モリブデン鋼、モリブデンバナジウム鋼の正体とは?

包丁のパッケージによく書いてある呪文、

「モリブデン鋼」「モリブデンバナジウム鋼」

これは一体何か?


まず、鋼とは英語でいうところのスチール、日本語では「コウ」「ハガネ」という。
要は鉄のことである。
鉄はいろいろな元素を添加することによって、硬くなったり逆に柔かくなったり錆びにくくなったり表面が滑りやすくなったり、様々な性質に変化する便利な金属なのだ。
鉄に一定量の炭素を加えた、比較的硬くなるものの総称を鋼という。まったく硬くならないものが軟鉄、鋼よりもっと硬くなるものを鋳鉄という。
鋼にもいろんな種類があるのだが、ともかく、○○鋼と書いてあるものは鉄のことだと思えばいい。
ステンレス鋼も鉄である。鉄に10.5%以上のクロムという元素を加えた鉄をステンレス鋼と言う。クロムを加えることによって錆びにくくなるのである。
(参) 鉄・ハガネ・ステンレス


では、モリブデン、モリブデンバナジウム、とは何か。
モリブデンもバナジウムもやはり元素である。金属元素であり、レアメタルである。

モリブデンは焼き入れ性を良くし、強度や粘り強さを高める。バナジウムは強度を高めたり耐摩耗性を高める。
このほかにも様々な元素が刃物に使われる鋼材を改質するために添加される。
たとえば、ニッケル、コバルト、マンガン、タングステン、銅などだ。
(参)刃物鋼に含まれる元素の効果
コバルト鋼と書かれているものはときどき見るが、ニッケル鋼とかタングステン鋼とかいうのは見たことがない。


ところで。

鋼材には刃物に使われるもの以外も含めると数千もの種類がある。もしかすると刃物に使われる鋼材だけでも1000を超えるかもしれない。それは様々な元素をどれぐらい添加するかによって鋼材の性質が微妙に変化するからだ。用途に応じて様々な鋼材が開発されているからだと言うべきだろうか。

刃物に使われる鋼だけでも、私が把握しているもので数百種類はある。
その中でモリブデン鋼とかモリブデンバナジウム鋼の正体は一体何だろうか?というのが今回のテーマなのである。


「モリブデン鋼」について条件を推測して検討してみた。

1.モリブデンが含まれていてバナジウムは含まれていない(バナジウムが含まれていればモリブデンバナジウム鋼と書くだろうから)
2.日本製の鋼材である
3.具体的な鋼材の名前を書く方が宣伝になるほど有名・高級鋼材ではない
4.ステンレスである(非ステンレスのものは見たことがないため)

「モリブデンバナジウム鋼」は、上条件の1が「モリブデンとバナジウムが含まれている」に変わる。

この条件で抽出してみたところ、


モリブデン鋼に該当しそうなものは、

SUS440A JIS鋼種
SUS440B JIS鋼種
SUS440C JIS鋼種
DSR1K6 大同特殊鋼
DSR1K7 大同特殊鋼
DSR1K8 大同特殊鋼
銀1号 日立金属
AUS7 愛知製鋼
AUS10M 愛知製鋼
VG1 武生特殊鋼材
VG2 武生特殊鋼材

なお、大同特殊鋼の鋼材はバナジウムについての表示が無く「特殊元素添加」とだけ書いてあるので、もしかするとバナジウムが入っているかもしれない。

モリブデンバナジウム鋼に該当しそうなものは、

KAD181 神戸製鋼
SKD10 JIS鋼種
SKD11 JIS鋼種
AUS6M 愛知製鋼
AUS8 愛知製鋼
AUS10 愛知製鋼
VG5 武生特殊鋼材


これが今のところの推測。

刃物屋さん、鋼材メーカーさん、その他答えを知ってる方、支障がなければご教示下さい。
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Re: 市中の反応

アドバイザーさんこんにちわ。

私は日立金属の関係者じゃありませんので開発はいたしませんが、金属メーカーさんが色々なかたを幸せにする開発を今後もして頂けることをいっしょにお願いさせていただきます。

市中の反応

 SLD-MAGICは仕事柄中小企業を廻るので噂は聞いています。色々なかたを幸せにする開発を今後もよろしくお願いします。

Re: No title

べえさんお久しぶりです。

4000STは8A(AUS-8)ですか。情報有難うございます。
刃物鋼の中ではそれほどハイカーボンじゃないし特殊とも思いませんが、モリブデンもバナジウムも含まれているステンレス鋼ですね。

No title

お久しぶりです。

 Amazonの関孫六 4000ST 三徳 165mm AB-5222の説明に「8A材」と書かれていました。で、KAIのHPで見ると、ハイカーボン特殊ステンレス刃物鋼と書かれていて、Amazonに書かれていたモリブデンバナジウムステンレス刃物鋼とは書かれていません。楽天のKAIストアではモリブデンバナジウムステンレス鋼と書かれています。

Re: 最近の工具鋼市況

通りすがりの切削屋さんこんにちわ。

>  それにしても自己潤滑性工具鋼、SLD-MAGICは結構流通していますね。

事故潤滑性工具鋼っていうんですか。
存じませんでした。
なんか、すごいですね。

刃物でSLDが使われてるものというと庄三郎と増太郎の裁ち鋏が思い浮かぶぐらいです。MAGICじゃないと思いますけど。
包丁も見聞きしたことはありますが、あまりメジャーじゃない印象です。

鋏は二枚の刃体のすり合いで磨耗することが多いので良さそうですが、包丁はまな板との打突が損耗の多くの原因だそうなので、耐摩耗性はあまり関係無く、ダイス鋼の特性はあまり重宝されないんだと思います。
SLD-MAGIC使った裁ち鋏とか理美容鋏が普及してくれると面白そうですね。

最近の工具鋼市況

 それにしても自己潤滑性工具鋼、SLD-MAGICは結構流通していますね。

Re: 御返答ありがとうございます

こんにちわ。


> 出来上がった感想は、意外と出来てしまって驚いています。好みの木材を買ってきて柄づくりにはまりそうです。
> 修理してみると大手製造販売店があまりやりたがらないのもわかりました。割に合いませんよねこの修理は。開けてみて、ぼろぼろ、溶接か切り出して中子を制作それをするなら新品買ってもらったほうがいいですもんね。

仕事としてやると時間工賃で金額設定しないといけませんからねー。まじめに計算すると5000円はもらわないと成立しないでしょうね。ぼくも作業が面白くなければやらないと思いますw
木屋さんのホームページ見ましたけど、まだ良心的な方じゃないかと思いました。もともと良い値段でお品を売ってる店なので簡単に買い替えを勧められないんでしょうけど。

しかし作業が面白いのは確かで、Aの素人リペアさんも作業に満足できたらたぶんハンドメイドナイフが作りたくなるんじゃないかな(^^


> 使った接着剤はセメダインのEP001です

弾性接着剤、面白そうですね。コーキング剤みたいになるのかな?
耐熱性の幅広さが何より魅力的です。食洗機に突っ込んじゃうお客さんけっこう多いので。
いちど試してみます。

御返答ありがとうございます

お忙しい中御返答ありがとうございました。何とか接着剤も固まり、はみ出した物を削って個人使用として使えるようになりました。すきまの肉減りした所はヒノキの薄い板で柄の形に成形して作りました。ひのき=風呂=水にに強い。素人考えですが…

耐用年数は柄の地金の状態から今度ガタが来たら終わりだと思うので覚悟はしています。
出来上がった感想は、意外と出来てしまって驚いています。好みの木材を買ってきて柄づくりにはまりそうです。

修理しようとおもったのは、近所に修理ができるところがなかったのと刃物を持って修理に行ったとき(用心深いかもしれませんが)警察官に職質されきっと厳重に梱包していても修理に持っていくと言っても聞いてはくれないと思ったのと、日本橋の○屋の製品なのでもったいないからで。でもそこのHPを見たら修理は外部発注で一か月以上かかるとかなんとかと書いてあってちょっとがっかりもしました、老舗なのに。

修理してみると大手製造販売店があまりやりたがらないのもわかりました。割に合いませんよねこの修理は。開けてみて、ぼろぼろ、溶接か切り出して中子を制作それをするなら新品買ってもらったほうがいいですもんね。

このような修理は刃物を愛する、個人で営業されている職人さんでないとできませんよね。ブログからも刃物への愛情がひしひしとかんじられます。これからもブログで勉強していきます。

追伸
使った接着剤はセメダインのEP001です

Re: No title

コメントありがとうございます。
更新頻度少なくてすみません(^^;

スペーサーはどんなもの使ったんでしょうか?
隙間が残るとあとで水が溜まるかもしれない。ナイフ用スペーサーは吸水する物があるとか。その点金属パテは良かったのではと思っていますが。
自分のだとこれから気をつければいいんだけど、お客さんのだと直してもまた同じ使い方をする可能性を念頭に作業しなければいけないのでいろいろ考えてしまいますが。

完成したらぜひご報告ください。

No title

いつもブログで勉強させてもらっています。洋包丁の柄の修理を素人ながらしてみました。さびで膨張した柄を一念発起で…作業工程はだいぶ肉やせしていたのですが腐っておらず薄い板をスペーサーとしていれてオリジナルの柄も割れずに取れたのでそのまま利用。エポキシ接着剤にべとべとになりながらクランプを締め上げて完全硬化する明日まで次の工程は中断です。成功するかな…
お忙しいかと思いますがブログ更新楽しみにしています。
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