マイクロスコープで金属組織は観察できるか? (3)

撮影した画像と加工した試料を送り返して頂いた。

試料は黄色い円筒状の樹脂の上部に埋め込んで平面に研磨されている。
s03.jpg

被写界深度がとても浅いので平面研磨は非常に重要だ。
ちなみに被写界深度とは焦点が合う遠近の範囲のことである。
たとえば野球番組でマウンドのピッチャーを映すと、背景にある外野席はぼやけて見える。二塁にいる選手ぐらいはあまりぼやけていないかもしれない。この場合前後20メートルほどが焦点が合ってきれいに見える範囲で、これを被写界深度という。一眼レフカメラではレンズに光を通す「絞り」を広く解放すると被写界深度は浅くなり、背景がボケて映したい対象が浮き立つ。逆に絞りを狭く絞ると被写界深度が深くなり、背景もはっきり見える。
以前掲載したカワハギ針の針先の写真から想像すると、PEAKマイクロスコープの200倍で被写界深度は10~50ミクロン(0.01~0.05mm)程度ではないだろうか。
つまり深さ0.1ミリ(=100ミクロン)もある傷だと、その傷の凹んだ奥と出っ張った部分のどちらかがボケてしまってきれいに写らないということだ。
傷のように鋭くなくても平面がデコボコしてると観察位置を変えるごとに焦点を調整しなおさなければいけない。


裏からみたところ。試料を取り違えないようナンバリングして頂いてる。
1が白紙二号鍛造、2が貝印、3がGALAXY777
s02.jpg


腐蝕処理された表面はムラなくグレーに塗ったように見える。
三つの色は微妙に異なる。当たり前だが金属組織など見えない。
s01.jpg



この試料をPEAKマイクロスコープで覗いて撮影してみた。
ちなみに接眼レンズにコンデジのレンズを近づけるという力技で撮影しているのであまりきれいに写らない。肉眼ではもう少しきれいに見える印象。

試料1 ふつう
0101.jpg
試料1 拡大
0102.jpg


試料2 ふつう
0201.jpg
試料2 拡大
0202.jpg

試料3 ふつう
0301.jpg
試料3 拡大
0302.jpg


接眼レンズを覗くと「ふつう」のような大きさで見える。細かい組織の形状はほとんどわからないが、三つを比較すると荒さの違いはわかる。
コンデジで撮影して拡大したのが「拡大」で、モニターで見ると組織らしきものが見えるようになる。


次にプロに撮影してもらった画像。

試料1 
100倍 俯瞰
1x100.jpg
500倍 拡大
1_×500_600×600

試料2
100倍 俯瞰
2x100.jpg
500倍 拡大
2_×500_600×600


試料3
100倍 俯瞰
3x100.jpg
500倍 拡大
3_×500_600×600


うーん、やはりぜんぜん違う(笑)


500倍を並べてみる。
中央_500_3種並べ

2の貝印は10ミクロン以上の粒子が点在している。球状化処理してるというのはこれかな?
1が堺石籐貞宗の白紙二号。これがいちばん細かい。
3のGALAXY777は細長い粒子の集合。ひとつひとつが比較的大きい。


別件、熱を加えた部分の観察。

試料1 白紙二号 テンパーカラーで青っぽくなってるけど組織のはっきりした違いは感じられない。
1burn500.jpg

試料2 貝印 上部に粗大な粒子が多いように見える。偶然撮影部分に多かった可能性もあるけど、中心部の画像と比較しても多いような印象。
2burn500.jpg

試料3 GALAXY777 組織に何らかの変化があるのかわからないが、上部の組織の方が境界がくっきり見える。テンパーカラーがついてるだけかもしれない。
3burn500.jpg


影響ははっきりわからないけど、もし組織が熱変しているとしても100~200ミクロンぐらいの深さじゃないかと思う。0.1~0.2ミリぐらい。これぐらいなら荒砥石でひと皮剥けば剥離できそう。


マイクロスコープでも何とか組織っぽい物は見えなくもないけど、裸眼での識別は困難で、高画素高解像度のデジカメで写してモニターで見ないとだめ。だけどレンズが大きい一眼レフでは写せない。接眼レンズと同じぐらいの小径レンズじゃないとだめ。何かアタッチメントを自作すればいいかもしれない。
しかし頑張ってもプロの撮影した画像にはまったく及ばない。

そんな結論でした。
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