楽しい出刃包丁

いい感じで丸錆びになった出刃包丁。



実は表面が赤錆のうちはまだ深刻じゃない。
赤錆はまだ不安定で、最終的に黒錆に変わる。
盛り上がった黒錆になってると表面的な錆だけじゃなくなってる可能性が高い。
中には錆が刃金を貫通してるような大変なものもある。そうなるとどうしようもない。


追記 *****

このお客さんも結局また錆びさせてしまうとザンネンなので、黒染めになった。
光ってるのは一瞬で、マメに使って磨く習慣がなければ、たとえ鏡面に磨いてもそのうち曇る。
錆びないようにする方法や、うっかりついてしまった錆を落とすことはそれほど難しくないが、習慣を変えるのは難しい。

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刃物油のこと

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機械に油を注す主な目的は、潤滑と防錆だと思うが、刃物に潤滑は必要無いので、刃物油の主目的は防錆だ。

水と酸素が無ければ鉄は錆びないので、水か酸素のどちらかを防げばいい。
油は酸化するので酸素は防がないと思うが、水をはじくので防錆能がある。

油が皮膜として鉄の表面に付着しているかぎり防錆効果が期待できるが、油の中には乾くものがある。
油が乾くとサラサラになるのではなくベタベタになる。換気扇に付着した油が乾燥しつつある油だ。完全に乾燥すると樹脂のように固化する。

油は乾きやすさによって、乾性油、反乾性油、不乾性油に分類される。
乾性油は油絵の具に使われるテレピン油だ。多くのサラダ油は半乾性油である。
植物性油の中で不乾性油は、椿油、オリーブオイルなどがある。椿油は匂いも無いので古来刃物油に利用されてきた。

機械油に使われる鉱物系の油はほぼ不乾性油だ。
鉱物系の防錆油の方がコストが安く機能的な物が多い。
刃物油として販売されている油も、ほとんどは鉱物系の油である。

椿油や丁子油と称して販売されている油も、鉱物系の油が添加されている物が多い。紅椿化学工業所や黒ばら本舗やAZが刃物用椿油を販売しているが、成分が明記されていないものも、価格から、椿油は配合されている程度だと考えられる。

多くの鉱物系油は、可食かどうかわからないという問題がある。
今の日本で最も多く身の回りにある刃物は包丁なのに、刃物油と称して販売されている油は包丁に使って良いかどうかわからないのである。
包丁に使用する場合は使う前に良く洗い流すこと、といった注意書きのある刃物油もある。
成分表示も注意書きも無いものもある。
よく洗い落とすことが前提なら、別に刃物油ではなくミシン油でもいいんじゃないかと思ってしまうのだが。

無害であることを明記しているのはAZの刃物油だ。ベビーオイルや食品機械用の油と同じ流動パラフィンが使われている。


食品調理に使う刃物でなければ可食性は気にしなくていい。
庭仕事に使う植木用のハサミや鎌は水滴が付着することもあるので水置換オイルがお勧めだ。配合された界面活性剤が油の中に水分を取り込むので、細かい隙間に残った水分も除去してくれる。
ただし水置換オイルには長期防錆性能が良くないものもあるようだ。
長期間保管する場合は、防錆用の油と明記された油が良い。

株式会社エーゼットは製品情報を詳しく開示してくれているので信頼できる。
私は、炭素鋼系の錆びやすい包丁やナイフ、キッチンハサミにはAZの刃物専用錆止油、裁ち鋏や刈込み鋏には同じくAZの水置換オイルを使っている。

一般の家庭でしばらく使わないかもしれないハガネの出刃包丁や刺身包丁を保管しておくような場合は、オリーブオイルがいい。
不乾性なので普通のサラダオイルより皮膜が長持ちする。
多少匂うが健康に害が無いことは確かで、入手しやすく、値段もさほど高く無い。

本稿は防錆油の専門家ではない私が個人的に調べた結果なので、間違っている点があるかもしれない。見つけたらご指摘いただきたい。
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黒染め

立派な赤錆が巣食っている出刃包丁が、「物置から出てきた」とのこと。

これからもあまり使わずに置いておくと思う、とのことで、なるべく錆びにくいように黒染めした。
ちょっとムラになっちゃったけど。

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ついでに自分の牛刀も。

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けっこういい感じ、と悦入。
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ハイネッタ?

オークションで、1800円ぐらいで落札したメーカー不明のカットシザーを分解してみたら、スペーサーが入ってた。

ハイネッタ??

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だけど、触点はある。

こんな刻印。

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素性をご存知の方がいらっしゃったら教えてください。
まあ、よく切れるからいいんですが。
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モーリー・カーターさんは素晴らしい。

「所さんのニッポンの出番」という番組で特集していた、アメリカのモーリー・カーターさん。

このひとは世界一のハガネの三徳包丁を作っていると思う。

なぜかというと、日本では4万円以上もするハガネの三徳包丁を作っても売れないからだ。

4万円以上で売れるということは、1日1~2本しか作らなくても仕事になるということだ。火造りも仕上げも納得するまで丁寧にやれるし、もし焼入れでわずかに失敗してもためらいなく廃棄できる。
柄もオリジナルでワンオフの、かなり手間がかかりそうな物を挿げている。

しかし、欧米でそういうものが売れているからと大量生産のメーカーが真似をして、富裕層を対象に4万円~6万円の包丁を作っても、カーターさんの包丁にはかなわないと思う。
なぜなら、製品の付加価値というものは、付加価値を付与する人の思い入れに依拠するものだからだ。
200万円の大衆車はマーケティング調査によって仕様を決定できるが、2000万円する売れる高級車は、自分はこういう物を作りたいという作り手の偏愛が消費者に受け入れられないとできないのだ。
カーターさんの包丁は、カーターさんの、むちゃくちゃ良く切れる、カッコイイ、すごい、という偏愛によって作られている。


刃物関係は素人騙しの胡散臭い宣伝が多いので、アメリカ人が日本の包丁を作っているというと斜に構えて見てしまうのだが、初回の放送でピピっと来たのは、「鋼材は白紙一号しか使わない」と言ったときだった。もし青紙スーパーと言ってたら鼻の穴が少し広がった程度で寝転がったまま見ていたと思うが、白紙一号と言われるとソファーの背もたれから体がむくりと起き上がってしまう。
三徳包丁の性能は白二でもSK4でも十分以上なのだが、オレは白一で作りたいという思いに嬉しくなる。

今回の放送は、初回の放送が人気だったため二回目の特集なのだが、一回目のときに所さんに包丁がプレゼントされて、所さんが甚くそれを気に入り、放送後にあらためて包丁を注文したらしく、その受け渡しの様子が放映された。そこで所さんが、お返しとしてプレゼントに日本刀を用意していたのもすごかった。
プレゼントに日本刀という時点でブっ飛んでいて目じりに皺が寄ってしまうのだが、直刃(すぐは)といわれるとお尻の穴がキュッと締まる。
それを受け取って、派手なものより地鉄の鍛錬がよくわかって良い、と言うカーターさんの返答も百点満点で、プレゼントの渡し合いで剣豪が果し合いをしているかのようだった。
ちなみに直刃というのは刀の刃文の種類のことだ。
複合材の包丁やナイフの刃境(はざかい)は、波打っていることが鍛造してある証拠なので高品質の証明にもなるのだが、日本刀の刃文は"置き土"をして硬度差を出した結果として出るものなので、まっすぐ土を置けばまっすぐになる。模様と品質は無関係で、刃文が波打っているのは、装飾、オシャレなのだ。私は日本刀についてはたまに展覧会で見る程度の知識しか無いが、刃文は直刃が好きだ。直刃じゃなくても派手じゃない方がいい。


たぶん日本にはカーターさんより熟練した鍛冶屋さんが何人もいると思うし、同じように良く切れる包丁もあると思うが、ハガネの鍛造包丁に対する情熱と行動力は世界一だろう。

ただ、残念なことに、ハガネの刃物の生産や売り上げは日本でも年々衰退している。欧米では量産メーカーもカスタムナイフのビルダーも含めて、包丁でハガネのものはカーターさん以外に作っている人を知らない。
錆びやすいので敬遠されるのだ。
研がないので良さがわからないのだ。
日立金属の青紙や白紙には、以前は、一号や二号のほかに更にAやBといった品質の区分があったが、生産量が減ってしまったために今は無くなってしまっている。
それどころか青紙や白紙の生産さえ中止が検討されたことがあるそうだ。
ハガネの包丁を愛する会の会長としては憂慮するばかりなのである。

何国人でも肌の色が何色でも、たとえ緑色の血が流れていても関係ない。
日本で長い年月をかけて醸成された鍛造刃物の素晴らしさをまっすぐに理解して、正当な技術を身につけて、世界に伝播してくれるカーターさんには、素晴らしいという賞賛しかない。
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