刃物油のこと

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機械に油を注す主な目的は、潤滑と防錆だと思うが、刃物に潤滑は必要無いので、刃物油の主目的は防錆だ。

水と酸素が無ければ鉄は錆びないので、水か酸素のどちらかを防げばいい。
油は酸化するので酸素は防がないと思うが、水をはじくので防錆能がある。

油が皮膜として鉄の表面に付着しているかぎり防錆効果が期待できるが、油の中には乾くものがある。
油が乾くとサラサラになるのではなくベタベタになる。換気扇に付着した油が乾燥しつつある油だ。完全に乾燥すると樹脂のように固化する。

油は乾きやすさによって、乾性油、反乾性油、不乾性油に分類される。
乾性油は油絵の具に使われるテレピン油だ。多くのサラダ油は半乾性油である。
植物性油の中で不乾性油は、椿油、オリーブオイルなどがある。椿油は匂いも無いので古来刃物油に利用されてきた。

機械油に使われる鉱物系の油はほぼ不乾性油だ。
鉱物系の防錆油の方がコストが安く機能的な物が多い。
刃物油として販売されている油も、ほとんどは鉱物系の油である。

椿油や丁子油と称して販売されている油も、鉱物系の油が添加されている物が多い。紅椿化学工業所や黒ばら本舗やAZが刃物用椿油を販売しているが、成分が明記されていないものも、価格から、椿油は配合されている程度だと考えられる。

多くの鉱物系油は、可食かどうかわからないという問題がある。
今の日本で最も多く身の回りにある刃物は包丁なのに、刃物油と称して販売されている油は包丁に使って良いかどうかわからないのである。
包丁に使用する場合は使う前に良く洗い流すこと、といった注意書きのある刃物油もある。
成分表示も注意書きも無いものもある。
よく洗い落とすことが前提なら、別に刃物油ではなくミシン油でもいいんじゃないかと思ってしまうのだが。

無害であることを明記しているのはAZの刃物油だ。ベビーオイルや食品機械用の油と同じ流動パラフィンが使われている。


食品調理に使う刃物でなければ可食性は気にしなくていい。
庭仕事に使う植木用のハサミや鎌は水滴が付着することもあるので水置換オイルがお勧めだ。配合された界面活性剤が油の中に水分を取り込むので、細かい隙間に残った水分も除去してくれる。
ただし水置換オイルには長期防錆性能が良くないものもあるようだ。
長期間保管する場合は、防錆用の油と明記された油が良い。

株式会社エーゼットは製品情報を詳しく開示してくれているので信頼できる。
私は、炭素鋼系の錆びやすい包丁やナイフ、キッチンハサミにはAZの刃物専用錆止油、裁ち鋏や刈込み鋏には同じくAZの水置換オイルを使っている。

一般の家庭でしばらく使わないかもしれないハガネの出刃包丁や刺身包丁を保管しておくような場合は、オリーブオイルがいい。
不乾性なので普通のサラダオイルより皮膜が長持ちする。
多少匂うが健康に害が無いことは確かで、入手しやすく、値段もさほど高く無い。

本稿は防錆油の専門家ではない私が個人的に調べた結果なので、間違っている点があるかもしれない。見つけたらご指摘いただきたい。
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ジャンル : 趣味・実用

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有難うございます

実は人様のブログにコメントというものをするのが初めてでして 怒られるやろか?意見いただけるやろか?とドキドキしておりました。
またこれからも勉強させていただきます。
有難うございます。

Re: 勉強させていただいております。

建國さんコメントありがとうございます。

椿油は純粋なものなら大変いいですね。

ただ、たしか紅椿化学工業の「刃物御手入油」には、包丁に使う場合は使用前によく洗い流すようにといった注意書きがあったように思いますし、黒ばらの「刃物椿」は成分表示がなく値段から100%椿油とは思えません。
自分で使うだけなら、たとえ正体がミシン油でも少しぐらい口に入ったってどうってことないでしょうけど、お客様の包丁に使うのは憚られます。
個人レベルで検証できることじゃないので、刃物油と称して販売しているものは、メーカーさんが調理器具に使われる可能性を考慮してはっきり表示しておいてほしいと思うのです。

ややこしい商品が多いので「椿油はいい」と書くと誤って純粋な椿油じゃないものを買ってしまう人が必ず出てきてしまうと思うんです。

丁子油のことはよくわかりません。速乾性なのですぐ効果が薄れてしまう気がするのですが。ナゾです。
実戦では刃物油がついてても切れ味が損なわれるわけじゃないからほとんど支障は無いと思うし、それより錆びて鞘から抜けないなんて事態になる方が致命的じゃないかと想像されます。
関が原の合戦で雑兵が持ち歩く刀じゃなくて、大名が床の間に飾っておく伝家の宝刀に使う油なのかもしれません。

またお気軽にコメントしていただけるとうれしいです。

勉強させていただいております。

はじめまして。私 料理を生業としております。包丁油なのですが確かにサラダ油だと後でギトギトになりますしホームセンターなどにある油類を食に使う道具に使う訳にはいきません。オリーブオイルも少し香りが気になってしまいます。そこで色々と試してみたのですが薬局か化粧品売り場にて販売されてある【大島椿】とゆう椿オイルが良いのではないかと思いました。頭髪用となってありますが100%椿オイルで無味無臭になるまでに精製されてされてあります。パスタや炒め物などに使用して食しましたが美味しくいただけました。私如きの舌ではありますが健康や衛生的にも問題無いと感じます。手製の油壺に含ませてあまり出番の少ない寿司切り包丁などに撫で付けるております。
それと勝手な想像なのですが揮発性のある丁字油は日本刀が活躍した時代にいざとゆう時に揮発していなければ困るから日本刀の手入れに使われたのかな~と思ったりしております。
勝手な事ばかり書きまして失礼いたしました。何時も勉強させていただいております。
有難うございます。

Re: No title

柿ピーさんコメントありがとうございます。

そうですね。
長くても1~2ヶ月程度で油を塗りなおすなら神経質にならなくていいと思いますが、半年とか1年使わない可能性もあるなら、不乾性油がいいと思います。ベタベタになると洗うのも面倒です。

No title

黒打ちの白一柳包丁の保管にサラダ油塗って
古い電話帳を数冊束ねた簡易包丁差しに刺しているんですが
オリーブオイルの方が良いんですね。
今日から変更しておきます。
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