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変わったダマスカス包丁。変わった剪定鋏。

積層鋼、いわゆるダマスカスの包丁は、側面の模様を傷つけると新品の時と同じような状態に戻すことが困難で、ムラになってしまう。
そのため昔はキライだった。
しかし、

・側面も研がないと切れ味は良くならない
・美観のために切れ味を妥協するのは本末転倒
・研ぐたびに時間やコストをかけて磨き倒すのは非現実的

といったことから、いちおうお客さんにはムラになりますよとお断りした上で、気にせずガンガン砥石を当てるようになった。
いまは少なくともキライではない。

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きれいに磨けるようになったというわけでは無いのだが、気にせずに研ぐようにしてみると、わりと好きでさえある。

積層鋼自体は何度も書いているかもしれないが、硬い刃鉄を両側から挟み込む軟鉄で、切れ味には直接関係無い。しかしダマスカス模様の様子で、刃体の厚みの具合がわかったりする。
積層鋼じゃなくても割り込み包丁なら刃境線である程度わかるが、積層鋼だと峰側に至るまで全体的な立体構造が把握できたりするのである。ブレード全体の厚みを調整するときにはけっこう便利なのである。

それから、包丁がどのようにつくられたのかという素性も推測できる。
こちらの記事にも書いたが、
http://hamonotogiya.blog75.fc2.com/blog-entry-372.html

たとえば関の孫六の旬はアメリカで大人気になって売れてるらしいが、模様がのたれ刃のようにゆったり曲がっていてあまりしっかり鍛造されていないことが見て取れる。
材料の積層鋼はバームクーヘンのように単に層状になっているだけなのでこれをハンマーで叩いたりして歪ませることによって模様が表れるのだが、この記事の旬のようにあまりしっかり叩いていないものはウネウネが少ないばかりでなく両側面を平行に研ぐとそもそも模様自体が刃先の斜面部分にしか出ないということになりかねない。
そこで、しっかり叩かなくても側面全体に模様を見せるために旬が選択した手段は、刃体を分厚くして刃先にかけて側面全体の傾斜を大きくするという方法だ。日本のふつうの三徳包丁や牛刀は八寸24cmぐらいのものでも鋼材の厚みは2.5mmが主流だが、旬は3mmとかなり分厚いのである。
分厚いと頑丈ではあるが「抜け」が悪く切れ味も鈍重になりがちだ。
だから、ヒーコラ言って厚みを削いでやらないと、私的に許せる切れ味にはならないのである。厚みを削いでやればふつうの包丁なみの切れ味になる。

しっかり鍛造した方が鉄の組織が緻密になって靭性(じんせい/=粘さ)が向上するらしいが、鍛造品と非鍛造品を研ぎ比べて顕著な違いを感じることは無いので、包丁という刃物にとっては実用の上であまり差は出ないんじゃないかと思う。

で、昨日ちょっと面白い包丁が。

龍泉の包丁なのだが、積層鋼で非鍛造、普通の厚み、という包丁。

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こんな感じになってしまう。
以前にも研がせてもらったことのある包丁なのだが、たぶんそのときは積層鋼ということに気づいていなかったと思う。

こうなると、何の目的でわざわざ地鉄に積層鋼を使っているのかよくわからない。
新品のときはもっと模様が目立っていたのだろうか。
そうだとしても、ナンダカナーという印象が拭えない。





別件。
昨日はもうひとつ変な刃物を研いだ。
写真は無いのだが、剪定鋏だ。

なんと、要ネジが逆ネジになっていたのだ。

逆ネジになっているのは、たとえば自転車の、足で踏むペダルの根元部分の「クランクロッド」と「クランクアーム」の左側の接続部分だ。これが、ふつうと同じ方向にネジが切ってあると、ペダルを漕ぐたびにネジが緩む方向に力が働いてしまうのである。
だから、ネジを切る方向が逆になっていて、ふつうのネジだと緩む方向に回すとネジが締まるようになっている。右側はふつうのネジの方向でいい。
両頭グラインダーも同じ理屈で片方は逆ネジになっている。

剪定鋏の要ネジが逆ネジになっているものは初めて見た。
剪定鋏は刃体自体に雌ネジの山が切られていて、ボルトで締めて固定するのだが、そもそもガッチリと締め込むものではない。少し緩めに締めないとハサミが開閉できないのである。開閉に支障が無くガタが無いほど良い塩梅に締めて、反対側に飛び出したボルトの頭を受けのナットでしっかり締め込んで固定するという仕組みになっているのだ。
だから剪定鋏に限っては使っているうちにネジが緩んでしまったようなものを見たことが無い。もちろん逆ネジなんかじゃないふつうのネジ山のものでだ。
ほかの多くのハサミは本体に雌ネジの山が切られていないので、ナットを強く締め込むことができず(強く締めるとハサミのかみ合わせがきつくなってしまう。)、緩んでしまう場合がある。おそらく逆ネジにしても緩むものは緩むだろう。緩み防止のためにボルトがテーパー状になっているものもあるが、修理のために開け閉めを繰り返すと緩みやすくなってしまう。新しいネジの入手が難しいので、そういうものは弱強度のネジ止め剤で固定を計っている。

それでこの剪定鋏、お預かりした段階でなぜ研ぎに出したのかわからないぐらいキレイで、ネジも錆やヤニで固着している様子もなかったのに、TB1801を吹いて万力で固定してネジ山が切れそうになるほど力を入れてもウンともスンとも言わないので、もしかすると自分の頭がボケて締める方向を間違えてるんじゃないだろうかと疑って逆向きにちょっと力を入れてみたら、あっさり緩んでくれたという次第であった。
壊さなくて本当に良かった。

剪定鋏のネジが外れなくて困っている人がいたら、いちど、逆ネジになっていないか試してみてください。
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テーマ : 包丁研ぎ
ジャンル : 趣味・実用

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Re: 金型鍛造動画

おーなるほどー。
〝職人の技”的な動画にこういうの載せちゃうセンスが、ぼくとは合いません。
藤次郎はそんなことしなくていいから、全般的にもうちょい薄くしてもらいたいです。



> 冷間じゃ無かったですが、
>
> https://youtu.be/szvt5W4QAck
>
> 金型でガチャン、研いでサンドブラストするとうねうねが出てくるといった具合。
>
> もう一本冷間鍛造の動画があったはずですが、だいぶ前なので見つけられませんでした。すみません。

金型鍛造動画

冷間じゃ無かったですが、

https://youtu.be/szvt5W4QAck

金型でガチャン、研いでサンドブラストするとうねうねが出てくるといった具合。

もう一本冷間鍛造の動画があったはずですが、だいぶ前なので見つけられませんでした。すみません。

Re: ダマルカス包丁

ダマスカスは模様に神経質にならなければ、刃物として悪いものはほぼ無いと思いますよ。

型抜きじゃなくて、金型ガッチャンでうねうねを作るんでしょうか?
きょうみあるので動画あったら紹介してください。




> このブログとYoutubeのおかげで、ダマルカル包丁を買わずに済んでおります。
>
> 利器材の鍛造も、金型で冷間プレスでガチャンと一発というのを見てしまいました。金型でうねうねが完成w 槌目も金型。なんだかなという感じ。
>
> ちゃんとしたものもあるのでしょうけど、見極めが難しいですが、何か方法はありますか?

ダマルカス包丁

このブログとYoutubeのおかげで、ダマルカル包丁を買わずに済んでおります。

利器材の鍛造も、金型で冷間プレスでガチャンと一発というのを見てしまいました。金型でうねうねが完成w 槌目も金型。なんだかなという感じ。

ちゃんとしたものもあるのでしょうけど、見極めが難しいですが、何か方法はありますか?


Re: No title

> 見せるための積層鋼でないとすると、積層する事で剛性や弾性の向上の可能性を考えたのでしょうか。一般には美観のみで機能的な効果はないと言われてますが。

重房(包丁の)なんかは積層鋼にすることで焼き入れのとき反りができにくくしているのだと、木屋の会長さんが書いた「刃物のはなし」に書いてありました。積層鋼に硬めのハガネと軟鉄が使われてるとかなんとか。片刃特有の問題なので割り込みだと関係ありませんけどね。

なお、ぼくが持ってる佐治武士のVG10割り込み積層鋼のナイフは、刃鉄のVG10はだいじょうぶなんだけど軟鉄の積層鋼部分の方に錆が浮いてきます。ナンデヤネン(笑)

この包丁の軟鉄の積層鋼は、特に意味は無いと思います。
なんかするつもりで片側4層積層鋼の割込み素材を仕入れたけど、何らかの予定が狂って使わなくなったので、そのまま非鍛造の削り出し包丁として製品化して販売したんじゃないかな?というような印象です。

No title

人造+研磨剤ですか。
確かに曇りやムラはあるかもしれませんが、写真で見る限り銘のある面と同等に模様がはっきり美しく出ているので十分ではないでしょうか。

龍泉は古い物ですか。確かにハンドル周りなど使い込まれた感じはありますね。
>今みたいにオシャレ包丁たくさん展開
今の方が商業主義的かもしれませんね。
見せるための積層鋼でないとすると、積層する事で剛性や弾性の向上の可能性を考えたのでしょうか。一般には美観のみで機能的な効果はないと言われてますが。

Re: No title

いがさんこんにちわ。

堺孝行は天然砥石とか使ってません。人造の8000番か10000番まで研いでから研磨剤で拭いたと思います。
光の加減を変えてよく見ると細かい傷はあります。
もともとはムラなくピカピカだったんです。こんなふうにムラができますよ、というつもりの写真です。

龍泉はけっこう古い包丁じゃないかと思います。今みたいにオシャレ包丁たくさん展開して有名になるより前の。
これで1万円以上とかだっと如何なものかと思いますが、5千円ぐらいなら普通の包丁でしょう。値段がわからないので批判するものじゃないと思います。機能的に変なことはありません。
ただ、こういうふうに積層鋼を使っている意味はやはりまったくわからないですw




> 堺孝行はBROさんが仕上げられたものですか?
> 切刃の模様も非常にきれいに出ており美しいですね。
> どんな砥石で仕上げはされたのでしょう。
>
> 龍泉の積層鋼は本当にイミフですね。
> 模様もかなり見えにくいですし、単なる平行線で美観にも寄与していない。
> 本当に単なる利器材を切出してハンドルと刃を付けただけ。
> 人気のお高いメーカーと記憶してますが。。
> 暖簾商売になり下がったのでしょうか。

No title

堺孝行はBROさんが仕上げられたものですか?
切刃の模様も非常にきれいに出ており美しいですね。
どんな砥石で仕上げはされたのでしょう。

龍泉の積層鋼は本当にイミフですね。
模様もかなり見えにくいですし、単なる平行線で美観にも寄与していない。
本当に単なる利器材を切出してハンドルと刃を付けただけ。
人気のお高いメーカーと記憶してますが。。
暖簾商売になり下がったのでしょうか。
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