片刃の牛刀

片刃に研いだ洋包丁が、ときどき研ぎに出てくる。

牛刀や三徳包丁といった洋包丁は、普通は、もともと両刃である。英語でDouble bevelという。

初めから片刃の洋包丁も販売されている。
杉本、ブライト(片岡刃物)、MACなど。
杉本とブライトは両刃も片刃も売っている。MACは新品で両刃のものを見たことがない(MACの包丁自体あまり見る機会が無いのだが)。


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写真の包丁は、奥から、
木屋 NO6スウェーデン鋼240mm牛刀(炭素鋼)
有次 210mm牛刀(炭素鋼)
釜浅商店 150mmペティナイフ(ハイス鋼)(これは自分の包丁)

いずれも、はじめは両刃だったものをあとから片刃に修正してある。
新品の両刃包丁を片刃にしてほしいという依頼を受けることもある。(ペティナイフは私が修正したもの。)
持って来るのは、調理センターなどで働いているや料理人さん。またはそいういう人から譲り受けた人。


片刃のメリットは、

・野菜がまっすぐ切れる(端から刻む場合)
・研ぎやすい
・刃が鋭角なので切れ味に勝る

といった点。


片刃と両刃の特性は以前図説した
同じことだが、大根を切る写真で再度説明してみる。

まず木屋の牛刀。
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右面が主に斜面になっている。(左面も多少傾斜しているが)
これを下に押し下げると、右面は大根が切り離れていくから抵抗を受けない。左面はほぼ平らなので抵抗を受けない。結果、まっすぐ切れる。

もしこの包丁で大根の端ではなく真ん中あたりを切ると、右の斜面だけ抵抗をうけるので、斜め左に刃が入っていく。


一方、釜浅商店のペティナイフ。
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左面が斜面になっている。
これを下に押し下げると、左面に抵抗を受けるので・・・・

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こうなる。
真ん中付近で切っても同じようになる。


このペティナイフは左利き用の間違った刃付けなのかというと、そうではない。
右利きの私が使うために、わざとこうしてある。

なぜ刃付けが逆なのか?
ペティナイフは果物の皮を剥いたりするからだ。
リンゴの皮を剥くでも大根の桂剥きをするでもいいが、
右手に包丁を持ち左手に材料を持つと刃の当て方は逆になるのである。

木屋のいわゆる右利き用片刃の牛刀。

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釜浅商店の俗に左利き用片刃とされるペティナイフ。

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牛刀の方の刃付けでは、刃を食材に入れようと押し込むと、外に逃げてしまうのだ。
食材に当てている角度も違うことがわかるだろう。
皮を剥くにはペティナイフの方がずっと作業しやすい。
上手な人は包丁を食材に向けて押し込むのではなく食材を回して角度を一定に保った包丁に入れてゆくから、牛刀のような刃付けでも両刃でも薄くきれいに剥けてしまうのだが、どちらがやり易いかといえばペティのような刃付けだ。


ところで先の図説の記事のコメントでで左利き用を右手で使うことになっておかしいという指摘があった。
和包丁なら確かにそうだ。混乱させてしまっているのは遺憾である。
図を修正するか検討したのだが、洋包丁のチューニングを念頭に置いた図説なのでそのままにしている。
和包丁のひとはこのブログを見て包丁の形を修正することなどまず無く「おかしなこと書いたブログがある」と思うだけだろうが、洋包丁は実際に刃付けのチューニングの参考にする人がいるようだからだ。


右利き用の薄刃包丁は上の牛刀と同じ面が斜面になっている。
しかし問題にならない。

なぜかというと、小刃がついていないからだ。

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上の面も下の面もビシっとまっすぐ。(ちなみに下が表で上が裏)
洋包丁のような段刃になってない。

桂剥きに使う薄刃包丁に二段刃はご法度とされるのはこのためである。二段刃に研いで小刃をつけると上の牛刀と同じになる。
刃持ちを良くするためにごく僅かに糸刃をつけたり、切り抜けを良くするために心もち蛤にすることはあるけど、洋包丁のような極端な小刃はつけてはいけない。出刃包丁や刺身包丁ならいいが、薄刃はダメ。

1万円以下ぐらいの安い薄刃包丁にはかなりエグい二段刃の物がある。
研ぎ卸してほしいという依頼がたまにあるが、手研ぎでは泣きそうになる作業。
暇なときはやらないでもないが、できればメーカーに依頼して頂きたい。
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Re: No title

お役に立てて頂いたのであれば光栄です。
コメントありがとうございました。

> ありがとう。今朝、馬鈴薯の皮むきをしようとしたときに、無意識に左刃ペティーナイフをてにしていた。この記事を拝見する前なので、左刃ぺティーを仕舞い何時もの三得に代えたのだが、抵抗が強くて剥きにくかった。これからは、左刃ぺティーを皮むきに使ってみたいと思います。

No title

ありがとう。今朝、馬鈴薯の皮むきをしようとしたときに、無意識に左刃ペティーナイフをてにしていた。この記事を拝見する前なので、左刃ぺティーを仕舞い何時もの三得に代えたのだが、抵抗が強くて剥きにくかった。これからは、左刃ぺティーを皮むきに使ってみたいと思います。
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