地鉄

包丁のダマスカスは私は好きじゃない。
主な理由は管理が大変だから。

新品はショット・ブラストという機械を使った処理で表面のダマスカス模様を出している物がほとんど。
おそらく刀剣と同じように地艶・刃艶を使って手研ぎで模様を出すこともできると思うけど、実用品である包丁でそんなこと毎回やってられない。そんなことして商売として作業代を取ると、磨くだけで1万円以上かかると思う。するとマスキングしてショット・ブラストというのがビジネスとしては当然の選択肢になるのはわかるけど、ショット・ブラストすることによって実は刃先が磨耗してしまう。そこでショットブラストのあと刃付けをし直すが、そのとき切刃を当てると模様が消えてしまうから、薄刃でも二段刃気味の刃付けがなされている物があるのだ。

美観のために機能を犠牲にするということだけは、あってはならない。
武器である刀剣の化粧研ぎでも、少なくとも切れ味を犠牲にすることは無いはずだ。

さて、ダマスカスは地鉄の綺麗な模様にすぎず、切れ味とは何の関係も無いはずだが、

「ダマスカス鋼は多層の材料を鍛造したものの総称として認知されています。この多層鍛造構造により心材の炭素の緻密性が向上し、刃物としては最高峰ともいえる硬度と安定した切れ味を提供できるのです。」

と説明しているメーカーもある。本当だろうか。

そもそも刃物にとって地鉄の善し悪しとはどういうことだろうか。


地鉄に拘っているのは鉋(カンナ)の常三郎さん。

テレビ番組で、明治時代の地鉄をストックして今でも使っていると紹介されていたのを見て、なぜそんなことをしているのかメールで質問してみた。

その回答の要旨。

・ストックして使っているのは明治時代の英国製の練鉄であり、脆く気泡があることが大切。
・細かい気泡が砥石の目詰まりを防ぐ。
・裏出しがしやすく刃金が割れにくい。

なるほど。
包丁では裏出ししないなー。

画像もわざわざ送ってくれた。
DSC00495.jpg

現代の技術でも作ることができるかもしれないけど、50トン単位というオーダーになるので実験もできないのだそう。
気泡があって脆い鉄。たしかにこれ以外に用途がないかもしれない。

包丁で地鉄にこれほど拘っているメーカーはあるのかなあ。
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ジャンル : 趣味・実用

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