刀の刃文

刀の刃文はどうやってできるのか。

刀の刃文は合わせ包丁のように物理的に異なる種類の鉄を接合した境目の線では無い。
刀も異なる鉄を組み合わせて作られているのだが、主な刀の複合構造は、中心に柔らかい芯鉄(しんがね)が仕込まれていて周囲を硬い刃鉄(はがね)が覆うという形になっている。つまり表面は一枚の同じ質の鉄でできているわけだ。
だから単純に熱処理すると表面全体は同じ硬さになってしまう。
合わせ包丁の刃境線と同じ理由で文様ができるわけではないのだ。

刀は、焼き入れの工夫によって硬い部分と柔らかい部分に分けられている。

細かい説明は端折るが、刀の表面の硬さの違いは、「土置き」という工夫によって硬度の違いを生み出しているのだ。
刃物は加熱してから急冷する「焼き入れ」によってはじめて硬くなるのだが、このとき、峰側に分厚めに土を盛った状態で行うと、峰側には焼きが入らず硬くならないのである。

土置きに使う土を“焼き刃土”という。
刃文の形は基本的に焼き刃土をどう置くかで決める。合わせ包丁の刃境線のように鍛造の結果よって自ずと現れるものではなく、刀匠がどのような刃文にするかを決めて描くものなのだ。

刃文の種類はまっすぐな直刃(すぐは)と乱れ刃に大別されるが、刃元が乱れ刃で先に行くに従って直刃になっているものがあったりするし、乱れ刃には湾れ刃(のたれば)や互の目(ぐのめ)や濤瀾刃(とうらんば)、皆焼(ひたつら)などさまざまな種類がある。

刃文を描き出す焼き刃土の調合方法や土置きの方法はそれぞれの刀工の流派に営々と伝えられてきた秘伝で、同じようにやれば必ず再現できるわけではないし、他人が簡単に真似できるものでもない。

何百年もの歴史の中で培われ、刀工が数ヶ月の時間をかけて作刀し、いまや世界中でその芸術性が認められていて貴重なものは何億円もの価値になる日本の刀剣の、その芸術性の重要な部分を担うのが刃文である。

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これをあまり安直に合わせ包丁の刃境線と混同するのは、刀工の“思い”を想像してみてもやはり憚られるのである。
わかりやすいから別にいいじゃない、という一般の人の混用にいちいち訂正を加えるのは愚かしいと思うが、包丁屋などが宣伝文句に刃文という言葉を使っているのは軽薄に見える。刀工由来の包丁屋にあってはなおのことだ。

だから私は、合わせ刃物や割り込み刃物に現れる文様のことを特に刃境線と呼び分けているのである。
もちろん、包丁でも本焼き包丁にあらわれる文様は刃文で間違い無い。
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テーマ : 刃物
ジャンル : 趣味・実用

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