柄の修理@牛刀

少し隙間が開いている程度ならエポキシ接着剤を流し込んで水が染み込まないようにして様子見してもらうのだが、前の部分の鋲が取れてしまっていたので、修理。

・ディスクサンダーで金属部分と木材部分を分離。

腐食が進んで柄が折れてしまっていると面倒なことになるが・・・

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包丁の柄が膨らんでるものはだいたいこんな感じになっている。
柄に隙間ができてるなと思ったらナル早で防水処理すべきだ。ステンレスでもたまにこんなになってるのがある。

中心部分がゴソっと取れてしまったが、外側はしっかりしていたので幸い溶接せずに済んだ。

次の作業。

・砥石の小割れで磨いて剥離しやすい部分を除去
・金属が膨張している部分の木材側を削る。
・エポキシ接着剤で片面を接着。半日以上安置。

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ピンク色は金属が膨張している部分。
柄材と合わせるために金属側を削ると強度が落ちてしまうので木材側を彫刻刀で削ったのだが、そのとき、干渉する部分を確認するため絵の具を塗りながら作業をしたのでその痕跡。色がピンクなのはあーりん押しなわけではなくたまたま。

あとの作業写真が無いが、

・片側が接着できたらボール盤で鋲の穴を開ける。
・今回は凹凸が大きくエポキシ接着剤で隙間を埋めきるのは困難だったためエポキシパテを利用し、隙間を埋めつつもう片方の柄を接着。半日以上安置。
なお、エポキシパテにも接着力があるがエポキシ接着剤よりは弱いとのこと(セメダイン談)。
パテは硬化速度が非常に速いので手早い作業が必要。
接着剤のような流動性は無いので流し込むような作業には使えない。目的に応じて使い分ければいいと思う。
・両面接着後、あらためてボール盤で鋲の穴を貫通。
・ベルトサンダーでおおまかに柄を削る。特に厚みを決める。
・鋲止め。
・ベルトサンダーで鋲止めした面を削って平らにする。
・ベルトサンダー、リューター、ヤスリでさらに整形。
・細かい隙間にエポキシ接着剤を流し込んで半日以上安置。
・最終整形して耐水ペーパーで研磨。
・木固めエースで仕上げ。24時間以上安置。
・研ぎ、刃付け。
・布などで最終磨き。

乾燥で4段階あるのでそれだけでも四日以上。
研ぎの仕事と並行してできないので一週間以上はかかると考えてもらいたい。
この柄の交換で3000円(研ぎ代別)。たぶん時給にするとコンビニのバイトより安いが作業は楽しく練習にもなるのでご希望の方はどうぞ。但し忙しい時期はお断りするか1ヶ月以上かかるかもしれない。
また溶接が必要なものは外注するので別途実費請求する。いくらかわからない。溶接が必要かどうかは割ってみないとわからないので後日請求になる。



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ハンドメイドナイフを作ってみたくなってきた。


ヒルト部分の腐蝕が表に達していたのでこんな感じに。
パテで正解だった。

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こちらがもとの状態。

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参考までに和包丁の柄の交換。
こちらは1080円(研ぎ代別)、ちゃんと利益も出るのでどしどしお持ち下さい。

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エポキシパテの耐熱性はどうだろう。
と思って熱湯に数分漬け置きしてみたが、少なくとも柔かくなることはなかった。
たぶんこれなら接着力も落ちないと思う。

しかしエポキシ接着剤は熱湯をかけるとボロボロと崩れるので引き続き熱湯厳禁だ。ろう埋めも同じ。

食洗機は熱湯洗浄するのでダメ。
暑い環境ほど腐食は進みやすい。食洗機は細部まで洗浄できるように霧状の熱湯を多方向から吹き付けるので、水道でジャブジャブ洗うより柄のちょっとした隙間にも水分が浸透しやすい。
エポキシ接着剤だけでなく錆にとっても食洗機は大敵なので、たとえ食洗機対応と書いてあっても、包丁だけは手洗いをお勧めする。
包丁の刃に使われているステンレスは同じステンレスでもスプーンやフォークに使われているステンレスよりずっと錆びやすいのだ。
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風格

京都有次の菜切り包丁。
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分厚い。
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出来の良い菜切り包丁というと、叩き伸ばしてあって刃元から先になるにつれて薄くなっていて、身幅は広く、刃先はとても鋭利、葉野菜を鋭く切る包丁というイメージ。
しかしこれはどっしり感がある。
中華包丁のペティナイフ、という感じ。

大変良い刃がつく。
葉野菜も根菜も、何ならカボチャも任せなさい、という感じ。

こういうのは初めて見た。
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改造中 経過

刃物の写真撮影は難しい。
これは反対に言うと写真撮影でかなり誤魔化せるという意味でもある。鏡面なんて全く信用できない。映り込んだものに焦点を合わせると表面の微細な傷なんかぼやけて見えなくなってしまうからだ。

さて、改造中の佐治武士。

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この写真ぐらいの印象なら良しとしたいところだが、、、




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これが現実である。トホホホ(;´д`)

ピカピカに磨いてから粗めの砥石の欠片で霞ませようとしたのだが、2000番では対して霞まず小傷が目立つばかりなので、800まで落としてみたのがこの状態だ。曇り具合はこれぐらいでいいのだがムラが激しく小傷も目立つ。
やはり腐蝕作用で霞ませないとだめかなぁ。
ステンレスなのでたぶん内曇砥石では霞まないと思う。ステンレス用のエッチング液を薄めるか何かしてみようかな。


なお、切れ味はムチャクチャいい。
VG10だと思うが確認の術がないこの鋼材、VG10だとしたら蒙を啓かれた思いである。
ダマスカスでさえなければこんなに懊悩させられることもなかろうにw
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改造中

だいぶ昔に買った佐治武士のダマスカスナイフ。
おそらくVG10。

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どこで買ったのかも覚えていない。
もう20年ぐらい昔かもしれない。

刃物研ぎに凝るずっと前で、使うこともないので研いでもいなかった。
元はがっつり小刃がついていてそれほど切れ味は鋭くない。

木の鞘に入れてほったらかしていたらうっすらと錆が浮いていたので、鏡面に磨き上げてみたらダマスカス模様がまったく見えなくなってしまった。内曇砥石を使えば霞まないかと思ったがうまくいかなかった。ステンレスだからかもしれない。エッチングもうまいかず、ショットブラストでもやるしかないが、そこまで装備を揃える気にもなれない。
だいたい、使って研ぐたびにショットブラストで処理するなんて全く実用性を無視した話である。
私がダマスカス嫌いになった原因のナイフである。

YouTubeに鹿狩りの動画をたくさんアップロードしているJP SikaHunterさんが、鹿の解体に使っているナイフについてもいろいろ説明していて、2月の記事に書いた「頭落とし」の形状の理解にずいぶん役立ったのだが、その動画に触発されて上の佐治武士和式ナイフを片刃仕様にしてみることにした。

裏面を平に。
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裏スキはさすがに入れない。
完全平面でもなく少し膨らんでいるが鎬は無くした。

アトマエコノミーの荒目でゴリゴリ削っているのだが、この段階で切れ味がおそろしく良くなる予感。
VG10は藤次郎のコバルトなどはよく研ぐことがあるが、それらと違って粘りのある良い感じのカエリが出る。

さあどうなるか。
ぼちぼち仕上ます。
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マイクロスコープで金属組織は観察できるか? (3)

撮影した画像と加工した試料を送り返して頂いた。

試料は黄色い円筒状の樹脂の上部に埋め込んで平面に研磨されている。
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被写界深度がとても浅いので平面研磨は非常に重要だ。
ちなみに被写界深度とは焦点が合う遠近の範囲のことである。
たとえば野球番組でマウンドのピッチャーを映すと、背景にある外野席はぼやけて見える。二塁にいる選手ぐらいはあまりぼやけていないかもしれない。この場合前後20メートルほどが焦点が合ってきれいに見える範囲で、これを被写界深度という。一眼レフカメラではレンズに光を通す「絞り」を広く解放すると被写界深度は浅くなり、背景がボケて映したい対象が浮き立つ。逆に絞りを狭く絞ると被写界深度が深くなり、背景もはっきり見える。
以前掲載したカワハギ針の針先の写真から想像すると、PEAKマイクロスコープの200倍で被写界深度は10~50ミクロン(0.01~0.05mm)程度ではないだろうか。
つまり深さ0.1ミリ(=100ミクロン)もある傷だと、その傷の凹んだ奥と出っ張った部分のどちらかがボケてしまってきれいに写らないということだ。
傷のように鋭くなくても平面がデコボコしてると観察位置を変えるごとに焦点を調整しなおさなければいけない。


裏からみたところ。試料を取り違えないようナンバリングして頂いてる。
1が白紙二号鍛造、2が貝印、3がGALAXY777
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腐蝕処理された表面はムラなくグレーに塗ったように見える。
三つの色は微妙に異なる。当たり前だが金属組織など見えない。
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この試料をPEAKマイクロスコープで覗いて撮影してみた。
ちなみに接眼レンズにコンデジのレンズを近づけるという力技で撮影しているのであまりきれいに写らない。肉眼ではもう少しきれいに見える印象。

試料1 ふつう
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試料1 拡大
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試料2 ふつう
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試料2 拡大
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試料3 ふつう
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試料3 拡大
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接眼レンズを覗くと「ふつう」のような大きさで見える。細かい組織の形状はほとんどわからないが、三つを比較すると荒さの違いはわかる。
コンデジで撮影して拡大したのが「拡大」で、モニターで見ると組織らしきものが見えるようになる。


次にプロに撮影してもらった画像。

試料1 
100倍 俯瞰
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500倍 拡大
1_×500_600×600

試料2
100倍 俯瞰
2x100.jpg
500倍 拡大
2_×500_600×600


試料3
100倍 俯瞰
3x100.jpg
500倍 拡大
3_×500_600×600


うーん、やはりぜんぜん違う(笑)


500倍を並べてみる。
中央_500_3種並べ

2の貝印は10ミクロン以上の粒子が点在している。球状化処理してるというのはこれかな?
1が堺石籐貞宗の白紙二号。これがいちばん細かい。
3のGALAXY777は細長い粒子の集合。ひとつひとつが比較的大きい。


別件、熱を加えた部分の観察。

試料1 白紙二号 テンパーカラーで青っぽくなってるけど組織のはっきりした違いは感じられない。
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試料2 貝印 上部に粗大な粒子が多いように見える。偶然撮影部分に多かった可能性もあるけど、中心部の画像と比較しても多いような印象。
2burn500.jpg

試料3 GALAXY777 組織に何らかの変化があるのかわからないが、上部の組織の方が境界がくっきり見える。テンパーカラーがついてるだけかもしれない。
3burn500.jpg


影響ははっきりわからないけど、もし組織が熱変しているとしても100~200ミクロンぐらいの深さじゃないかと思う。0.1~0.2ミリぐらい。これぐらいなら荒砥石でひと皮剥けば剥離できそう。


マイクロスコープでも何とか組織っぽい物は見えなくもないけど、裸眼での識別は困難で、高画素高解像度のデジカメで写してモニターで見ないとだめ。だけどレンズが大きい一眼レフでは写せない。接眼レンズと同じぐらいの小径レンズじゃないとだめ。何かアタッチメントを自作すればいいかもしれない。
しかし頑張ってもプロの撮影した画像にはまったく及ばない。

そんな結論でした。
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マイクロスコープで金属組織は観察できるか? (2)

さて、金属組織観察のプロとお知り合いになることができたので、さっそく表面処理の方法や具体的な観察の方法について質問してみた。
だが、やはりプロフェッショナルなので一般には入手が簡単ではなさそうな薬品を使っていたりするし、文章だけではどれぐらいの精度で表面研磨しているのかなどわかりにくいことも多い。

けっきょく「200倍のマイクロスコープがあるからといって簡単に観察できるものではない。」という結論に私の中ではなっていった。
自分としてはそれで一段落していたのだが、プロフェッショナルから、実際に試料を送ってもらえば撮影してみせてあげますよという願っても無いご提案を頂いた。
そこでありがたくお願いすることにして、ついでに撮影用に作った試料も送ってもらえるようお願いした。

これで晴れて「正解」の試料を入手できることになったわけである。

ちなみに試料というのは要するに観察する金属片である。
ZDPだとか青紙スーパーだとか、同じ鋼材で鍛造したものと型抜きしただけのものの違いだとか、いろいろ観察してみたい希望はあるが、なにしろ切断しなければならないので良い物ほど勿体無くて渡せない。

いろいろ考えた結果、手元にある切断して良い包丁の中から送った試料は次の三点。

1 堺石籐 貞宗 薄刃 六寸 白紙二号 鍛造
2 貝印2000ST(推定) 三徳 WR-2(推定/詳細不明) 型抜き削り出し
3 ダイソーGALAXY777 三徳 不明 型抜き削り出し

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テーマは、

それぞれの組織の違いを観察する。

試料の上辺を乾式グラインダーで火花を散らしながらカットして、熱を加えていない部分と比較して組織が変化しているのか観察する。

ちなみに一番楽しみなのは処理して送ってもらう試料である。


つづく
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マイクロスコープで金属組織は観察できるか?

PEAKのマイクロスコープを持っている。

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最大300倍に見えるレンズまであるのだが、私が持っているのは100倍用と200倍用のレンズだ。
200倍でも10ミクロン(1/100ミリ)単位ぐらいならよく見える。
仕事ではせいぜい20倍ぐらいで見えれば充分なので、これは趣味にしか使わない。

ところで、インターネットにアップされている金属組織の写真を見ると100倍とか200倍とか書いてあるものをたまに見る。
ということは、もしかすると200倍のマイクロスコープでも金属組織が見えるんじゃなかろうか?と、かねてから睨んでいたのである。

しかし実際には単純にスコープを覗いても金属組織らしきものは見えない。
これは必ずしも倍率が問題なわけではない。

金属の表面をきれいに洗って磨くと鏡のようになり、顕微鏡で覗いても全体が同じように見えるだけなのだ。
そこで組織を観察するためには表面を軽く酸化腐蝕させてやる必要がある。
組織の部分部分で腐蝕反応のしやすさが異なり濃度差が出る。それが組織の状態として見える物なのだ。

たとえば霞包丁は地鉄と刃鉄の硬度差で、研いだときの傷つき具合が違うために、柔かい地鉄側がより多めに曇って見えるわけだが、刃鉄も地鉄も鏡面になるまでピカピカに磨き上げると刃境はわからなくなる。
合わせ包丁の地鉄と刃鉄の硬度差による研ぎ傷の濃淡のようなものを、酸化腐蝕させてミクロレベルで表出させるのが金属組織の観察方法なのである。

酸化腐蝕させる必要があるということはわかっているし、酸化させられる物もいろいろ身の回りにある。しかし果たしてどれぐらい酸化腐蝕させれば組織観察に適当な状態になるのかがわからない。
軽く検索してみると、金属の種類によっていろいろと聞いたことの無い薬品を使うようだ。

そして、そもそもマイクロスコープも「200倍なら見えるかもしれない」であって、必ず見えるとは限らない、仮に適切に腐蝕させた試料を用意できてもよくわからないかもしれないのだ。


観察する金属試料とマイクロスコープの両方が適切でなければ観察はできない。


適切に処理された正解の試料を用意しないと、このマイクロスコープの能力は判断できない。


しかし試料が適切に処理されているかどうかは、確実に観察できる道具を使わなければ判断できない。


だめじゃん。。。


そんなことを頭の中でグルグルと考えるともなく考えていたあるとき、金属の組織撮影を仕事にしている人と知り合いになることができた。

つづく
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