錆び(2) 黒錆びと赤錆び

包丁の錆びには黒錆びと赤錆びがあります。このふたつは、結晶の構造が違っています。

赤錆びは「鱗鉄鉱(りんてっこう、lepidocrocite、レピドクロサイト)」という組織で、顕微鏡で見るとウロコのような結晶構造になっています。
黒錆びは「針鉄鉱(しんてっこう、goethite、ゲータイト、ゲーサイト)」と言います。針のような結晶構造になっています。

さて、鉄というのは重量比でいうと地球の30~40%を占めるといわれる最も多い成分です。実は地球というのは鉄だらけなんです。だけど地球の表面を削っていくと中身がピカピカ光ってるってわけじゃありません。
鉄は、地球の環境では酸素と結合した、つまり酸化した状態で安定して存在しています。
言い換えると、鉄というものは本来錆びているものなのです。
身近なところでは砂鉄がそうです。黒いですよね。鉄鉱石も黒いです。

錆びは黒錆びも赤錆びも酸化鉄ですが、このうち、黒錆びが鉄の地球上での本来の姿なんです。
赤錆は黒錆に変わる過程の物質です。ほおっておくと最終的には黒錆になります。

製鉄というのは、鉄を溶鉱炉なんかで熱して溶かす過程で、酸素を分離させる作業のことなのです。


さて、安定した黒錆び、ゲーサイトですが、これは放置しておいてもかまいません。見た目は悪いけど。
南部鉄器とか鉄のフライパンみたいに、鉄製の調理器具で黒いものがあります。包丁にも黒打ちといって表面が黒い物があります。これらはゲーサイトとは違うんですが安定した黒錆びで表面を覆って内部の酸化を抑えているんですね。

一方の赤錆びですが、これはさらに化学変化する不安定な錆びです。また、組織が緻密じゃないから内部の金属を酸化から守る働きもありません。
赤錆びは放置せずに削るなり溶かすなりして取り去る必要があります。


ちなみにアルミニウムやクロムやチタンは、金属の表面に非常に薄い不動態皮膜を形成するため錆びにくいです。
要するに、表面がうっすらと錆びているんです。この錆びが緻密な組織で、内部に酸素や水を通しにくいから、内部まで錆びが進行しにくいんです。
ステンレスは鉄の一種なのですが、鉄にクロムを少なくとも10.5%以上添加した合金なので、クロムが形成する不動態皮膜のおかげで錆びにくいのです。

金(GOLD)も錆びませんが、こいつは別の理由で錆びません。「標準電極電位」というものの関係で、原子の最外殻にある自由電子が移動しないのです。もともと酸化腐食しないのです。
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