大鋏、裏

30センチもある大きい裁ち鋏

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裏が包丁の裏押しみたいになってる。
理美容シザーは裏を研いでわざとこうするけど、裁ち鋏はやらない。使ってるうちに磨耗してこうなってる。

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裏を削る。

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こんなに磨耗してるのは珍しいので記念に。
でっかくて重いから磨耗しやすいのかなあ?
我慢しながら無理にこじって使わず、コマメに研ぎに出しましょう。裏は何度も削ると刃金が無くなるから。薄くなると刃線側からガーっと削って詰めるしかない。

手間と時間がかかって厄介だけど達成感があって面白い仕事。
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砥石で刃物研ぎに挑戦してみたけどちゃんと研げない。

師走の忙しい中如何お過ごしでしょうか。
選挙も終わったし人類も滅亡しなかったしクリスマスも終わるし、これから大掃除のついでにちょっと包丁でも研いでみるか。という人も多いのではないでしょうか。

ところが、砥石は持ってるし研ぎ方も勉強したけど、どうもちゃんと研げないという相談をしばしば受ける。


まずインターネットなどで基本的な研ぎ方の勉強はしてください。その上で「研げない」という人の問題点はおおまかに二つ。

ひとつはカエリがわからないこと。もうひとつは包丁の刃先が磨耗しすぎて荒砥石をつかわないとなかなかカエリが出ないこと。

カエリがわからない人の中には「刃先を触るのが怖い」と言う人がいる。
刃先が触れないかぎりちゃんとした刃付けはできない。刃線全体にカエリが出ているかは目で見ても絶対にわからない。指で触れて確認しなければいけない。
刃先を触ってもスライドさせない限り切れない。物凄い切れ味の日本剃刀を柔らかい指の腹に強く押し付けても切れない。刃線に直交する方向に軽く指を滑らせてもまず切れない。
安全な触り方を覚えて慣れるしかない。がんばって。

荒砥石。
中砥石で30回も研いでカエリが出ないようなのは荒砥石を使う方が早い。慣れた人なら時間がかかっても中砥石で我慢強く研ぎ上げることはできるけど、不慣れな人は、5分も10分も研いでてカエリが出ないと、自分のやってることが正しいのかどうかわからなくなってくる。また気が焦ると力んで手がぶれやすい。
預かった包丁で荒砥石が必要無いような状態の物は見たことが無い。
マメに研ぐ人は中砥石と仕上砥石でいいが、半年や一年に一度しか研がない人には荒砥石はマストアイテムなのだ。

ということで、みなさん荒砥石も見直してみては如何でしょう。
今西製砥のあらと君がオススメ。
シャプトンのモス(#220)も一般の人にはオススメできます。長時間使っていると結合材が軟化してしまうのでプロの研ぎ屋には使えませんが。


ついでに。
ためしてガッテン流でやってみたけど研げなかった。と言う人が予想通り多いけど、研げた人の話を聞かないだけかもしれないので、もし「ちゃんと研げた!」という人がいたらコメントで教えてください。
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洋包丁 柄の交換

預かった包丁の鋲が腐食してパカパカだった。

マトリックスアイダさんに相談すると、ベルトサンダーがあればできそうだったので交換に初挑戦。

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割ったところ。

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ハーフタングなので中子に合わせて内側を彫らなければいけないがドリルもトリマーもない。
穴あけはマトリックスアイダさんに加工をお願いする。彫りはノミと彫刻刀で手作業。

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下の曲面はブレードと合わせてから削るとブレードのアゴも削ってしまいそうなので先に削った。
フルタングだとブレードと一緒に削らないと面イチにならないけど、どうしたらいいんだろう。

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接着。

このあと厚みを削ってノミで曲面加工して耐水ペーパーかけて焼き色つけてワックスを塗る。

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完成。

楽しかった。

課題は多々あるけどまあまあかな。

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コストが掛かり過ぎるのが一番の難点。

マトリックスアイダさんでは事情を汲んでなるべく安くつく方法を考えてくれたけど、安い材料とドリルの穴あけだけでも1500円強。5000円ぐらいもらわないと採算合わないけど5000円の価値がある作業だとは思わないので、今回はあくまで趣味の作業です。


参考にハンドメイドのナイフだとどれぐらいの期間で出来るのか質問したら、作業が上手で早い人でも実働4~5日は必要とのこと。そりゃあ1万円や2万円では売れるわけがない。

一番手間が掛かるのは、やはりブレードの磨きだそうです。
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ハサミの刃角度

ハサミの刃角度はどれぐらいが適当か。


まず刃物全般について、刃角度が鋭いほど切れ味が良く、そのかわり強度は弱いので欠けやすくなったりする、といった一般則がある。

刃角度が鋭いほど切れ味がいい理由は刃体の斜面にかかる抵抗が小さくなるためだ。
切断する対象物の結合を解く力は刃先の厚みに反比例する。これについて刃角度は無関係だ。

分厚い出刃包丁で大根を真っ二つに切ろうとしてもなかなか切れず、無理をすると割れてしまうが、表面を浅く傷つけるだけなら出刃包丁でも牛刀でも大した違いは無い、という理屈。


しかしハサミというのは独特な刃物なのである。
対象物を切るだけでなく、二つの刃体で対象物をしっかり捕まえて、切れるように圧力を加えなければならない、という条件がある。
挟まれた対象物は刃体を縦横方向に開くベクトルで反発するので、刃体にはそれに負けない程度の剛性が必要だ。

また、刃角度が鋭すぎるとハサミには刃体同士が噛み合って閉じなくなってしまうという問題もある。

さらに、ハサミでは通常あまり分厚いものを切らない。
対象物に厚みがないということは斜面抵抗はほとんど関係ないということだ。
紙も布もビニールも髪も厚さ1ミリも無いようなシロモノなので、大根を切るときのような斜面抵抗はほぼ無い。


以上のような理由から、ハサミについては刃角度が鋭いほど良く切れるとは言えない。
刃角度に配慮したり切刃を蛤刃にした方が良いのは、樹木の枝を切る鋏ぐらいだ。

理美容シザーには蛤刃が多いが、ほとんど意味は無いはずだ。

私は理美容シザーの研ぎ機を持っているが、これには刃角度を35度から50度まで設定する機能がついている。しかし35度にしても50度にしてもほとんど切れ味の違いは感じない。
私はほとんどこの機械を使わないので自分が研いでいる刃角度が何度なのか厳密にはわからない。


人毛の太さは80ミクロン(0.08mm)前後だそうだ。
刃角度で抵抗が増えるのはたった80ミクロンの幅だけ、ということである。
刃角度が35度と50度で抵抗力が変わるとしても0.01グラムとかいう感知困難なレベルに違いない。

裏付けになるデータが無いか調べていたところ、
理美容鋏の切断特性と切れ味の定量的評価に関する研究
という論文が公表されていたのを思い出したので見直してみた。


刃角度と切断荷重のに関するデータもあり、次のように書かれていた。

「図から結論づけられるように刃角度と切断荷重との関係は上式のタンジェント曲線とよく一致する.」

図を見ると、刃角度35度と比較して45度ではおよそ30%、50度ではおよそ80%も荷重が大きい。

小さな荷重とはいえ、計測すればこういう結果になるのか。
これにはちょっと考えさせられてしまった。

たとえると、特売のモヤシがA店では10円、B店では13円、C店では18円、で売られているのと同じようなことなのだ。

一般家庭で使う分にはたくさん買ってもせいぜい3袋だ。
多くても30円と54円の違いにしかならない。
スーパーまで大排気量の車で買い物に行くのを自転車にすれば節約できるような金額だ。

しかし業務用に毎日100袋買うお店では1日で2400円、30日で7万2千円、365日だと87万6千円という差になる。

理容師や美容師やトリマーさんは毎日何万回も鋏を開閉するという。
腱鞘炎が職業病だと聞くから、そういう人にとってこれだけの荷重の差は馬鹿にならないだろう。


裁ち鋏を腱鞘炎になるほど開閉して使う縫製関係の職人さんは聞いたことが無い。
植木関係でもそう。
理美容師やトリマーという職業は、ハサミを使う職人さんの中でも特殊な部類のようだ。
5万円以上もするシザーが普通、というのも、強ち無意味では無いのかもしれない。

私は、試し切りはするけれど何千回何万回と髪を切ったときの疲労まではチェックできない。
また、角度を浅くすると耐久性が低下する可能性もある。そういったネガティブ要素についても検討すべきだが、実験データを見たことが無い。

私がハサミを研いでいる角度は、基本は元の鋏なりの角度で、そうでなければだいたい40度ぐらいで研いでいると思うけど、これでイイノダ!という自信は無い。

ハサミの刃角度についてご意見や情報があったらぜひご一報ください。
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ハサミの角度を鋭くしすぎると刃体同士が噛み合って閉じないという構造問題

図1
ハサミに掛かる力

図1は二枚の刃体で細い糸を切断する様子の模式図である。

青い矢印は指で鋏を閉じる力。

黄色い矢印は鋏を握る手の構造によって生じる力。
つまり、親指と人指し指をリングに入れて鋏を閉じるとき、親指は押し出す方向に、人差し指は握りこむ方向に力を入れることで生じる力である。
右手と左手では力の方向が逆になるので、一般的な右利き用の鋏を左手で使うとうまく力が伝わらず物を切りにくい。
理美容シザーなどで、スプリングワッシャなどによってこの方向に力を与えている物もある。

緑色の矢印は青と黄色が合成された力。

つまり鋏を閉じるときは緑の方向に力が加わっている。


図2
単純化1

単純化するとと鋏の二枚の刃体は図2のような状態で接している。

図3
単純化2

左右の三角形に図3のように緑色の矢印の力が加わると、右の三角形が上に、左の三角形が下にずれる。

図4
単純化3

一方、図4のように紫色の矢印の力が加わると、右の三角形が下に、左の三角形が上にずれる。


図5
角度2

これをハサミに置き直したのが図5.
力の加わる角度が緑の矢印なら二枚の刃体が噛み合ってしまうことはないけれど紫だと噛み合ってしまい閉じない危険があるということだ。


図6
角度1

刃角度が鈍角になるほど問題になりにくい。


これがハサミの刃角度はあまり鋭角にしてはいけない理由のひとつ。
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