄色方向の力が加わります。静刃を保持する薬指と小指は手のひらの内側に向かってハサミを保持するように曲がります。そうでないとハサミが手から滑り落ちてしまうから。これに対して親指は動刃を押す方向に力を加えます。ハサミの姿勢を保持するためです。
指環の形状もこの力の加わり方を補強するようなカーブを描いています。

それから、バネ。
要ネジの周りに、刃体を押し付ける黄色矢印の方向に作用する板バネなどが組み込まれているハサミがあります。バネにはいくつかの種類があります。
バネがついていないハサミもあります。理美容ハサミ以外でバネが使われているものは少なく、庄三郎の裁ち鋏に見られるぐらいです。

反りも関係していると言えるでしょう。黄色方向の力を与えるわけではないかもしれませんが。

ハサミの自重も作用するとはじめに書いていたんですが、間違いだと気づいたので修正しました。裏向きか表向きかによって変わります。
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営業案内

刃物研ぎなどの営業案内です。よろしくお願いします!
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● 料金 

・いちどに2本以上出して頂いた場合は、2本目から1本あたり200円割引。

・5本以上出して頂いた場合は5本目から1本あたり300円割り引き。
・別途消費税相当額を加算します。
・大きく欠けている場合など、刃物の状態によって料金が高くなる場合があります。

ご近所やお知り合いの物をまとめて出してくださるとうれしいです。
毎月まとめて出していただけるような方は個別に検討させて頂くこともできますのでご相談ください。
オプションの柄埋めや柄付けは割引対象となりません。

刃物の長さの計り方はこちらをご確認ください。

包       丁
22センチ未満22~30センチ未満30センチ以上
牛刀・三徳・中華 その他両刃包丁1,0001,2001,400~
13センチ未満13~20センチ未満20センチ~
出刃包丁1,0001,4001,600~
22センチ未満22~28センチ未満28センチ~
刺身包丁1,2001,4001,800~
20センチ未満20センチ超
薄刃包丁1,4001,800~
30センチ未満30~33センチ33センチ超
そば切り包丁(麺切り包丁)2,4002,800お問い合わせ

ハ サ ミ
7インチ未満7インチ以上
理美容・トリミングシザー1,8002,000
裁ち鋏1,600
刈込鋏1,800
剪定鋏1,400
華鋏(古流・池坊)1,200
握り鋏・文具鋏等1,000


その他 大工道具・彫刻刀 等
ノミ・彫刻刀・革包丁1,000
カンナ1,200 ※
1,200
ナタ1,200
各種ナイフ包丁に準拠



■ オプション
柄埋め  500~
柄の交換 和包丁 1,000~ 洋包丁 3,500円~


大きな欠けや錆などがあり、料金があがる場合のフロー

・値段があがる場合、
 作業前にお電話等で値段をご連絡します。
   ↓
 (1)値段に合意していただいた場合は作業を行いお渡しします。
 (2)値段に合意していただかない場合は作業せずお返しします。
   ↓
 (2’)作業しない場合
    ・郵送によるご依頼の場合は送料を負担していただきます。
     具体的には、返送料(実費)をお支払い頂いてから
     返送するということになります。
    ・お預かりに伺った場合
     料金はかかりません。

 上記営業エリア内は取りにお伺いしますが、出張料その他の費用はかかりません。
 直接手渡しする場合は受け渡しの際に料金をお伝えします。
 その時点でお断りになられても、費用はいただきません。


● 営業場所
東京都練馬区氷川台4-52-11
研ぎやTOGITOGI
代表研ぎ師 坂田 浩志
原則として月曜日がお休みです。


● 営業内容
・各種刃物研ぎ
・各種イベント等での出張刃物研ぎ
・刃物研ぎ指導
・実用刃物に関係する原稿執筆、アドバイス等


● 営業エリア(お預かりに行ける範囲)
東京都練馬区 中野区 板橋区 豊島区 新宿区 杉並区 文京区 北区 埼玉県和光市
その他のエリアは原則として郵送対応となります。送料はお客様のご負担になります。
ちょっと外れた周辺地域でそれほど遠くなければお伺いできるかもしれませんのでご相談ください。


● 郵送・宅配

ご依頼フォームやメール等でお申し込みいただいた上、

1.商品を送って頂きます。
2.当方で現物を確認の上、お見積もり料金と振込先をお知らせします。
3.お客様から作業をするかどうか指示をして頂きます。作業する場合は費用をお振込みいただきます。作業しない場合はそのまま返送いたします。
4.お客様からのお振込みを確認後、作業着手し、作業完了したら返送いたします。

・期間
通常の研ぎであれば、お振込みの確認から遅くても1週間以内には発送できています。洋包丁の柄の交換は2~3週間程度かかります。

・諸経費
送料、お振込み代金等の諸経費は、お客様負担です。

・送付方法
発送は、大きなものでなければレターパックを利用される方が多いです。
http://www.post.japanpost.jp/service/letterpack/
返送用のレターパックや切手を同封していただく方もいらっしゃいます。大変助かります。
こちらからの返送方法は、当方に過剰な負担の無いものであればご指定に応じられます。

・留意事項
作業を進めてみないと作業内容、作業費用が確定しないものがあります。
たとえば、腐食の激しい柄の交換では、柄を外してみたら金属部分が腐食しすぎて折れていたとか、錆のひどい片刃の刃物で錆が刃鉄を貫通してしまっていたとかいう場合があります。
そのような場合、追加の費用が必要になります。作業を中断して返送する場合でも、柄が折れたりしている状態で返送させて頂く形になります。
お客様にとってなるべく想定外の出費にならないよう、追加料金がかかりそうなものは予めその可能性をお伝えするようにしますが、どうしても予見が困難なものはあります。


● 刃物研ぎ指導

A.一般指導コース 
2名以上 2時間コース4000円/人 所要時間2時間程度
砥石を使った家庭用の両刃洋包丁の研ぎ方を、テキストに沿って初歩から指導します。
砥石販売します。練習用包丁の貸し出しできます。

B.個別指導コース 1時間3000円 
実際に研ぎながら個別指導します。
テキストを使い基本から指導する場合は2時間程度が目安です。
ある程度技術がある方の、個々の細かいニーズに対応できます。

● 自宅営業で、店舗の看板はあげていません。ご連絡を頂いてこちらからお預かりに行くという形態です。研ぎ代以外は頂きません。包丁1本の方でもお気軽にご連絡ください。

・通常はお預かりした日から2日~4日ほどでお届けしています。
 繁忙時期や作業の都合により1週間以上かかる場合もありますので、お急ぎの場合予めお申し出ください。

貸し包丁が数本あります。必要な方は事前にご連絡ください。

・研ぎ卸し、両刃の片刃付け、その他マニアックな刃付けもご相談に乗ります。


ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。

以上まで。


最終更新日 2016/8/24 
「ノミ・彫刻刀・革包丁」の料金を、800円から1,000円に変更しました。
「理美容・トリミングシザー」7インチ未満の料金を、1,600円から1,800円に変更しました。

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ハサミの切れ味

前記事で刃物の切れ味に影響する要素を説明しました。
単純化すると刃先端Rと斜面抵抗や摩擦抵抗が切れ味を決定します。

ところが、ハサミに関しては必ずしも刃先端Rが小さいほど良く切れるとは言えないのです。

刃先端Rを小さくするためには、刃角度を小さくし、粒度の細かい砥石で研磨すれば良いです。
たとえば包丁の刃角度は15度~30度程度です。実用上は#1000程度でもよく切れるようになりますが、刺身包丁や菜切り包丁など鋭い切れ味が求められる包丁では、#7000以上、場合によっては#10000以上の仕上げ砥石を使います。

一方、ハサミの刃角度は浅いものでも35度程度で、80度以上のものもあります。ただし90度以上になると切れません。
また仕上げの番手は#1000~#2000程度でよく、#5000を超えると切断対象物が滑って逃げてしまう場合が多いです。

ハサミには一般的な刃物に関する切れ味の常識が通用しません。

この原因は、ハサミの刃物としての特異性にあります。

ハサミは以前にも書きましたが、二枚の刃体で切断対象物を文字通り挟み込んで切り離す刃物です。
ハサミを使わずに布や紙を切る場合、カッターナイフなどを使うでしょう。カッティングマットなどに対象物を敷いて、カッターナイフを押し付けて切ります。いっぽうハサミで切る場合は対象物は宙に浮いた状態です。つまり対象物が固定されていないのです。

固定されていない不安定な状態にある対象物を、二枚の刃体で固定し且つ切るというのがハサミの特徴です。

対象物を固定するという機能に対して、刃が鋭すぎることは悪影響です。
対象物を固定する役割は刃表の切刃の部分が担います。ここが滑らかすぎると対象物が滑るのです。
刃角度が浅すぎることも対象物を固定することに対しては悪影響です。刃体相互の角度が90度に近い鈍角である方が対象物を捕まえやすいのです。

ハサミの切れ味は、切る対象によってどういった要素が影響するのか異なり、他の刃物とは逆の状態、すなわち刃角を鈍角にしたり仕上げを荒めに留めて刃先端Rを大きめにしておいたほうが良く切れることがあるのです。

(Last modified 14.01.2011)
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刃物の切れ味

包丁などの刃物の切れ味は、

「対象物の結合を切る力」

と、

「切り進むときにかかる抵抗の大きさ」

の二つだけで、ほとんど決まります。


まず、「結合を切る力」は、刃物によってどう違うかを考えてみます。

力を加えるのは私たち自身です。包丁の刃がチェーンソーのように回転するわけじゃありません。
同じ力を加えたとき、それがどう変換されるかが問題です。
接触面積と単位面積あたりに加わる力は反比例します。刃先が鋭いほど接触面積は狭くなります。

つまり刃が鋭いほど良く切れます。

当たり前なことですが、もうちょっと理屈っぽく考えておきます。

刃先の鋭さは、工学の世界では「刃先端R」「ノーズR」などと表現するそうです。
Rは半径です。
要するに「刃先の幅の半分」という意味です。

半径ということは、刃先は球状になっていると仮定しているわけですが、実際に球形なのか台形なのかはわかりません。
しかし、もし台形や三角形のように角があるとすれば、もっと小さな刃先角があることになってしまうので、とりあえず球形だと仮定するのが合理的なのでしょう。

良く研いだ刃物の刃先端Rは、数ミクロン(1/1000ミリメートル)程度になっているようです。
1ミクロン以下の場合もあるようです。

数十ミクロン程度の大きさになると目視で厚みの区別はできません。
それでも物は切れます。
10ミクロン程度でも爪に引っ掛かると思います。実用に耐える切れ味でしょう。

しかし更に細かく研いで5ミクロンになると2倍、3ミクロンで3倍強、1ミクロンで10倍の差になるわけですから、見えないレベルでもかなり違いが出るのです。


刃物によって、どれだけ鋭くできるのかが違います。

より鋭くできる刃物は、刃金に使われる鋼材が硬いのです。

硬いということは、原子(粒子)の結合力が強く、且つ、位置関係が変わらない、ということです。
柔らかい金属の性質には二種類あって、ひとつはボロボロと割れたり欠けたりしてしまう物。これは単純に結合力が弱い。もうひとつはグニャグニャ曲がってしまうもの。これは、必ずしも粒子の原子や粒子の結合力が弱いとは限りませんが、位置関係が変わるのです。金属を押して弾性変形させている状態は、原子と原子の距離が伸びているのだそうです。手を離すと縮んで元に戻る。

柔らかい包丁では、研いだときに出る「カエリ」がグニャグニャしてなかなか取れないことがあります。
これは一定以上の薄さでは形状が維持できなくなっている証拠です。
硬い包丁のカエリは簡単に取れます。

硬度が高いということは、刃先端Rを0.5ミクロンまで小さくできる、或いは0.3ミクロンまで小さくできる、ということを意味します。
硬度の高い包丁でも研がずに刃先端Rが大きいままなら、柔らかい包丁と切れ味は変わりません。



では次に、「切り進むときにかかる抵抗の大きさ」について考えてみます。

まず、くっついている物が離れたくないと言って抵抗するのが切断抵抗です。
これは先述した「対象物の結合を切る力」で鎮圧します。

切断抵抗以外の主な抵抗は、「斜面抵抗」です。
斜面抵抗とは山を登るときの大変さだと考えてください。斜度が大きいほど大変で、荷物が重いほど大変ですね。
斜度が刃角度に該当します。
荷物の重さは斜面にかかる圧力の大きさです。
紙のような薄い物なら斜面抵抗はほとんどゼロです。魚の身は柔らかいのでそれほど大きくありません。カボチャのような硬い物では大きくなります。

刃物の表面の摩擦係数も関係しますが、指で触って感じるほどデコボコしていないかぎり、影響は小さいです。それよりも、鏡面に磨いた刃物の表面と切れた食材の間に分子間力が働いて、食材が張り付くことがあります。その方が強い抵抗になることが多いです。
張り付きを防ぐには多少刃物の表面が荒れている方が良いです。
蛤刃や二段刃なども張り付き防止に効果があります。


刃角度が大きいほど斜面抵抗は大きいです。

さらに、食材に当たる斜面が広いほど抵抗が大きくなります。

ある包丁の刃先少しだけ角度が大きくても、包丁自体が薄ければ、斜面の広さは小さいので抵抗はあまり大きくありません。それより多少刃角度が小さい包丁でも、厚みがあると、斜面の面積が大きくなるので抵抗が大きくなることがあります。
刃先端Rが同じで刃角度が同じであれば、薄い包丁の方が厚みのある物を切るとき斜面抵抗が小さくなるので、厚い包丁より切れ味がよくなります。


まとめると、切れ味に影響する包丁の性質は、

・刃金の硬度

・刃角度

・刃の厚み

・包丁の重さ


だと言えます。


薄くて硬い刃物ほど切れ味が良いわけですが、割れやすいという欠点があります。カッターナイフでカボチャは切れません。
また、いちばん硬いダイヤモンドで刃物を作れば最高の切れ味になるんじゃないかということになりそうですが、硬すぎると研いで刃先を薄くすることができません。刃先端Rが同じなら材質が硬くても柔らかくても切断能力は同じです。

今回は切れ味のことだけを考えてみましたが、良い包丁、悪い包丁、という場合にはもっといろいろな要素が関係します。
切れ味は要素のひとつにすぎません。



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(Last modified 17.05.2012)
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