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硬度の違いによる損耗状態の特徴

薄く研いだ両刃包丁がこんなふうになるという典型例。

上は濃州兼守という刻印の全鋼量産三徳包丁。
下は實光の割込み包丁。
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兼守の拡大

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鋼材が柔らかいのでぐにゃぐにゃ塑性変形している。


實光の割込み包丁。

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曲がらずに欠けている。

なお、この状態での使用感をお聞きしたところ、大根やニンジンは十分切れるのだが、トマトが切れなくなった、とのことであった。

薄く研がなければこういった欠けやヨレは生じにくい。
欠けやヨレが生じないままで刃先が押しつぶされる乃至すり潰され、分厚く鈍角になっていき、欠けてはいないけどこの包丁より切れ味は悪いくなる。

トマトの切れ味を回復させるためなら、欠けが無くなるまで研ぎ減らす必要は無い。
包丁はハサミやカミソリやカンナとは違うので欠けがあっても支障無く切れる。
しかし商売上の体裁の問題により欠けたまま返すのは憚られるので、欠けが無くなるまで研ぐ。
すると包丁の寿命はけっこう短くなる。
これは薄く研ぐことの重大な問題点だ。しかし解決策は思いつかない。

ちなみに自分の包丁は研ぎ減らすのがもったいないので欠けたまま使っているものもある。

「欠けを残したままでも切れますよ、無くなるまで研ぐと寿命短くなりますよ」

と、お客さんにもお話しすることがあるが、「残したままで」と言ったお客さんは片手で数えるほどしかいない。

「もっと鈍角にすれば切れ味は落ちるけど欠けないようになりますよ」

ともお話しすることがあるが、いまのところほぼ全員に「(欠けても)前の研ぎ方でいい」と言われている。
不服がある人はもう来てくれていないのかもしれないが。
しかしそもそも刃を薄く研ぐようになってきたのはその方がお客さんのレスポンスなりリピート率が良いためである。


なお、この包丁は昨年の暮れに研いだということなので8ヶ月ぶりぐらいの研ぎ。
欠けの原因は「桃の種かなあ?」とおっしゃっていた。
乱暴に使わなければこんなふうにはならない(私の包丁が欠けたのは落としたため)。
寿命が短くなるといっても2~3年で半分の大きさになるわけではない。一般家庭なら10年ぐらいは持つだろう。
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テーマ : 包丁研ぎ
ジャンル : 趣味・実用

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Re: 曲げと欠け

自分の包丁の性能とか耐久性の限界がわかってきて、使い方の加減とか研ぎ加減が調整できるようになっていけばいいんでしょうね。


> ここまでひどくはないですが、両方の症状を経験しています。
>
> 研ぎに出した柔らかい奴は、写真のように曲がったり、押しつぶされたようになって切れなくなり、VG10はもっと小さいですが欠けました。
>
> 糸刃をつければどちらも症状は変わらないですが、刃持ちがよくなり、症状も小さくなります。ただ、あまり大きな糸刃というか段歯にすると切れ味の鋭さがなくなるので、具合が大事ですね。やっと最近分かってきました。
>
> で、研ぎで欠けを全部無くすか?無くします。大体月一で研ぐのですが、10年は持ちそう。やっぱ、欠けが残っていると切れ味が変わらなくても、使っていて気持ちがよくない。
>
> 今はそんな感じです。

曲げと欠け

ここまでひどくはないですが、両方の症状を経験しています。

研ぎに出した柔らかい奴は、写真のように曲がったり、押しつぶされたようになって切れなくなり、VG10はもっと小さいですが欠けました。

糸刃をつければどちらも症状は変わらないですが、刃持ちがよくなり、症状も小さくなります。ただ、あまり大きな糸刃というか段歯にすると切れ味の鋭さがなくなるので、具合が大事ですね。やっと最近分かってきました。

で、研ぎで欠けを全部無くすか?無くします。大体月一で研ぐのですが、10年は持ちそう。やっぱ、欠けが残っていると切れ味が変わらなくても、使っていて気持ちがよくない。

今はそんな感じです。

Re: No title

いがさんコメントありがとうございます。

お客さんのための適切な提案というより、クレーム回避のためのリスク通知とか顧客の意識調査といった意味合いの方がぼくにとっては大きいです(笑)

どれぐらいの加減で壊れるのかというったことをお客さん自身が学習して、使い方を調整してもらうしかないです。
包丁の特性がわかっていい感じに折り合いがつけられるようになった包丁が、お客さんの愛用品になるんじゃないかと思います。

No title

どちらの症状の経験もあります。
一つの包丁で両方の症状が出る事もありますね。

大き目の糸刃をつけて、糸刃が段刃にならないように蛤刃にしてます。
それでもかける事も曲がる事もありますが、多少マシな気はします。

研ぎ屋さんの適切な提案があってもお客さんに通じないのは悩ましいですね。
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