銃刀法および軽犯罪法、携帯の概念について

以前「刃物に関する法律」という記事を書いたが誤りがあったので訂正しておいた。

銃刀法や軽犯罪法では「携帯」の概念が定義されていないが、判例では

「自宅または居室以外の場所で刃物を直接手に持ち、あるいは身体に帯びる等し、これを直ちに使用し得るという支配状態で身辺に置くこと」

とされている。

私の誤認識は「直ちに使用し得るという支配状態」が無関係だろうと考えていたこと。

郵送のために梱包して小包に入れた牛刀を持ち運んでいた者を銃刀法違反(携帯)で逮捕起訴した事件について
『「直ちに使用し得る状態で」なかつたことは明らか』
として控訴棄却した判例がある。

条文だけでなく判例を見なければ法律の意味はわからないものだった。


蛇足かもしれないが誤解無いよう説明すると、これは、刃物を携帯するときは常に厳重に梱包しなければならないという意味では無い。

すぐに取り出せないほど厳重に梱包しているのであれば持ち歩いても携帯に該当しないという意味である。
正当な理由なく持ち運んでいる場合でも、厳重に梱包していれば携帯罪に該当しないのである。
正当な理由によって持ち運ぶのであれば携帯自体が違法では無い。
厳重に梱包していなくても正当な理由があれば持ち運んでも良い。

これまでの私の認識がキビシすぎたのであって、実際はもう少し柔軟であったのだ。

悪いこと考えてる人に悪用されると嫌なのでこれ以上あまり具体的なことを書くのはやめておくが、銃刀法に関して私自身も含めて世間一般の認識は過剰すぎるようだ。
都市生活において道具として刃物を使う機会が少なくなっていることも大いに影響していると思う。
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銃刀法違反 携帯の意義 に関する判例

 ネットで探しても見つからなかった判決文を「判例時報」から書き起こした。
誰かの役に立つかもしれないので公開しておく。
判決文だから著作権ないよね?


銃砲刀剣類等所持取締法二十二条にいわゆる刃物の「携帯」の意義
判例特報453号 80頁-
①逮捕監禁、銃砲刀剣類等所持取締法被告事件、福岡高裁昭四一(う)四一号、昭41・4・23刑二部判決、破棄自判、原審福岡地裁柳川支部
②傷害、銃砲刀剣類等所持取締法違反被告事件、福岡高裁昭四〇(う)七八八号、七八九号、昭41・5・6刑一部判決、破棄自判、原審福岡地裁直方支部


【主文】
 現判決中被告人関係部分を破棄する。
 被告人を懲役六月に処する。
 原審における未決拘留日数中三○日を右刑に算入する。
 銃砲刀剣類等所持取締法違反の点は無罪。
【理由】
 弁護人YTが陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。
 右控訴趣意第一点(事実誤認に)ついて《略》。
 同第二点(法令適用の誤)について。
 惟うに、昭和四〇年法律第四七号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法第二二条にいわゆる携帯とは、把持の形態の一態様であって、所持よりも狭義の概念に属し、手に持つか、身体に帯びるが如く、直接的に人の身体に結びついて直ちにこれを使用しうべき支配状態に置き、且つこの状態を持続する行為を指すものと解するを相当とする。
 これを本件についてみると《証拠略》によると、被告人は昭和三九年一○月二七日午前〇時頃柳川市隅町**番地**ラーメン屋ことYM方前での喧嘩斗争にあたり相手方を脅かすつもりで右YM方奥の炊事場にあった刺身包丁を持って同所から約六米ばかりの同家表で入り口付近まで来たところをTTに発見されこれを取り上げられたことが認められる。原判決は被告人が刺身包丁を手にしていたのは右YM方前路上と認定しているが、これを認めるに足る証拠はなく、この認定はけっきょく事実の誤認と同視すべきものであるけれども、この程度の事実の誤認は原判決に影響を及ぼすものでは無いから原判決破棄の理由とはならない。しかしながら、叙上認定のように、被告人は相当の時間右刺身包丁を手に持っておく意思があったとしても、現実にはこれを手にしていたのは瞬間的な極めて短時間で、しかもこれを手にしてから屋内を距離にしてわずかに六米ばかり移動したに過ぎないものであり、該包丁に対する支配状態が持続されたと認めるには充分では無いので、これを目にして同法条に規定する携帯に該当する物とは解しえないから、原判決が被告人に刺身包丁携帯の罪の成立を認定したのは法令の解釈適用を誤ったものというべく、この誤りは原判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決は破棄を免れない。
 そこで当裁判所は弁護人の控訴趣意第三点(量刑不当)に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第一項、第三八○条に則り原判決中被告人関係部分を破棄した上同法第四○○条但書に従い更に判決する。
 原判決の確定した被告人関係の第二の事実に法令の適用をすると、被告人の所為は刑法第二二○条第一項、第六○条に該当するので所定刑期範囲内において被告人を懲役六月に処し、同法第二一条により原審における未決拘留日数三○日を右刑に算入することとする。
 なお、被告人に対する控訴事実中、被告人が業務その他正当な理由がないのに昭和三九年一○月二七日午前○時頃柳川市隅町**番地**ラーメン屋ことYM方前路上において刃渡り約二三センチの刺身包丁一本を携帯した点については先に弁護人の控訴趣意第二点について説明したとおりであって、その証明十分でないから刑事訴訟法第三三六条に従い無罪の言渡をする。
 よって主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 岡林次郎 裁判官 山本茂 生田謙二)


【主文】
 被告人KKに対する原判決を破棄する。
 被告人KKを懲役五月に処する。
 被告人KLの控訴を棄却する。
【理由】
 検察官の被告人KKに関する控訴趣意は記録に編綴の検事栗本義親名義の控訴趣意書に記載のとおりであり、被告人らの控訴趣意は弁護人庄野孝利提出の控訴趣意書に記載のとおりであるから、各引用する。
 弁護人の控訴趣意第一点(事実誤認)について。
 《証拠略》を綜合すると、二通の原判決に判示してあるとおり、被告人両名は判示日時場所でTJから督促気味に警音器を鳴らしたり「何をぐずぐずしているか、早く車を出さんか」等と言われたため、その言動に激高し、暗黙の内にTJに暴行を加えるべき意を通じ、共に自動車から下車し、被告人KKにおいてTJに対し「貴様、車から下りて来い、誰に指図するとか、おれを誰と思うとか、福岡の人間と人間が違うぞ」等と怒号し、被告人両名とも素手で五、六回TJの顔や頭を殴り、被告人KKにおいてTJのネクタイを掴んで首を締め上げ、被告人KLにおいて傍に積んであった瓦を振り上げてTJに投付ける等の暴行を加えたため、これに憤慨したTJが自動車内から登山用ナイフを持ち出し飛びついてきた被告人KKの腹部を突いて傷害を与えたので、被告人KLは附近のバー「ムード」からビール瓶を持ち出しコンクリート製のゴミ箱でその底を割りTJを探して同人に投付け、更に附近のお好み焼き屋から刃渡り九、五糎位の果物ナイフを持ち出して同所バー「ムード」前附近路上でTJに立ち向かわんとし同バーの女給から制止されていたところ、被告人KKがこれを見て、「そのナイフを貸せ」と言ってこれを取り、逃げるTJを追って一四、五米同道路上を走って行き、乗車して正に現場を離れようとしていたTJの右肩部にこれを突き立てる等の暴行を加え、よってTJに治療一週間を要する長さ六糎深さ皮下に達する右上膞部切創及び背部打撲傷の傷害を与えた事実が認められる。被告人らの各供述調書や原審当審各公判廷における供述中右認定に反する部分は信用し難く他に右認定を覆すに足る資料は無い。
 (原判決は証拠の標目欄にTJの司法巡査に対する昭和三九年一二月一二日付同月二四日付各供述調書、YE、MTの司法巡査に対する各供述調書を掲げているが、これらの各調書は刑事訴訟法三二八条書面として取り調べられたものであることは昭和四○年五月七日の原審第二回公判調書によって明らかであり、これを犯罪事実認定の証拠とすることはできない。
しかしこれらの調書を除外しても前掲各証拠によって前記のとおり原判示事実を認定することができるので、原審の採証法則の誤は判決に影響を及ぼさない)
 かように被告人らがTJに対して殴ったり首を絞めたり瓦を投付けたりしたためTJが憤激してナイフを持ち出して被告人KKを突刺し両者間に一連の喧嘩斗争が続けられたのであるから、TJの攻撃をもって刑法三六条にいうところの急迫不正の侵害ということはできず、被告人らの行為に同法条を適用する余地はなく、従って過剰防衛行為となるに由がない。前記事実認定と異なる事実を前提とする弁護人の所論は採用できない。
 被告人KKに対する検察の控訴趣意について。
 本件控訴事実中「被告人KKが昭和三九年一二月一○日午後一一時ごろ、直方市西北浦町飲食店「加代」ことOM方前道路附近で刃渡り九、五糎位の果物ナイフを不法に携帯したものである」との銃砲刀剣類等所持取締法違反の点について、原審が同被告において右日時場所で同果物ナイフを手にしていたこと、これをもって判示傷害行為に及んだこと、同果物ナイフは被告人両名がTJと喧嘩闘争中に被告人KLにおいて附近のお好み焼き屋から勝手に持ち出し斗争用具として被告人KKに渡したものでその交付受領とも業務その他正当な事由によるものでないことを証拠によって認定しながら、同被告において右ナイフを手にした時間も距離もごく僅かであり右傷害罪の犯行途中犯行現場において傷害の用具として握持したに過ぎない。銃砲刀剣類等所持取締法二二条に携帯とは相当の時間または距離を正当な理由なく持ち歩くことをいうものと解されるから、同被告人の右のような握持は同条にいう携帯にはあたらないとして無罪の言渡しをしたこと記録に明らかである。考えるのに、銃砲刀剣類等所持取締法二二条は、同法条所定の刃物を日常生活を営む自宅ないし居室において所持することは通常の場合危険性を伴わないからこれを許すべきであるが、これらの刃物を業務その他正当な理由によるのではなく自宅ないし居室以外の場所に持ち歩くときは容易に多衆の面前等でこれを用い易く危険を伴い社会の平和秩序を害する虞があるからこれが携帯を禁止したものと解すべきである。従って同法上に携帯とは自宅または居室以外の場所で刃物を手に持ちあるいは身体に帯びる等これを直ちに使用しうる状態で身辺に置くことをいい且つその状態が多少持続することを意味するものというべきである。たとえば喧嘩斗争の際たまたま手に触れた刃物を取り上げその場で直ちに相手方に投付けそのままこれを顧みないような場合はたとえその刃物が右法条所定に該当しその場所が自宅または居室以外の場所であっても携帯ということはできないであろうけれども、自宅または居室以外の場所で右刃物を手に持ち身体に帯びる状態が多少の距離または時間にわたる以上これを携帯というに妨げ無いと解すべきである。
 これを本件について見るのに、前記認定のとおり被告人KKは被告人KLから刃渡り九、五糎位の果物ナイフを取りこれを手にして道路上を一四、五米くらい走って行き原判示傷害行為に使用するまでの間これを手にしていたものであるから同法条に該当するというべきである。
 これと見解を異にして右控訴事実を無罪とした原判決は法令の適用を誤った違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決は破棄を免れず、論旨は理由がある。
 同被告人の傷害の所為が有罪であることは前記のとおりであり、傷害と銃砲刀剣類等所持取締法違反とは一個の裁判をもって裁判すべきであるから弁護人の傷害の罪に関する量刑不当の論旨について判断するまでもなく原判決の傷害の部分も破棄を免れない。
 次に被告人KLの控訴趣意中量刑不当の主張について。
 しかし、本件記録および原裁判所において取り調べた証拠に現れている同被告人の年齢、経歴、境遇、前科および犯罪の情状ならびに犯罪後の状況等にかんがみるときは、なお所論の同被告人に利益な事情を十分に参酌しても、原判決の同被告人に対する系の量定はまことに相当であって、これを不当とする事由を発見することができないので、論旨は理由がない。
 そこで同被告人に対しては刑事訴訟法三九六条に則り本件控訴を棄却する外はない。
 被告人KKに対しては刑事訴訟法三九七条一項、三八○条に則り同被告人に対する原判決を破棄し、同法四○○条但書を適用して更に自ら判決することとする。
 (罪となるべき事実)
 一、傷害の所為原判決判示事実と同一であるからこれを引用する(ただし終から三行目二二週間とあるを一週間と改める)
 二、被告人KKは昭和三九年一二月一一日午後一一時頃直方市西北浦町バー「ムード」前附近道路を一四、五米刃渡九、五糎の果物ナイフを業務その他正当の理由なくして持ち歩き携帯したものである。

(証拠の標目)《略》

(法令の適用)
 同被告人の判示所意中傷害の点は刑法二○四条罰金等臨時措置法三条に、果物ナイフの携帯の点は銃砲刀剣類等所持取締法附則五項、銃砲刀剣類等所持取締法二二条三二条一項二号に各該当するので所定刑中各懲役刑を選択し、原判決の前科があるので刑法五六条五七条に則りそれぞれ累犯の加重をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文但書一○条一四条に従って重い傷害の罪の計に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人を懲役五月に処し、原審における訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書に則り被告人に負担させないこととする。
 よって主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 塚本富士夫 裁判官 安東 勝 裁判官 矢頭直哉)



ついでにもうひとつ。
こちらは裁判所ホームページで確認できるので抜粋。

③ 携帯の意義

昭和49(う)338 銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
昭和49年12月03日 大阪高等裁判所


検察官の論旨は、
 原判決は、銃砲刀剣類所持等取締法(以下、「銃刀法」と略称)二二条にいう「携帯」の意義を、

 自宅または居室以外の場所で刃物を直接手に持ち、あるいは身体に帯びる等し、これを直ちに使用し得るという支配状態て身辺に置くことを意味する

 としながら、
 被告人の本件行為を評価するに当り、

 直ちに使用し得る支配状態で身辺に置く意思のある把持とは認められず、本件行為は同条に規定する携帯に該当するものとは解し得ない

 としたが、

 同条の携帯罪の成立には、
 原判決のいうような直ちに使用し得る支配状態で身辺に置く「意思」という主観的要件は不要であり、
 また携帯罪の要件として、刃物を直ちに使用し得る支配状態で身辺に置くことは必要でなく、
 かりにこれを要件としても、本件はこれに該当しないとした原判決の同法条の解釈適用には誤りがあり、

 また、原判決は、

 被告人の本件行為には正当な理由があつた旨認定しているけれども、
 これは本件犯行の動機・目的・方法・態様など正当な理由の有無の判断の前提となる事実を誤認し、
 ひいては法令の適用を誤つたものである

というにある。
原判決が確定した被告人の本件行為は、これを要約すると、

 被告人はAから送付を依頼されて預つていた図書の一部および本件牛刀二本を
 同人のレバノンの滞在先宛に航空書留小包郵便で郵送するために、
 本件牛刀二本を蓋のある紙箱の方に刃先を交差させる恰好で重ね入れて箱蓋をし、
 その上を新聞紙か包装紙のような物でくるみ、その上から三冊のパンフレツトで巻いて包み、
 新聞紙の切り抜き、封筒に入れた手紙、現金五、〇〇〇円をそのハソフレツトの間に差し挾んで、
 使用ずみの包装紙でもつて長方形に包装し、
 その包装の縦と横をしで紐でふた巻きか、み巻き十文字に紐かけをして荷造りし、
 右小包(縦約三〇糎、横約一五糎、高さ約一〇糎)を持つて
 京都市a区b町c番地のdB方からC市電、D電車を利用して大阪市e区f町g番地のhE郵便局外国郵便窓口に至つた

というのである。
そこで、所論にかんがみ検討するのに、原判決は、

 銃刀法二二条の携帯の意義を示した後、
 被告人がその間借先であるB方からE郵便局外国郵便窓口まで本件牛刀二本を中身とした小包を把持した行為を評価するに当り、

「……これを目して自己の直接手に持ち、あるいは身体に帯びる等し、直ちに使用し得る支配状態で身辺に置く意思のある把持とは認められず、したがつて同法条に規定する携帯に該当するものとは解し得ない」

と判示していることは検察官所論のとおりであるが、
原判決は、
まず同法二二条が携帯を禁止処罰する理由を述べ、
ついで

「同法条にいう『携帯』とは、把持の形態の一態様であるけれども、
所持よりも狭義の概念に属するものであつて、
自宅または居室以外の場所で刃物を直接手に持ち、あるいは身体に帯びる等し、これを直ちに使用し得るという支配状態で身辺に置くことを意味するものと考えるべきもので、
刃物の用法にしたがつて使用することを目的としない把持の形態でおこなわれる場所的移動の全てまでを意味するものではないと解する」

と判示していることから見て、

原判決を全体として考察する限り、

検察官のいうように、原判決が携帯罪の成立要件として、直ちに使用し得る支配状態で身辺に置く「意思」という主観的要件を必要としたものと解するのは

相当でない。

つぎに、

原判決が示した銃刀法二二条の「携帯」の意義の当否について考えるのに、
原判決が同法条の立法趣旨と解するところ、すなわち、
「刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を日常生活を営む自宅ないし居室において手にすることは、通常の場合、危険を伴なわないからこれを許すべきであるが、これらの刃物を業務その他正当の理由によるものでなく、自宅ないし居室以外の場所で持ち歩くときには、容易に多衆の面前等でこれを用い易く、その用い易さが危険を伴なつて社会の平和的秩序を害する虞れがあるから、これが携帯を禁止したものと解される」
とすることは、検察官もこれを認めるところであり、当裁判所もこれを相当と考えるのであつて、

この同法条の立法趣旨、および「携帯」は、

物を事実上支配していると認められる状態である「所持」よりはるかに狭い意味であること、
さらに
同法が「携帯」と「運搬」を明確に区別していること等を総合して考察する場合、
同法条にいう携帯とは、原判決もいうように、
同法条所定の刃物を自宅または居室以外の場所で直接手に持ち、または身体に帯びるなど、直ちにこれを使用し得る状態で身辺に置くことを意味するもの
と解するのが相当である。
検察官は、
携帯とは、刃物を自宅ないし居室以外の場所で身辺に置く事実があれば足り、「直ちに使用し得る状態で」という文言は、せいぜい「身辺に置く」という文言を強調するためのものであるというけれども、
携帯のみを禁止処罰している立法趣旨、さらには刃物と認識して行なう運搬が処罰の対象となつていないこと等から考えると、
「直ちに使用し得る状態で」ということは、携帯罪成立の要件というべきである。
原判決の同法条の解釈に誤りはない。
つぎに、検察官は、

原判決のように「直ちに使用し得る支配状態で」身辺に置くことを携帯の要件としても、
即時的に使用し得る状態での把持だけでなく、
社会通念上遅滞なく使用し得る程度の状態で身辺に置くことをもつて足ると解すべきであり、
本件小包中から牛刀を取り出すことはきわめて短時間になし得るところであつた

と主張するけれども、
いうまでもなく「直ちに使用し得る状態で」とは、
身辺に置くことの客観的状態をいうものであり、
本件被告人の把持が前示のようなものある以上、「直ちに使用し得る状態で」なかつたことは明らかであつて、
検察官の所論は、つまるところ、
携帯の意義・要件について、原判決ならびに当裁判所のそれとは異なつた法解釈を主張するものと解するほかないが、
これは採用できるところでない。
その他、検察官の所論にかんがみ検討しても、原判決の銃刀法二二条の解釈適用には誤りはない。
 控訴趣意中、
原判決が正当な理由の有無の判断の前提となる事実を誤認し、ひいて法令の適用を誤つた
との点については、
原判決は、
被告人の本件牛刀の把持が携帯に当らないとした上、
さらに進んで、
被告人の本件把持には正当な理由があつた旨
を認定しているのであるが、
被告人の行為が銃刀法二二条の携帯に当らないものである以上、正当な理由の有無について判断する要を見ない筋合いてあるから、
当裁判所は、右の控訴趣意に対してとくに判断する必要を認めないので、これを行なわない。
 以上のように、被告人の本件行為が携帯に当らないとした原判決の銃刀法二二条の解釈適用に誤りはなく、本件控訴はその理由がないことに帰するから、刑事訴訟法三九六条により主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 今中五逸 裁判官 児島武雄 裁判官 野間禮二)

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頭落とし(解体用包丁)の謎

「頭落とし」という包丁は独特な形状である。

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牛や豚などを解体するときに使う包丁で、職人の道具なのでこのような形には相応の理由があるに違いないが、その理由がわからない。

調べていると正親製作所というメーカーがこの種の包丁を専門に造っていることがわかった。品川駅の南口の食肉中央卸売市場の中に店舗がある、職人用の質実剛健な刃物を作っている由緒正しいメーカーだ。

「頭落とし」と書いたが、この会社のホームページによると同様の包丁が「肩切りナイフ」「腸割きナイフ」「頭落としナイフ」「内臓処理ナイフ」「皮剥きナイフ」と分かれていた。写真が掲載されていないものに「筋スキ」「骨スキ」「細切り」といった物もあるようだ。骨スキとガラスキは他のメーカーにもあるが、筋スキや細切りという名前は聞いたことが無いので見てみたい。

共通の特徴は、

1.柄とブレードの幅が同じでアゴが出ていない。
2.柄が比較的太くてしっかりしている。
3.切っ先が峰側に向かって反っている。

といったこと。

家畜を解体する包丁なのに、魚を解体する包丁である出刃包丁より小さいのである。
マグロは家畜並みの大きさだがマグロ包丁は日本刀のように巨大である。
なぜ四足動物を解体する包丁がこのようなユニークな形になってしまったのだろうか。

使っているところを見ればわかりそうだ。

中央卸売市場に見学させてもらえるか問い合わせてみた。しかし残念ながら築地市場のようには解体現場を見せてもらえないとのことだった。屠殺や解体シーンを見せるとシーシェパードみたいにインネンをつける団体や個人がいるのだろうか。

YouTubeでこの種の包丁を使って食肉を解体している動画が無いか調べてみた。
しかし同じく、残念ながら見つけることはできなかった。


ただ、この包丁自体を使っている動画は見付けられなかったのだが、北海道で鹿のハンティングをしているJPSikahunterさんの動画がとても役に立った。射撃や解体シーンがあるのでリンクは控えるが関心のある人は検索してみてほしい。


その動画では欧米メーカーのハンティングナイフが使われていた。
西洋のナイフはもともと解体用包丁と似た形をしている。すなわち、柄とブレードの幅が同じでアゴが出ていない物が多い。また切っ先も峰側に向かって反っている物が多い。
しかし動画で解体に使われていた物には普通の西洋ナイフに無い共通の特徴があった。
それは手をガードするヒルトとかフィンガーガードといわれる出っ張り部分が、無いかあまり突き出ていない物ばかりだったことだ。解体用包丁に似たフォルムなのだ。

ではなぜ突起物が無いのか。
それは、動物の解体では狭いところに腕を突っ込むからである。
骨と骨の間の狭い空間の奥にある関節や筋を切り離すので、出っ張りがあると引っ掛かって邪魔なのだ。

先に挙げた解体包丁の三つの特徴に照らして考えてみると、

1.柄とブレードの幅が同じでアゴが出ていない。
これがまさに邪魔な突起が無いという特徴そのものである。出刃包丁ではいかにも大きすぎて邪魔になりそうだ。

2.柄が比較的太くてしっかりしている。
リンゴの皮を剥くのとはわけが違うので確りホールドするために柄も太いのだろう。

3.切っ先が峰側に向かって反っている。
切っ先や反りの部分を押し付けて切る動作が主になるからだと想像できる。
魚用でもカツオ包丁やナギナタ包丁は切っ先が峰側に向けて反っているが、押して切る使い方をする。

こういうことだろう。なるほど。ようやくすっきりした。


しかしもう一点だけ疑問が残った。
なぜ魚用の包丁とは違うのか。マグロは豚と同じような大きさだ。

そこであらためてマグロやクジラの解体動画を見てみた。
すると、海の生き物の解体では骨の間に手を突っ込むような作業をしていなかった。

なぜだろう?

わかった。
海の生き物は構造が単純なのだ。
頭から尻尾まで一本の背骨が通っていて、その周囲にたっぷり肉がついているという単純な構造なのである。
だから外側から大きな包丁を入れてほとんどの解体作業を済ませられる。

四足動物は腕や足の筋肉、背中や胸や腹の筋肉、お尻の筋肉など、小さな筋肉があちこちにたくさんついている。骨格も筋肉も海の生き物と比べてずっと複雑なのだ。だから肩回りや骨盤回りの関節を切り離すのに小ぶりな包丁を突っ込んで作業をしなければならない。

これまでアゴの出ていない西洋のナイフは研ぐことに対してあまり頓着しない民族が作った、ともすれば大雑把な作りの刃物だとおろそかに考えていたが、用途に適した形になっているのだと考えを改めさせられた。
己が不見識を恥じなければいけない。
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柄埋め

「頭落とし」が再びやって来た。

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今度は合羽橋鍔屋の製品。柄もかなりダメージが大きかったので埋めて修理した。

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昔、充填剤にエポキシ系接着剤の「スーパークリア5」を使うと書いた覚えがあるが、今は30分硬化型や60分硬化型を使う方が多い。
特にこういう派手に開いてしまっているものはしっかり奥まで充填剤が入ってくれないといけない。
粘度が高いので5分硬化型だと奥まで入る前に硬化しはじめてしまうのだ。

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表、裏、上、下それぞれ2回づつぐらい盛り足す。
最後に盛ってから24時間以上置いて充分に硬化させてから、グラインダーとリューターで余分なところを削る。

今回は木材自体も乾燥して劣化していたので木固めエースで補強した。
木固めエースは非常に優秀。ホームセンターなどで売られている木材表面コーティング用のワックスとは仕上がりがぜんぜん違う。

それぞれの作業ごとに乾燥させないといけないので3~4日かかる。
研ぐよりはるかに手間がかかるので忙しいときはできません。

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特に技術は必要ないので誰でもできる。グラインダーがなくても凸部の処理はヤスリや耐水ペーパーで可能。
コツは、
・焦らず数回に分けて作業すること
・一回一回しっかり硬化させること
・二液を混合するときなるべく気泡を入れないことと

ぐらいかな。


それにしても謎な形である。

謎の原因究明は次回に続く。
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