超絶凄ワザ! 刃物対決後編

超絶凄ワザ!「前人未到の“切れ味”を目指せ」(後編)

刃物対決の後編である。
さて、どういう結果になるだろうか。

前回と同じく以下の通り略す。
【盛】=盛弘鍛冶工場
【福】=福田刃物工業


● 番組の進行

はじめにスタジオで前編のダイジェストを紹介。


-場面転換-
【福】工場映像。
 研磨方法を見直す。通常は台座から刃先を僅かに突き出して研磨するが、そうすると、刃先が少し反ってしまう。そこで台座の上に金属板を置き、金属板の上に削る刃物を置き、金属板ごと研磨することで刃先の反りを防ぐ。「共研(ともけん)」という方法。
実験し、切断に成功。
背景の暗いスロー映像で見ると、切断の瞬間に断面が赤熱し切った後に煙が上がっている。
より円に近い断面にするため様々な形状で試験。30種類を試す。しかし断面は円形に近づかない。


-場面転換-
【盛】鍛冶場映像
前回予告映像にあったM字型刃物を作成。
実験する。しかし切断に失敗する。

主役の父である平弘秋氏がアドバイス。

(父)「オレはやっぱり尖っとる方がいいと思う、」
(父)「尖っとる方が、、やっぱ抜からんことには切れんもん。」

(ナレーション) 日本刀の製法である鍛造の技、そこから生み出される鋼(はがね)のしなやかさを信じ、ひたすら鋭利な刃物を追い求めよ、父からのメッセージだった。刃の形は原点に立ち返り尖らせた。しかも、折れて砕ける寸前まで鋭く尖らせた。

(主役)「負けられないですね。」
(主役)「私が負ければですね、日本中の鍛造職人さんが、工業刃物よりも劣る刃物を作っているということになるじゃないですか。」
(主役)「絶対そうはならないように。」


-場面転換-
【福】工場映像
実験を重ねて切り口に傾向があることに気付く。鉄パイプの切り口が刃物形状と相似していることだ。「円には円」丸い刃先にすることを決める。しかしそれでは最初の切り込みが難しい。
そこでダイヤに次ぐ硬さを持つ超硬合金を使うことに。(おそらくタングステン・カーバイド)
しかし硬いものは脆いので割れるリスクが高まる。

(担当者)「一発勝負なので、硬いものに硬いもので切ったあとに、まあ後は砕け散っても、っていうつもりで、挑戦したいですね。」

(ナレーション)割れやすい超硬合金、硬い素材を切るには向いていないと言われてきた。もし鉄が切れれば刃物業界の常識を覆すことになる。


-場面転換-
スタジオ
両者の刃物を紹介。
【盛】は先端が槍のように鋭利、シノギ(※)はなだらかな曲面に見える。全体に鏡面研磨。
【福】は先端が半円形、シノギは角が立っている。平(※)はヘアライン仕上げに見える。

  《シノギ(鎬)=平の面と切刃の面の境となる稜線》
  《平(ひら)=刃物側面の平面部分》

勝負。
【盛】と【福】ともに、切断に成功。
両者とも初回の切断時よりかなり円に近い形状。【盛】は刃先が欠けるが【福】は欠けもヒビも無し。
断面画像で判定。国立長岡技術科学大学の永澤茂教授。
切り口の縦横比を割り出し、この値が1に近い方が勝ち。

結果
【盛】0.88
【福】0.69

よって盛弘鍛冶工場、平泰明氏の勝利。

ただしパイプの断面は福田刃物の方がきれいだった。


● 感想

負けた~~!!予想がハズレて残念。
ただ前回も書いたとおり、そば屋とラーメン屋がスパゲティーで対決するような企画なので、くどいようだがこの結果が会社や製品の優劣を示すものではないことは理解されたい。

【福】は紙の断裁刃物を得意とするメーカーである。断裁機の長くてまっすぐな刃を手作りするのは非常に難しい。長いだけならマグロ包丁や日本刀があるが少しでも刃線が曲がっていると紙が切れ残ってしまうからだ。コピー用紙の厚みはわずか約0.1mm。45センチとか60センチといった長さできっちり直線でなければならないのだ。長いものは私も研げない。専用の冶具が必要。

結果について考えてみる。

まず【盛】の切り口より【福】の切り口がきれいだった理由。これは側方から撮影したスーパースロー映像で想像できる。
【盛】は切断時に刃先が欠けて右斜め上方に飛び、刃先端が少し左に傾いてパイプに進入し、切断後に大きく左右に振動している。これでも割れなかったのは鍛造で得られた靱性(粘り)のおかげかもしれない。
一方【福】の刃物は欠けることなくまっすぐパイプに進入し、切断後もピタリと止まっている。

次に【福】が【盛】より変形していた理由。
予想が外れて悔しいので【福】の肩を持つが、これは判定方法にも問題があったのではないだろうか。
つまり、はじめは「円に近い方が勝ち」と言っていたのだが、円に近いことをどう判断するのか具体的には説明していなかった。そして縦横比が1に近いものを円に近いということにした。しかしこの方法では四角形と円でも縦横比が同じなら引き分けになる。
ところで【福】は刃の形状と切り口の形状が相似することに着目して半円状の先端を選択した。しかしよく考えてみると形状が相似していたのはパイプの下半分である。
縦横比で判定することがわかっていれば、見た目が円に近いということではなく、パイプを横に押し潰さないことを重視したかもしれない。
先端が尖っていると上半分の一点を押し込んでしまうが下半分も同じように押し込むから相殺されて縦の長さはあまり変わらずに済む可能性もある。いずれにせよ判定基準は刃形状の決定に大きく影響したと考えられるから、番組は予め正確に伝達しなければならなかっただろう。
あえて突っ込みどころの多い曖昧な判定にすることで明確な優劣評価を避けるという意図があったのかもしれないが。

【福】工場内における試験のスーパースロー映像で、切断の瞬間の断面に赤熱と煙が見られたことからすると、かなりの摩擦があることは間違いない。【盛】の鏡面研磨や蛤刃は有効だったと思う。刃が欠けないぎりぎりの形状にできれば断面はきれいだったに違いない。

両者の刃の厚み、刃先角、硬度、組織の断面画像をぜひ知りたいが、普通の人には意味がわからずつまらないだろうから仕方ないか。


面白かった。

次回はゴム対バネ。
ホッピングを使って対決するらしい。予告映像でバク転していたブツはおそらくフライバー、東京だと西荻窪の馬力屋さんというオートバイ屋さんで売ってます。
http://www.bariqiya.com/online-shop-flybar/
ちなみに高くて強力な製品の方がゴム使ってます。
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