刃物に関する法律

「包丁男」が世間を騒がせている。
まいにち何本も包丁を持ち歩いている身には迷惑。幸い職務質問を受けたことは無いけれど、警察も横暴な職務質問をすることがよくあると聞くので、なるべく大人しく振舞わないといけない。


刃物に関する法律の規制についてまとめておく。



● 普通の人の日常生活に関係する規制

大雑把に言うと、

「必要が無いのに刃物を持ち歩いてはいけない。」

ということだ。


● 罰則は?

銃刀法違反なら2年以下の懲役又は30万円以下の罰金。

小さい刃物だと軽犯罪法違反になり、拘留又は科料。

ちなみに「罰金」は原則として1万円以上(特別に1万円以下になることもある)、「科料」は千円以上1万円未満。「懲役」は1ヶ月以上で「拘留」は1日以上30日未満。


● 細かい意味

「必要がないのに刃物を持ち歩かない」

「必要」は、銃刀法の条文では「業務その他正当な理由」と書かれている。
「業務」は料理人が包丁を持ち歩く、お百姓さんが鎌を持ち歩く、植木屋さんが剪定鋏を持ち歩く、など。
「正当な理由」は多くの人が当然必要だと考えるような理由かどうか、という曖昧な基準で判断される。

「刃物」には、ほとんどの刃物類が含まれる。
小学生が図工で使うハサミやカッターナイフも含まれる。

銃刀法では刃体の長さが6センチを超える刃物が対象だが、軽犯罪法では人に重大な怪我をさせられるようなもの、ということになっていて長さの基準はない。

「持ち歩く」は、正確には携帯と言い、手に持って歩くだけではなく、鞄に入れたり車の荷物室に入れておくことも含まれる。
当たり前だが自宅・事務所内や刃物屋さんの店内などで持ち歩くことは含まれない。

警視庁のホームページには

携帯とは 自宅又は居室以外の場所で刃物を手に持ち、あるいは身体に帯びる等して、これを直ちに使用し得る状態で身辺に置くことをいい、かつ、その状態が多少継続することをいうとされています。

と書いてある。
「直ちに使用し得る状態」と書いてはいるが、たとえば車のトランクのタックルボックスに仕舞ってあるナイフでも違法とみなされるそうだから、厳重に梱包して鍵をかけたアタッシュケースに入れたところで「携帯」ではないと考えるべきではないだろう。訂正記事参照

● 正当な理由の具体例

警視庁のホームページにある例示や巷間の噂(笑)で適法となるらしい事例は、

(適法)
・購入した刃物を家に持ち帰る
・研ぎ屋に持っていく、または持って帰る
・お料理教室で使う
・ホームパーティーで使う
・釣りで使う
・キャンプで使う
・山菜採りで使用する


といったようなところ。
断定できないので正確なことは所轄の警察署に問い合わせてください。


逆に違法になるであろう事例は典型例が挙げにくい。
たとえば鉛筆を削るためにサバイバルナイフを持ち歩いていると主張しても、まず認められないと思う。
マルチツールを鞄に入れていたら職務質問で所持理由も聞かれず違法と断定されて、警察署に連れて行かれてマルチツールを取り上げられて顔写真と指紋をとられたのは違法だとして、侵害の弁償を求める裁判が行われている。経過を看守したい。(個人データ抹消等請求事件)

ともあれ、「自分は正当な理由だと思う」ではなく、「多くの人が持ち歩くのが自然なことだと納得するかどうか」が問題。


「業務」で持ち運ぶことも適法。料理人が包丁を持ち運んだり山仕事をする人がナタを持ち歩いたり。
私も仕事だから大丈夫。万が一職務質問を受けたとき外見もそれらしく見えるように、刃物の集配をするときは作務衣を着ていることが多い。


法律違反にならない方法として、よく、「厳重に梱包する」「鍵のついた包丁ケースで運搬する」といった説明を見かける。
しかし、どの法律にも刃物の運び方に関する規定は無い。


業務その他正当な理由で持ち歩いているときに「厳重に梱包していない」という理由で違法になることはない。
また、業務その他正当な理由が無いのに持ち歩いて、「厳重に梱包している」から適法になるということもない。※誤

料理人がビニール袋に包丁を入れて地下鉄に乗っていて、急ブレーキをかけた拍子に隣の人に刺さってしまったという事件があったが、容疑は過失傷害罪であって銃刀法違反ではない。
こういった非常識なことが無いように安全な梱包をする必要は当然あるが、それはあくまで社会常識の問題で法律で決められているわけではない。


● 刃物を持ち歩いて逮捕されないための対策

警察のノルマだかなんだかで、職務質問で銃刀法違反ではない小型ナイフを軽犯罪法違反容疑で摘発することがよくあるらしい。
私は警察や役人を批判するだけの愚鈍な市民ではありたくないけれど、警察が不法な職質を当たり前だと思いすぎると、その風潮は前田元検事の証拠捏造や北海道警の裏金作り・拳銃押収事件捏造といった腐敗を一部に産み、日本中の正義の警察官までが信用を失う。そのことによって現実の犯罪抑止力が弱まってしまうことは、絶対に避けなければいけないことだ。
警察のみなさんには適法・適切な職務執行を切望する。しかし警職法や刑訴法では違法な捜査があることは現実。

だから、銃刀法違反ではない小型ナイフでも理由が無ければなるべく持ち歩かない。
これが一番。李下に冠、瓜田に靴。

刃渡り6センチ未満の刃物は「業務その他正当な理由」がなく持ち歩いても銃刀法違反ではない。
しかし軽犯罪法では人の身体や生命に害を与える刃物などの武器を「正当な理由無く」「隠して」持ち運ぶことを禁止している。
「隠して」という要件があるからキーホルダーにでもぶら下げていれば違法ではなくなるのだが、現実にはブラブラ下げている方が職務質問に遭いやすい。「隠して」というのはいったい何かということにもなるが、鞄に入れていて外から見えなければ「隠して」いると推定されて逮捕容疑になってしまう。
任意の職務質問では鞄の中なんて見せなくていいんだけど、「任意だから見せません」というと、「見せないのは怪しい」「隠し事が無ければ見せられるはずだ」と言う、進路に立ちふさがってその場から動かさない、無線で他の警察官を呼んで5~6人で取り囲んで任意と言いながら事実上見せることを強要する、といったことを現実にやっている警察官がいる。

違法かどうかはともかく、そういう現実があるわけだから、面倒くさいことに巻き込まれるのがいやなら必要が無いのに刃物を持ち歩かないのが現実的で賢明な対処だ。


つぎに、必要があり刃物を持ち歩く場合は、「正当な理由」を証明できるようにしておく。

・釣り、キャンプ、山菜取りなどに持っていく場合; 同行者の証言や他の荷物で証明できるはず。
・買った刃物を持ち帰る; 箱やパッケージなどに入っているだろうから、何時ごろどこの店でいくらで買ったといった状況を澱み無く言えれば問題ないと思うが、領収書やレシートがあると更によろしい。
・研ぎ屋に持って行くとき、持って帰るとき; なるべく事前に電話連絡して、万が一職質を受けたときは電話で証言してもらうようにしておいてください。
お料理教室やホームパーティー; やはり、適時電話連絡して他の人に証言してもらえるようにしておく。


正当な理由で刃物を持ち歩くときは、「これだけ証明してもまだ容疑者扱いで拘束するなら国家損害賠償訴訟をおこします。」と自信を持って言える程度の準備をしておくこと。

なによりも、何が違法で適法かといった知識を持つことが大切。

十分な説明をしても説明を聞かなかったり拘束が続いたり逮捕されるようなら、本当に訴訟を起こすしかない。

梱包の方法については法律に決まりが無いと書きましたが、新聞などで包丁を包む方法については別の記事で書きます。


● うっかりミス
釣りやキャンプに持って行った包丁をそのまま車やカバンの中に入れっぱなしにしておいても違法になる。
形式的には違法だが、刑法38条1項に原則として故意犯だけしか処罰されないという規定がある。
銃刀法にも軽犯罪法にも過失処分の規定は無いのでうっかりミスは不可罰と考えられる。

ただし、不可罰=合法ではないし、警察は故意か過失か現場ですぐに判断できるわけではないから、刃物を持っていて正当な理由が証明できなければ銃刀法違反の容疑者として逮捕・拘留されても警察に文句は言えない。うっかりミスだと言いさえすれば許されるなら、ヤクザや強盗が刃物を持ち歩いても取り締まりできない。
あくまで、うっかりミスだと裁判で認められれば罰金が科されないだけだ。
うっかりミスはしないよう注意が必要。


● 関係法令

銃刀法第22条

(刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止)
第二十二条  何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。


銃刀法施行令第37条

(刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物で携帯が禁止されないもの)
第三十七条  法第二十二条 ただし書の政令で定める種類又は形状の刃物は、次の各号に掲げるものとする。
一  刃体の先端部が著しく鋭く、かつ、刃が鋭利なはさみ以外のはさみ
二  折りたたみ式のナイフであつて、刃体の幅が一・五センチメートルを、刃体の厚みが〇・二五センチメートルをそれぞれこえず、かつ、開刃した刃体をさやに固定させる装置を有しないもの
三  法第二十二条 の内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のくだものナイフであつて、刃体の厚みが〇・一五センチメートルをこえず、かつ、刃体の先端部が丸みを帯びているもの
四  法第二十二条 の内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが七センチメートル以下の切出しであつて、刃体の幅が二センチメートルを、刃体の厚みが〇・二センチメートルをそれぞれこえないもの


銃刀法第31条の18第1項第3号

(罰則)
第三十一条の十八  次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
三  第二十二条の規定に違反した者


軽犯罪法第1条第1項第2号

第一条  左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二 正当な理由がなく刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者



● 参考サイト

警視庁 刃物の話
明るい警察を実現する全国ネットワーク

訂正について
銃刀法では「運搬」と「携帯」を概念上区別しており、公共に不安を及ぼす可能性がより高い「携帯」のみを禁止している。鍵をかける、厳重に梱包するなど直ちに取り出すことが困難な状態であれば居室等の外で身辺に帯びていても「携帯」にあたらないと判断されている。
直ちに取り出すことができないほど厳重に梱包してあれば正当理由なく持ち運んでも違法ではないということ。
軽犯罪法における携帯の概念も同義と解される。


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