美濃忠 上り羊羹

テレ東の「そうだ旅に行こう」という番組を見ていたら、プルプルで美味しそうな羊羹を紹介していたので、インターネットでお店を探して師匠へのお歳暮に送ってもらうことにした。

ホームページはあった。しかしネットショップは来年開始と書いてある。電話をかけると今はメール対応もしていないという。そこで注文書を作ってFAXで送信した。
翌日早速リコンファームの電話が掛ってきたので、安心してそのまま忘れてしまっていた。
それが二週間ほど前のことである。

師匠はお歳暮を贈るといつも直筆でお礼状を書いてくれる。ところが此のたびはそれが来なかった。そのことが少し引っ掛かっていたのだが、よく考えてみるとうちに届くはずの請求書も来ていない。
そこでお店に電話をかけてみると、
「発送した記録がありません。」
という。
今店に居る者は誰もわからないが、休みの者が二人いるので明日にはわかると思う、とのことだった。
ただまあ、お金を払ったのに物が届いていないというわけでもない。ゴチャゴチャ言っても仕方ない。
送っていなければあらためて送ってもらえばいいし、FAXが無いなら再送するので、ともかく急ぎで正確な事実確認をして連絡してほしい、と伝えた。

翌朝9時前に電話が掛ってきた。

「私が誤って入力をしていなかったせいで送っていませんでした。大変申し訳ありません。FAXはあります。急いで送ります。明日必着で発送できます。」

といったこと。

私も以前金融機関の法務部でけっこうシビアな顧客対応をしていたことがあるが、100点の対応だと思った。
問題発生時の対応は、
1.事実確認
2.対策の決定と実行
3.損害賠償、謝罪
これを可及的速やかに行うことである。
ミスをしたという本人が直接電話をかけて、問題の原因を隠さず説明し、対応方針を説明し、謝罪をする。さすが老舗のお菓子屋さんと感心し、安心もした。

するとその翌日、宅急便が届いた。
開けてみると羊羹が一棹入っていた。

私は羊羹を二棹、師匠に送ってもらうよう頼んだのだが、何故かうちに羊羹が一棹・・・

どゆこと?

最悪の事態が頭に浮かんだ。間違えて師匠に請求書が届いている、ということだ。
それはさすがにシャレにならない。マヂでヤヴァイ。ワニとシャンプーだ。ことによっては電話で怒鳴り散らしてくれようか。いやいや、怒鳴っても仕方ないので店から直接師匠に事情説明して謝罪してもらおうか。
あるいはもしかすると私が送ったFAXの内容が間違っていたか?控えはあったかなあ・・・

青くなりながらよく見ると、宅急便の袋には「請求書在中」と書かれた封筒も入っていた。
最悪の事態は回避されたようだ。
安心はしたが、しかし何をどう間違えたらこんなことになるのやら。
日持ちしないお菓子なので今から私がこれを直接届ければいいのだろうか。持って行く時間はあるにはあるが・・・

ドナイナットンネン?と憂鬱になりながら請求書の封筒を開けてみると、納品書、請求書兼払込取扱表、宅急便の送付伝票の控え、それから手書きの手紙が入っていた。


謹啓
平素は格別の御高配を賜わり厚く御礼申し上げます。
この度は、ご注文を頂きましたお日にちに届けする事が出来ず誠に申し訳ございませんでした。
私のミスで坂田様に大変ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
今後は二度とこのようなミスの無いよう細心の注意をはらう所存でございますので、何卒ご容赦賜わりますようお願い申し上げます。
今後とも変わらぬお引き立てを賜わります様お願い申し上げます。

尚弊社の御菓子を送らせて頂きました どうぞお納め下さいませ。
敬具 月 日 ○○


杞憂だった。

一度不安になってから安心すると好印象が強くなるの法則。
その個人的に受けた印象を差し引いて評価することはもはやできないが、期せずして送ってもらって自分でも頂くことができた上り羊羹は、テレビで見た印象と違うことの無い美味しいものだった。
名古屋の外郎(ういろう)のようにプルプルしているが弾力は強く無く、口の中ですぐにほどける。外郎がコンニャクだとしたら上り羊羹は絹越し豆腐のような食感である。
甘みも香りも上品で強すぎない。玉露のお茶請けにもよく合うと思う。残念ながらうちにそんなものは無いが。

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後日、師匠からもお礼状が届いた。殊のほか気に入って頂けたようだ。

機会があったら今度は和三盆のお汁粉を頂いてみようと思う。
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本焼包丁のハモン!

東京では日曜日の夕方6時半からテレビ朝日で「奇跡の地球物語」という番組を放送している。
分野にこだわらず様々な物事を科学的に解析してわかりやすく説明してくれるおもしろい番組で、毎週録画して見ている。
スポンサーはキャノンである。ちなみに私の持っているカメラはソニーだ。

ソニーは同じく日曜日の夕方6時から「THE世界遺産」という番組のスポンサーをしている。
こちらは番組内容が世界遺産縛りになっているため地域紹介的な内容が多い。私は歴史や観光にそれほど興味が無いので、面白いと思う回があまりない。

ソニーはデジタル一眼レフカメラではミノルタのカメラ部門を吸収して参入した新参メーカーである。機械本体の性能はなかなかキャノンやニコンに追いつかず、特に動物やスポーツのような動いている物を撮るプロには浸透していない。
しかしビデオカメラ部門は強い。そのせいで風景映像のような物が多くなる世界遺産にフォーカスしているのかもしれない。
一方キャノンは創業当初から一貫して光学機器を作り続けているメーカーだ。顕微鏡や医療機器などの分析機器も作っているので科学的な分析という内容に踏み込んでいるのかもしれない。

そういえばソニーも顕微鏡や医療機器に強いオリンパスの映像部門と合併して新会社を作ったのだから、そっち寄りの番組作りに寄ってくれないだろうか。


さて、昨日の「地球物語」では本焼包丁を特集していた。
出演していたのは大阪堺の池田刃物製作所の三代目、池田辰男さん。ホームページによると現在は三代目と四代目が槌を振るっているようだ。
鉄を火床で熱すると赤く発光しはじめるのだが、熱しすぎると炭素が抜けてグズグズになってしまう。逆に熱が足りないと焼きが入らず硬くならない。ちなみに番組では900度以上に熱してから水で急冷するとぐにゃっと曲がってしまう様子を放映していた。理由はわからないが。

焼き入れについては前に記事を書いたが、その中に、「だんだん膨らんでいくのではなくて、ある温度でいきなり原子の配列が変わって、ボンっとでっかくなる」と書いている。しかしこれは間違いかもしれない。
物を熱すると膨張するのは原子などの粒子の振動が大きくなり粒子同士の距離が少しづつ離れていくためだ。ちなみに絶対零度−273.15 ℃というのは全ての粒子の運動がストップする温度。
膨張の理屈から考えると、いきなり大きくなるのではなく、だんだん膨張していって原子間の距離が一定以上離れた結果として、原子の並び方がボンっと変わると考える方が自然な気がしてきた。そうではなく一定以上の振動に耐え切れなくなって物理的に大きくなる可能性もあるが、いきなり大きくなると書いた理由がわからない。いろんな本を参照しているのでもしかすると何かに書いてあったのかもしれない。
正確なことがわからないので訂正もしないでおくが、ご存知の方がいたら教えてください。

いずれにしてもある温度でいきなり鉄の原子配列が変わる。その結果できた隙間に、鉄の半分ぐらいの大きさしかない炭素がすべりこむ。
その状態から徐々に冷やすと鉄はだんだん縮んで行き、炭素も徐々に鉄の隙間から押し出されてゆくが、炭素を取り込んだまま急冷してギュっと縮めると、炭素が邪魔になって鉄の原子同士が動きづらくなるので硬くなる。これが、焼き入れで鉄が硬くなる仕組みだ。

原子配列が変わることを「変態」という。変なおじさんとは関係無い。セミが幼虫から脱皮して成虫になるのも変態という。状態が変わるという意味だ。

鉄の変態温度は炭素量によって違うが、およそ750度弱ぐらいである。
焼き入れ温度は800度が良いそうだ。なぜかというと、鍛造整形した材料を火床に入れて約2分で表面温度が800度になるが、そのとき内部温度がおよそ750度になり芯まで焼きが入るからだそうだ。
池田辰男氏は焼けた鉄の色を見て800度を正確に判別することができる。5度単位でわかるという。
赤い炎を上げる松炭の中から金床鋏で鋼を取り出して「いま800です。」と言った。放射温度計が示したのは799.9度だった。

柳刃の硬度を計測するとビッカース硬度で刃先が944、中ほどが477、峰側が407、それぞれHRC硬度に換算すると約68、47.5、41.4という結果だった。鋼材は言わなかったが白紙一号ではないだろうか。

「やればやるほど目が肥えてくる。10年前に見えなかったものが見えてくる。生涯勉強です。」

恐れ入りました。研ぎもやればやるだけ次が見えてどんどん難しくなっていきます。だから面白いということもありますが。

残念だったのは番組でしきりに波紋、波紋といっていたこと。わざわざ「波の形に浮かび上がる・・・」なんて解説していたが、土置きのときわざと波の形になるよう盛っている場面も映している。日本刀には直刃(すぐは)といって波の形じゃないまっすぐな刃文もある。ロロノア・ゾロの和道一文字も直刃だ。
熱処理によって刀に浮かび上がる、鉄をどのように鍛えてどのように焼き入れしたのかを示す痕跡が刃文である。
波紋はWAVEだ。立体的に見れば必ず振幅がある。言葉の由来が違うので音は同じでも全く別物のはずである。

ネットの記事なら誤入力もあるだろうし気にしないが、本焼き包丁の特集番組でこういう勘違いは頂けない。

ちなみに合わせ包丁の刃境のことを刃文というのも紛い物っぽい感じが払拭できず憚られる。あれは異種鋼を張り合わせた境目だ。
もちろん、言葉というのは時代によって変容してゆくものだし、変容すべきでもあると思うけれど、刃文という言葉には刀匠なり包丁鍛冶の技に対する敬意が含まれている気がするし、美術品としての刀の価値の表れでもあるのだ。時代だからといって十把一絡げにしてしまうのはそれらを失ってしまう文化の衰えのように思えて、ささやかながら抵抗を試みたくなるのである。
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