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東大五月祭で行われるたたら製鉄について、基礎知識

たたら製鉄がよくわからない人に、専門家ではない私の大雑把な理解で説明してみたいと思う。

たたら製鉄というのは日本が昔から明治大正時代ぐらいまで行ってきた製鉄方法だ。


§そもそも鉄とはなにか

鉄というのは26番元素である。

水は水素2つと酸素1つがくっついた分子である。水の元である水素は1番元素で、酸素は8番元素だ。
元素は全ての物の元となっている物質で、いまのところ118個存在するということになっている。
家も車も私たちの体も火も土も、すべてのものは元素の組み合わせでできている。
その118個の元素のひとつで、26番目の元素が、鉄である。

鉄は質量比でいうと地球を構成する物質の中で最も多く、なんと、地球の重さの1/3ぐらいが鉄なのだそうだ。
しかし地面を掘ると鉄が出て来るわけではない。

地球上にあるほとんどの鉄は、鉄鉱石とか砂鉄という状態で存在している。

砂鉄は砂場なんかで磁石をひきずるとくっついてくる黒い砂粒だ。鉄鉱石は日本では産出しない。

砂鉄の正体は酸化鉄である。鉄と酸素がくっついた物質だ。黒錆といってもいい。
水は水素と酸素がくっついてできているが、水素とも酸素ともまったく性質の違うものである。それと同じように、鉄と酸素がくっついた酸化鉄も、鉄とはまったく性質の違うものだ。砂鉄をいくら集めてもそのままでは包丁は作れない。

いわゆる鉄と私たちが言っているような、製品の素材に使ったりできる形にするためには、酸化鉄から酸素を分離する必要がある。


§製鉄

砂鉄や鉄鉱石といった酸化鉄から、酸素を分離して、鉄にする作業が、「製鉄」という作業だ。

現代の製鉄は高炉という100メートル以上の塔のような建造物の中で行われる。
素人のざっくりとした認識でいうと、酸化鉄を高温に加熱した状態で一酸化炭素や二酸化炭素に触れさせると、酸化鉄から酸素が分離して一酸化炭素や二酸化炭素になるのだそうだ。

炉が高いほど温度を高くしやすいので高炉を使う。

鉄というのはおよそ1500度ぐらいで溶ける。高炉の温度はそれ以上になる。
高炉の上部から鉄鉱石と高温にするための燃料のコークスを投入すると、下から溶けた鉄が出て来るという仕組みになっている。

高炉はいちど操業をはじめると、炉が寿命になって廃止するまで何十年も止まらずに操業し続ける。
もし停止すると再開するときに巨大な炉全体を再加熱する必要があるので、燃料効率がとても悪くなるのだ。

高炉の下から出て来る溶けた鉄には、炭素がたくさん含まれている。
この場合の「含まれている」というのは、酸化鉄や水のように鉄と炭素が化学結合しているのではなくて、鉄の組織の間に炭素がたくさん取り込まれているという状態である。

あらゆる鉄には多かれ少なかれ炭素が含まれている。
そして、この炭素の量の多い少ないによって硬くなったり柔らかくなったりする。
炭素は鉄に含まれる元素の中でとても重要な役割をするものなのである。

炭素の含有量が0.02%以下の鉄を「純鉄」という。
0.02%~2.14%の鉄を「鋼/はがね」という。
2.14%以上の鉄を「鋳鉄/ちゅうてつ」という。

私たちの身の回りで使われている大半の鉄は鋼に分類される。
南部鉄器やマンホールの蓋などは鋳鉄だ。

鋳鉄は非常に硬いので加工しづらく割れやすい。

高炉から出て来た鉄は4%ぐらい炭素を含んでいるそうで、「銑鉄(せんてつ)」と呼ばれる。
マンホールや南部鉄器に使われている鋳鉄よりもさらに炭素含有量が多く、とても割れやすくてそのままでは鉄材料として使えない。

そのため、転炉という炉で、素材として使える程度に炭素の量を減らす作業を行う。
このようにしてようやく、鉄が出来上がるのだ。


§たたら製鉄

たたら製鉄は明治時代か大正時代ぐらいまで日本で行われていた製鉄方法だ。

”たたら”とは本来、製鉄炉に空気を送り込むための送風装置のことである。足踏み式のふいごだ。「たたらを踏む」という慣用句はここからきている。
しかし現代行われているたたら製鉄では足踏み式の送風装置は使われない。東大の五月祭でも東大生がたたらを踏んでいる光景は見られないだろう。

昔のたたら製鉄がどのようなものだったのか、正確な記録は無いようだ。
土地によっても炉の形なり手法に違いがあったかもしれない。
しかしたたら製鉄の炉は高炉ではなかった。2メートルも無い。だからあまり高温にはならない。
酸化鉄が還元される程度の温度にはなるが、鉄が溶けるほどの高温にはならない。
このため炉の底から溶けた鉄が流れ出て来るということが無い。
炉の中に原料の砂鉄と燃料の木炭を投入すると、炉の底に固形の鉄の塊ができるのだ。

固形なので、炉から完成した鉄を取り出すために炉を叩き壊さなければならない。
製鉄するたびに新しく炉を作って、製鉄が終わったら壊す、という大変手間のかかる製鉄方法なのである。
新しく作った炉自体を温めることから始めなければならないので燃料効率も大変悪い。

そのかわり、溶けるほど高温にならないために、炭素をあまり多く含まない鉄ができる。
すると、転炉で炭素を減らすという作業は必要無くなるのである。
先に書いたような「銑鉄」ではなく、いきなり製品に使える鉄ができるのだ。
だから、たたら製鉄のような製鉄方法を「直接製鉄法」といい、現代のような転炉での脱炭工程が必要な製鉄方法を「間接製鉄法」と言ったりもする。

たたら製鉄で炉の底にできる鉄の塊のことを「鉧(けら)」と言う。

溶けた状態の銑鉄だと炭素などの成分の分布が全体に均質になるのだが、鉧は固体の状態なので部分部分によって炭素その他の不純物の分布が不均一になっている。
先に書いたように、炭素の量によって鉄の硬さが変わってしまうので、不均一なままで鉄製品を作ると、部分部分で硬さが違ったものができてしまう。

そこで日本刀の制作などでは、鉧を細かく割り砕いて、品質の良い部分だけを選別して、選別された小さな塊を集めて加熱して叩いて品質の良い鉄の塊に作り直すといった作業を行う。

鉧を小割りにした小片の中で、、日本刀の材料などに使われる高炭素で良質な部分が、玉鋼である。



今回東大で行うのは炉から鉧を取り出すところまでのようだ。

毎年、作った鉧は何にも使われずにそのまま放置されてしまっているそうである。

もったいない。

現代の日本刀の作刀に使われている玉鋼の価格は、高級刃物に使われている白紙とか青紙といった鋼材の10倍以上はするとのこと。
だから日本刀の値段もすごく高くて、新しく1本作ってもらうと100万円以上はする。

本格的な操業であれば三日三晩かけて行うところを、半日ほどでやってしまうという事情もあるので、もしかすると鉧の質は少し劣るのかもしれないが、仮にハガネとして良くなくても、地鉄に使えば面白い鉄肌になるだろう。

カンナやノミを作っている鍛冶屋さんの地鉄とか、カスタムナイフ作ってるビルダーさんの地鉄とか、鉄工芸されている方の素材とか、いろいろ使いたい人はいるんじゃないだろうか。
頼めばもらえるかもしれない。
自分で小割にしたり折り返し鍛錬したりする必要があるのだが。
私は鍛冶屋じゃないのでそういう作業ができないのだ。
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