吉光 玉鋼の包丁

なんということもないおばさんが、変わった包丁を持ってくることがよくある。

001_20151113085534a9a.jpg

九州長崎の鍛冶屋吉光さんの、玉鋼の包丁。

「九州の旅行で、刀と同じような作り方の包丁で何本かまとめて作って、残ってるのがあるから買ってくれと言われたのよ。」

とのこと。

「刀と同じ」的な包丁の宣伝文句はふだんの私の耳にはそよ風のように通り過ぎてゆくだけなのだが、刻印に「玉」の一文字が。

002_2015111308553581a.jpg

そういえば九州の方で、自家製炉でたたら吹きで玉鋼を作ったという鍛冶屋さんがあったけ、と思い出した。
http://www.yosimitsu.com/tataraseitetsu.html

玉鋼というのは、砂鉄を原料にして、たたら吹きという原始的な製鉄方法で製鉄した鉄の中で、刃物を作るために特に品質の良い部分を選り分けた部分である。たたらで作った鉄がみんな玉鋼というわけではない。
手間やコストがすごくかかるので普通の刃物鋼の何十倍だか何百倍の値段になる。
鉄にとって悪性不純物であるリンや硫黄などがあまり含まれていない良い鉄だと言われている。

しかし現代の鉄より何十倍も何百倍もよく切れる包丁が作れるわけではない。
現代の鉄で作った包丁の方がモノがいい可能性もある。

日本刀は現代刀でも必ず玉鋼で作られるのだが、これは、法律で決められているからだ。
ほかの鉄で作った刀はいくらきれいでも性能が良くても登録証を発行してもらえず、ふつうの人は日本では所持できない。
また現代の鉄とちがって玉鋼は内部の成分にムラがあるため、何度も折り返し鍛錬して炭素の分布や量などをそろえてやる必要があるのだが、そのせいで、層状の鉄の肌の景色が現れる。
これは刃文と違って現代の鋼を本焼きにした包丁には現れない。
いわゆるダマスカス鋼の模様が似ているといえば似ているが、ほとんどのダマスカスが層状の模様を見せること自体を目的にして創作されているのとは違って必要的にできた文様である。

さて。

もしかするとこの包丁も日本刀と同じように本焼きなのかなと研いでみたところ、

003_2015111308553601c.jpg

004_2015111308553848d.jpg

割り込みのようだった。
割り込みだけど、外側の軟鉄もたたらでできた軟鉄を折り返し鍛錬したものを使っているのだと思う。

この模様をきれいに目立たせるという刀の研ぎ師の技がどうにもマネできず、上の写真は画像処理でコントラストをアップして見せているのだが、実際の見た目はこんなかんじ。

005_20151113085540e51.jpg

鉄の肌を見せる研ぎはむずかしい。時間がかかる。

使い勝手はお客さんによると、

「使いにくい」

そうだ(^^;;

ペティナイフのようなサイズなのに分厚いのである。
私も磨いて飾る類の道具だと思った。
なんでしたらムチャクチャ使いやすいペティナイフと交換しましょうか、と提案したが、残念ながら却下された。


同じひとがいっしょに持ってきた五郎包丁。こちらは東北の包丁。五郎丸選手とはたぶん関係ない。

006_20151113085557724.jpg

008_201511130856004b9.jpg


砥の粉か何かで柄埋めがしてあって好感。

007_201511130855584f1.jpg


研ぐとすごく良い刃がつくのだが何か違和感が。
刃境線が無いのだ。
調べてみたところ、どうも全鋼のようである。
梨地を磨きあげるわけにもいかず、刃文があるかどうかはわからなかった。
どういうふうに焼き入れしているのかは謎である。
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

Re: No title

個人または企業を特定した批判のコメントは、発信者が明らかであるか(マスコミ報道など)、私自身が確認したものでないかぎり、許可しない方針です。
私が根拠のはっきりしない批判を無責任に拡散することになってしまいます。
残念ながら記者ではないので検証取材もできません。
悪しからずご了承ください。

ハサミについては、手研ぎにせよ機械研ぎにせよ知識のある店で研いでもらう必要があります。技術以前に知識です。
巧言令色鮮仁ですね。

Re: No title

サンダーってどんなのですか??
両頭グラインダーみたいなのですか?
ディスクグラインダーとか?

私も汚れてる包丁はゴシゴシ洗うのでプリントが貧弱なのは消えてしまうことあります。
手洗いだし、藤次郎のプリントはしっかりしてるのでそう簡単には消えませんけど。
機械でバフ掛けしたら消えるでしょうね。

私も消えそうなの洗うときは気をつけます。

しかし機械研ぎしかしていないひとってプリント消すだけじゃなく刃も削りすぎる傾向があるような気がしますね。

No title

包丁に有る銘って私は大切に思います。
たとえ安物の包丁でも出所が分かるし名も無きより愛着が出ます。
昨日移動研ぎ屋さんに藤次郎 DPコバルト合金鋼割込 口金付 三徳を
出した際、刃先と切っ先が欠けているから研いでと言ってやってもらったら気づいた時には銘板プリントを全て消し取られてしまいました。
包丁の裏表全面、峰と全てにサンダー掛けていました。
苦情をいうと今迄そんな事言う客はいないって開き直り。
無料でいいって言ったけど外で寒い中作業してもらったので
それは断り正規料金払いましたが。
私の思いは少数派なのでしょうかね?
切れ味は復活したけど気分は下がりました。

プロフィール

BROさん

Author:BROさん
東京都練馬区の研ぎ師です。
営業案内
ご依頼はこちら
ご意見・ご質問はこちら
ご利用頂いたお客様からのご意見ご感想はこちら

カテゴリ
最新記事
最新コメント
検索フォーム
QRコード
QR
リンク