鉄・ハガネ・ステンレス

「鉄」「鋼」「ステンレス」の関係は次の通り。

鉄ハガネステンレスカラー3





「鉄(Fe)」は元素である。
金や水素や炭素と同じように、全ての物質の元となる物質である。
今私の目の前にあるコーヒーは、水とコーヒー豆のエキスとミルクでできているが、鉄が水で、その中に炭素がコーヒー豆のエキス、クロムがミルク、というようなイメージだ。


「鋼」は一定量の炭素(C)が混じった鉄である。
日本工業規格(JIS)の定義は次の通り。

鋼:鉄を主成分として,一般に約2%以下の炭素と,その他の成分を含むもの。steel

鉄に含まれる炭素の量によって、およそ0.03%以下を〝鉄”ないし〝軟鉄”、0.03%~2.1%を〝鋼(ハガネ/コウ)”、2.1%以上を〝鋳鉄(イテツ/チュウテツ)”と分類する。
炭素量が多いほど熱処理によって硬くなる。(熱処理によって硬くなる理由
炭素量の多い鋳鉄は硬すぎて削ったり曲げたりする加工が難しく、熱く溶けた状態の物を鋳型(イガタ)に流し込んで冷ますことで整形するので、鋳鉄と呼ばれる。マンホールの蓋や船の錨や鉄瓶などが鋳鉄製品である。

鋼の中でも比較的柔らかい物を軟鋼、硬いものを硬鋼などと分類することがある。
刃物に用いられる鋼はかなりの硬さが必要で、炭素含有量は一般には0.5%~2%程度である。
上図に〝刃物鋼”という言葉を使ったが定義のある用語ではない。刃物鋼として製造されたわけではない鋼材もよく刃物に使われている。たとえば車の板バネは刃物に転用できるが、ボディーは刃物にするには柔らかすぎる。いずれも鋼の一種である。


「ステンレス」はクロム(Cr)を多量に含む鉄合金である。
JISの定義は次の通り。

ステンレス鋼:クロム含有率を 10.5%以上,炭素含有率を 1.2%以下とし,耐食性を向上させた合金鋼。常温における組織によってマルテンサイト系,フェライト系,オーステナイト系,オーステナイト・フェライト系及び析出硬化系の 5 種類に分類される。stainless steels

クロムが鉄の表面に薄い酸化皮膜を形成し、これが水ないし酸素を遮断するため、錆びにくい性質を持つ。
クロム含有量が多いほど耐食性(錆びにくさ)は高い。
なお、JISの定義には当てはまらないが多量のクロムを含み錆びにくい鋼材の包丁も、ステンレスとされている場合がよくある。


「ステンレス包丁とハガネの包丁」
刃物について述べるとき、錆びやすいかどうかを簡単に示すため、錆びにくい鋼材の物を「ステンレス」錆びやすい鋼材の物を「ハガネ」「炭素鋼」ないし単に「鉄」と呼び分けるのが一般的である。
海外でもステンレススチールとカーボンスチールといった呼びわけをしている。

しかし、既述の通り、クロムと鉄を一定量以上含む刃物用の鋼材は、鉄でありステンレスでありハガネである。
だからステンレスに対比する言葉としてハガネというのは実はおかしいのだが、日本では刃物の刃部に用いる硬い鉄という意味で昔から使われてきた「ハガネ」という言葉を、それほど硬くは無い鉄も含むより広義な英語のSteelの訳語に当てはめてしまったため、刃物業界では慣習として「ハガネとステンレス」というような呼び分けになってしまっているようだ。
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Re: No title

狛犬さんこんにちわ。

ハガネの語源は刃金・刃鉄なんでしょうね。
日本の伝統的な使い方としては刃物に使える硬度の鉄がハガネだと思います。
江戸時代には炭素量0.1%の鉄をハガネとは言わなかったでしょうけど、江戸時代には工業規格なんてないし炭素量の計測もできなかっただろうから、鍛冶屋さんがハガネと判断すればハガネ、みたいなことだったろうと思います。
Steelという英単語にハガネということばを当てはめたのが問題だったのかもしれません。
近世・近代の海外には地鉄と刃鉄を合わせた複合素材の刃物がないみたいなので、地鉄と刃鉄という概念区分もなかったと思いますし。

いろんな意味があるので、使う場合は注意しないといけないし、読み聞きする場合も状況によって意味を推測しないといけませんね。

No title

皆さんの使う“鋼”と“ハガネ”の使い分けがあるのでしょう。
言葉の上では違うと思います、感覚的な問題ですが。

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