ゼンゼ! (SENSE)

世界の果てまでイッテQ!というテレビ番組でお祭り男の宮川大輔がオーストリアの「カマ祭り」に出場していた。
牧草を大きな鎌で刈るスピードを競う大会だ。
http://www.ntv.co.jp/q/oa/20140720/01.html

そこで「ゼンゼ」という刃渡り100センチもある大きな鎌が使われていた。

死神のイラストによく添えられているようなでっかい鎌だ。
RPGの武器みたいな架空のものではなく実在する道具であることに驚いた。

ゼンゼというのはドイツ語で、欧米ではよく知られた一般的な道具のようだ。

大会の伝説のチャンピオンが宮川大輔のゼンゼを研いでくれるという場面で、

アンビルの上に刃を置いてハンマーで叩いていた。

叩き方はカンナの裏出しのような感じだが、合わせ刃物の地鉄を叩いて曲げているのではなく、刃先を直接コンコンと叩いているのである。

なにしてるんだ?
冷間鍛造効果で硬度を上げているんだろうか。
直に叩いても割れないということは、硬度が低いことは間違い無いが。


ゼンゼを販売しているドイツのショップを見つけた。
http://www.sensenwerkstatt.de/5.html

草用ゼンゼや穀物用ゼンゼなどいろいろ種類がある。
長さ1メートルの物でも60ユーロ弱だ。ユーロ/円140円でも8400円だから、1メートルもある刃物にしてはムチャクチャ安い。マグロ包丁は70センチぐらいのもので20万円ぐらいはするし、日本刀だと60センチ強ぐらいだが新品の刀身だけで50万円はする。

日本刀は別格にしても、刃渡りの長い刃物の値段が高くなるのは、焼き入れが大変だからだ。
普通の炭素鋼は750度ぐらいから急冷するのだが、長い刃物の端から端まで全体を同じタイミングで750度に熱しなければならない。冷却前の温度が高すぎても柔かすぎてもうまく焼きが入らず、硬度が低くなってしまうので、温度ムラは刃の硬さのムラになってしまうのだ。
手作り刃物の熱処理を請け負ってくれる専門業者でも長い物は断るところが多い。

レーザー焼き入れや高周波焼き入れといった方法では、長い鋼材でも端から順に焼き入れすることができる。工業用の長い鋼材はそういう技術で熱処理されているものがよくある。
表面しか硬くならないので研いで最後まで使えないのが欠点だが、コスト低減のためには良い方法だろう。

しかし古くから使われているこのような鎌にそんな現代技術が使われてきたわけがなく、いったいどのように熱処理されているのか、或いはそもそも熱処理されていないのか、興味があるが、よくわからない。素材の金属もわからなかった。

ともかくこんな大きな刃物が1万円以下ということは、日本の鎌と同じような焼き入れはされていないだろう。


ショップサイトの下の方に、番組で鎌の先を叩いていたハンマーがあった。Dengelhämmerというらしい。
Dengelnを日本語訳してみると「ピーニング」と出てきた。

なんだっけピーニングって?角質処理?それはピーリングか?
日本語では一般的じゃないようで、weblioで検索すると英語の解説が出て来た。
それによると、予想通り、ハンマーによる打撃やブラストショットなどで金属表面を加工する作業で、硬化効果がある、ということだ。

専用の作業台を売ってる店もあった。
http://www.schmiedetrubschachen.ch/schmiede/sensen/dengelstock_mit_amboss/index.html

専用のハンマーや作業台まで市販されているということは、この大鎌は昔からユーザーがハンマーで刃先を叩いて冷間加工しながら使う物なのだろう。
おそらく刃が柔かいので多用したり硬い物に当たっても欠けるのではなく曲がるのではないか。それをハンマーで刃先を叩いて薄くして修理する。そういうことではないかと想像した。

鎌用の砥石も売っていた。
Sensenwetzsteineはグーグル翻訳だと「鎌」としか出てこないが「sense」が大鎌で「steine」が石だから鎌砥石のことだと思う。画像検索しても鎌砥らしきものが表示されるし。天然砥石もある。砂岩や泥岩などの中砥レベルまでの砥石は世界中で産出するようで、ヨーロッパでもアジアでもよく見かける。
日本の鎌砥も似たようなものだが、ここの物はラグビーボールのような曲面の物が多い。内反りしている鎌の刃を研ぐ砥石としてはこちらの方が適当だろう。私も鎌砥はカマボコ状に整形して使っている。


もしイッテQがもう一度この大会に参加するなら、マグロ包丁も作っている福井の清水刃物さんあたりに頼んで、焼き入れした刃をつけたゼンゼを作ってもらって持参するといいんじゃないだろうか。手越裕也ならいい成績が出せるかもしれない。性能は段違いのはずだから宮川大輔でもかなりいいとこ行けるかもしれない。
なにより日本の鍛冶屋さんに鍛造のゼンゼを作ってもらって、ヨーロッパの人達にびっくりしてみてほしい。

sense600_20140722085644fd2.jpg
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Re: やっぱりあの国の物作り

Aの素人リペアさんこんにちわ。
つくったのがどこの国の誰かということは関係無いと思いますが、作り手の思い入れが感じられないモノはザンネンですね。
包丁はナイフやナタや刀みたいに頑丈じゃなくていいので中子はちょっとぐらい細くてもいいかなと思いますが、見た目を立派そうに偽装されるのは、それが判明するとゲンナリします。

東京は猛暑一段落しましたが、ヘバらないようお互いにがんばりましょう。

やっぱりあの国の物作り

おひさしぶりです。片刃仕上げだと切れ味は最高ですよね。

今日は少し驚いたのでコメントしました。もらった包丁セットなのですが、よく料理人の名前だけが入った景品級の物です。これの柄を修理しようと割ったところやはりというか笑ってしまいました。食い物をこれでもかと粗末に扱う国のものは工業製品でさえこのレベルなのだと、もはやこれまでというしかありませんでした。

金属部は肉抜きされあなだらけ、(バランスが超悪かった原因がこれでした)プラ製柄も塊ではなく肉抜きされて空間だらけ。

ボルトで固定されていたとおもったらそれはダミー。割ってみたら、ねじで止まっていたのですが、ボルトに見えたのは、金属製のふたみたいので外見上そのように見えていただけでした。

今、エポキシで接着して、竹の菜箸から削り出した目釘で接着固定して固まるまで24時間放置です。

非常時の予備役として修理しましたが接着剤がもったいなく感じてきました。

本気で直したい物があってその前に練習と思ってやってみたのですが。修理してがっかりすることもあるんだとおもいました…

暑い中長文失礼しました。


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