頭落とし・盛高刃物菜切り

あけましておめでとうございます。

面白い包丁2つ。

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「頭落とし」という名前の包丁。
精肉で使うプロ用の包丁。
預かったとき、見たことあるけどなんだっけ?ガラスキでもホネスキでもなくて・・・思い出せなかった。

これで何の頭をどう落とすのだろう?
なんのために反ってるのかも良くわからない。
皮を剥ぐというならなんとなく想像できるけど。
動物の解体はしたことがないので。

詳しい使い方をご存知の方がいらっしゃったら教えてください。


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盛高刃物さんの菜切り。
鋼材は青紙スーパー、紫檀角巻き柄、丁寧に柄埋めもしてある。
見せられないけど裏に銘が彫ってあって、タガネワークが大変上手。
5万円の薄刃みたいなスペック。
車にたとえるとスーパーチャージャーエンジンを搭載して内装が総革張のカローラといったところ(^^;


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切っ先とアゴを削って心持ちお腹を出っ張らせた。
このほうが使いやすいはず。



ところでこの包丁、盛高刃物のホームページによると納期は2015年夏以降だそうである。

なんでそんなに人気なんだろう?
錆びやすい炭素鋼の黒打ち菜切り包丁なんて、いまや全然人気が無い絶滅危惧種なのに。

じっさいのところ、手打の良い物を作る鍛冶屋さんはどんどん減って行ってる。
青紙スーパーの包丁は珍しいけど、それが理由でバカ売れするはずがない。

そもそも、三徳や菜切りは家庭用の位置付けなのでメーカー(鍛冶屋)も普通はコストパフォーマンスの良さを重視するから、炭素鋼で1万円前後なんてかなり割高なのだ。

人気になる要素がほとんど無いのである。


謎の答えは、おそらく海外需要だろう。


欧米には複合材の刃物が無い(近年日本製品を真似て作られたものは少数あるが)。
全鋼ばっかり。本焼きなんてものも当然無いから、全鋼の丸焼き。
すると、硬度を上げると壊れやすいから焼きは甘めにせざるを得ない。硬くてもHRC58ぐらいまで。
結果、あまり切れ味の良い刃物は作ることができないのである。

鋼材が柔かければ靱性にも大して神経質にならなくていいので、自由鍛造と型抜き削り出しという製法の違いで大きな差は出ない。
実際には全鋼丸焼きでも鍛造と型抜き削り出しではかなり違うが、HRC65前後まで硬度を持っていく片刃和包丁ほど致命的な差にはならない。

製品に大きな差が無ければ手間がかからず安く作れる型抜き削り出し製法が主流になる。


ドイツ・ゾーリンゲンのような世界的に有名な刃物の生産地でも、自由鍛造で刃物作りをしている工房が今はもう無いそうだ。越前・武生からブレードだけ輸入してドイツで柄をつけて日独コラボ製品として販売してるところもある。


欧米では、日本で作られている複合構造で切れ味の鋭い刃物は驚異的なのである。
しかも欧米には同じ物を作ることができる刃物メーカーやブラックスミスがほぼいない。
職人の仕事というのは「技」だから数をこなさなければ身につかない、詳しい手順書を作って同じ機械を使って作ろうとしても、同じ品質のものを同じコストで作ることはできないのだ。

だから日本から輸入せざるを得ないのではないだろうか。


欧米需要だと考えれば、片刃の薄刃ではなく両刃の菜切りであることも、不釣合いに豪華な柄がついていることも説明がつく。


しかしどんな理由であるにせよ、良い物を作る伝統が残ってゆくのはいいことだ。


日本でも炭素鋼の包丁の良さが見直されるべきだと思う。
錆びなんて落とせばいいだけだ。

炭素鋼は日立金属の青紙や白紙が有名だが、以前はたとえば青紙1号にもAとBというランクがあった。需要が少ないのでもうなくなってしまったそうだ。それどころか青紙・白紙の製造中止も検討されたことがあると仄聞している。

大事な物が廃れてしまおうとしているのは、企業の営業努力ではなく私達消費者の生活スタイルが原因である。
包丁も、ステンレスでもいいが、安いものを買って切れなくなったら買い換えるという大量消費型で楽をする生活様式は、いろんな意味でもうやめにしなければいけない。

自分で手入れをして最高の状態を引き出して使うようになると、炭素鋼の偉大さは自ずと理解できるはずだ。
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Re: 頭おとし

たろうさんコメントありがとうございます。


「複合材」と書いたのは、具体的には割り込みと合わせ包丁のことです。ダマスカスも複合材と言えますね。
でもそういう意味じゃなくて軟らかい鉄と硬い鉄を組み合わせて切れ味と壊れにくさを両立させた材料という意味で複合材という言葉を使いました。
そういう刃物が海外には無いということです。
紛らわしくてすみません。

解体の動画は「冬山におけるエゾシカ猟の実際のすべて」というタイトルのものが参考になりました。
丁寧に捌いてます。興味があったら検索してみてください。
ご紹介頂いた動画のような解体方法ならクリーバー(CLEAVER)がいいと思います。

頭おとし

http://video.search.yahoo.com/video/play;_ylt=A2KIo9YmGyZTUB0A_L_7w8QF;_ylu=X3oDMTB2Nmphdmg4BHNlYwNzcgRzbGsDdmlkBHZ0aWQDVjE0OQRncG9zAzI-?p=%E9%A3%9F%E8%82%89%E8%A7%A3%E4%BD%93%E5%8B%95%E7%94%BB&vid=4365c712c8e559e290bdfc3b9124894a&l=2%3A06&turl=http%3A%2F%2Fts3.mm.bing.net%2Fth%3Fid%3DVN.608039001208849186%26pid%3D15.1&rurl=http%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3DCeaqlbL_ZmI&tit=%E8%B1%9A%E3%81%AE%E5%B1%A0%E6%AE%BA%EF%BC%88%E8%A7%A3%E4%BD%93%EF%BC%89&c=1&sigr=11a2t2rqs&sigt=10o9ba1v8&age=0&hsimp=yhs-yhsifmclone1&hspart=Babylon&type=br101dm84bs02af101380&tt=b

これが参考に成りませんか

欧米には複合材の刃物が無い(近年日本製品を真似て作られたものは少数あるが)。
全鋼ばっかり。本焼きなんてものも当然無いから、全鋼の丸焼き。

私の意見ですが、ダマスカスが複合材と考えます。
素材の違う、鋼材を重ね合わせ、モリブデンなどの特殊鋼をはさみ、表裏が、ダマスカス(真ん中がモリブデン鋼)
このように考えます。

パソコン苦手なもので、
ヤフーブログ~刃物で研削いただくと(たろう)がでます。

済みませんでした

Re: 頭落とし

あきらパパさんこんにちわ。

牛なりイノシシなり鹿の頭を落とすのに、なんでこの形がいいのか?
どういう作業をしてるのか?
ということが疑問なのですね。動物を解体する現場を見る機会がないので。
品川の中央食肉市場にでも行けば誰か教えてくれるかなあ?

盛高刃物

盛高刃物さんは熊本県八代の鍛治屋さん。
元は刀匠。今もその技術を活かしている。

研ぎイベントで研いだことありますが、
青紙スーパーっていうから
研ぎにくいのかと思いきや、
意外に研ぎ安く、
楽に鋭い刃付けが出来た。

ご推察通り、現在海外で人気で生産が
追いつかなくなってますね。

各地の百貨店で販売されてますよ。

頭落とし

うちにも在庫あります。

文字通り、頭を落とすのに使います。
まぁ、牛が多いのでは?

うちの場合は、
イノシシ、鹿を解体する人が買うけど…

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