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ヒツ鉈

このまえ「ヒツ鉈」というものを研ぐ動画をアップした。



これは、使い勝手を試してみたくてヤフオクで自分で購入したものだ。

ヒツ鉈の「ヒツ」というのは、柄と刃体を接続する穴の部分のことである。「櫃」だろう。
丸ヒツと角ヒツがあって、地域によって違うらしい。作り方にも違いがあるようだ。

あとで調べてみると、これはヒツ鉈というより「柄鎌(エガマ)」と呼ぶ方がふさわしいような気がする。

ヒツ鉈は刃体の部分がもっと鉈らしい形をしている。
先端に突起のついたトビ鉈と比べてみると、

DSC03425 (1)

この柄鎌は刃線が大きく内反りしていることがわかるだろう。
真ん中のものも少し内反りになっているが、柄鎌ほど顕著ではない。ちなみにこれは越前鉈である。
右端がオーソドックスなトビ鉈で、刃線はストレート。けっこう研いだので元の形がどうだったのか自信が無いが。
ちなみにトビ鉈には刃線が出っ張ったものも見かける。実に研ぎにくそうだ。

内ぞり気味の鉈はあるが、柄鎌ほどあからさまには反っていない。
柄鎌の刃鉄は、突起の下の部分にまで伸びている。偶然そうなったはずは無く、あきらかにそこまでハガネ伸ばして刃物として使用するために伸ばしている。
この点において、越前鉈のように刃線が内ぞり気味の鉈の先端に突起がついたものとは構造的に異質だと言えるのである。

もっとも、柄鎌とヒツ鉈という言葉は、必ずしも厳密に区別されているわけではない。
地域ごとに呼び名が違う場合が多いようで、この手の形の鉈を全て「ヒツナタ」と呼ぶ地域や「エガマ」と呼ぶ地域があったりするのだ。
もっというと、少なくとも昭和初期あたりまでは「ヒツナタ」型と「エガマ」型の両方が同時に使われている地域なんて無かったのではないかと思う。鉈というのは比較的多用途に使える携帯刃物だ。山仕事に柄鎌とヒツ鉈の両方を持って行くとは思えない。
つまりある地域にはヒツ鉈という言葉しかなく、別の地域には柄鎌という言葉しかない、といった事情があったと考えるのだ。

ヒツ鉈と柄鎌という言葉を使い分ける必要があったのは、全国各地に鉈や鎌や斧を販売していた土佐や越前だろう。形を区別して定義しなければ注文が受けられない。

むらの鍛冶屋」という本によれば、土佐の鍛冶屋は明治から昭和初期にかけて日本全国に鉈や斧や鎌や鋸を出荷していたそうだ。ご当地の形でなければ受け入れられなかったようだ。交通が発達していなかった時代で、四国各地は自転車で回って地域ごとの山林業者を回って刃物を勉強し、作った刃物は荷車に乗せて手で引いて足で売って回ったというからすごい。四国以外の地域にも出向いて、地域ごとの刃物を作って出荷していたようである。
ところで、いろいろな形の刃物を作っていたせいなのか、いろいろ調べてみても「土佐型」という形の鉈や斧は見聞きしたことが無い。土佐で作られた刃物は北海道から九州まで全国に出回っているようなのだが、土佐の独自の形の刃物が全国で受け入れられて売られているわけではないのである。

さて話を戻すが、たとえば土佐打刃物協会のホームページで「伊那鉈」と「諏訪鉈」が別の形の鉈として紹介されている。ところが信州打刃物協同組合のホームページでは土佐で「伊那鉈」と紹介されている形が「諏訪鉈」と紹介されていたりする。どちらが正しいのだろうか。
この場合は強いて軍配を上げるならご当地である信州側になるだろうが、土佐における認識が間違いだと言えるわけではない。土佐ではそういうふうに区別していて、土佐においては正しいとも言える。
ヒツ鉈と柄鎌というようなものになると、どちらかに軍配を上げること自体が間違いでは無いかと思う。

しかしヒツ鉈と柄鎌に関しては、上に挙げたような構造的な違いがあるようなので、私としてはヒツ鉈と柄鎌はとりあえず区別して呼ぶことにする。
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