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10円玉1~2枚問題を考えてみた

包丁を研ぐときの角度としてよく「10円玉1~2枚」と言われる。

実際のところどうなのだろうか。

まあ突っ込みどころ満載のものすごくアバウトな表現であることは言うまでも無いのであるが、それは言わないことにして。

まず必要な要素と数値を決定する。

(1) 10円玉1枚の厚さ
(2) 包丁の身幅
(3) 包丁の厚さ


(1)+【(3)÷2】=高さ
(2)=斜辺の長さ

この要素を満たす直角三角形のθ角が、研ぐときの角度ということになる。


(1)は実測値で1.5mmであった。

10円玉前横


(2)は包丁によって異なり、また、同じ包丁でも計る位置によって異なる。

身幅とは包丁の刃線から峰までの幅のことだ。

あまり研ぎ減っていない刃渡り16センチ~21センチぐらいの家庭用両刃包丁を数本計ってみたところ、いちばん広い部分で45mm強ぐらいだった。

今回は45mmと仮定する。

(3)は峰の部分の厚みとする。これも包丁によって異なるし、包丁によっては峰の部分でも刃元から先端にかけて薄くなっているものがある。

量産包丁では、比較的安価なものが2mm、高級品は2.5mmの鋼板が使われている場合が多い。

2mmないし2.5mmであるが、大きな差にはならないので計算では2mmを採用している。

包丁横縦


台の上にセットした仮の図はこんな感じになるだろう。10円玉2枚の場合である。

セット図


これに各要素の数字を入れると、

セット図2

となる。

高さは10円玉1.5mm×2=3mmに、包丁の峰の厚みの半分である1mmを足した4mm。

この条件でθ角を計算すると、

5度

約5.1度という計算になった。
両刃包丁であれば刃角度はこの2倍、約10.2度ということになる。

あれ、けっこう良い数字じゃない?(笑)

私は刃線際3ミリの位置の厚みが0.45mm~0.55mmの範囲になるように調整しているのだが、底辺が0.5mmで斜辺が3mmの二等辺三角形の頂角は10度弱なのだ。
だいたいいっしょだなあ(笑)


なお、10円玉1枚で計算した場合は約3.1度になる。両刃でも刃角度は6度ということになる。
ほんとにこの角度であれば浅すぎだ。

3_1度



「10円玉1~2枚」

などというようなアバウトな説明は、

「質問者をわかったような気にさせるための方便である」

と、これまで私は考えていた。

しかし今回の計算であながち的外れとも言えないな、と、考えを改めさせられた。


ところでこの「10円玉1~2枚」説のほかに、刃角度に関して巷間に流布している言説に、「20度~30度ぐらい」というものがある。「15度ぐらい。」と言われることもある。

これについても刃先のごくわずかな糸刃の角度という意味であれば決して的外れな数値では無いと思う。

ただしサバイバルナイフのような頑丈さが必要な刃物じゃないかぎり、刃角20度で1ミリ幅も小刃がついていてはならない。せいぜい0.1~0.3ミリぐらいまでだ。

これは「10円玉2枚ぐらい」の片面5度ぐらいの角度で刃線際3ミリぐらいまでの厚みをちゃんと抜いたうえで、仕上の刃付けとして少しだけ研ぐときの角度なのである。
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テーマ : 包丁研ぎ
ジャンル : 趣味・実用

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Re: No title

なるほどー。
相手と言い方によっては便利な説明方法ともいえるのかもしれませんね。




> 自分が最初研いだ時は立てていました。40度ぐらいだったかな。
> 2回目は切れ味を良くしようとして、寝かしていました。その結果、側面が傷だらけになっただけで、刃先は研がれていませんでした。
>
> 恥ずかしながら、何も知らないでやるとこんなものですw
>
> そういう方に本当に大体の角度、20度でも10度でもいいと思うのですが、教えるにはいい方法だなと思いました。
>
> そこからちゃんと切れ味のいい研ぎとなれば、おっしゃるように、包丁によって違うので、10円玉は意味がないと思います。

No title

自分が最初研いだ時は立てていました。40度ぐらいだったかな。
2回目は切れ味を良くしようとして、寝かしていました。その結果、側面が傷だらけになっただけで、刃先は研がれていませんでした。

恥ずかしながら、何も知らないでやるとこんなものですw

そういう方に本当に大体の角度、20度でも10度でもいいと思うのですが、教えるにはいい方法だなと思いました。

そこからちゃんと切れ味のいい研ぎとなれば、おっしゃるように、包丁によって違うので、10円玉は意味がないと思います。

Re: No title

ぼくが問題だと思うのは、

「10円玉2枚ぐらい」

と言ったところで、何割ぐらいの初級者が適当な角度で研げるようになるのか、という点です。

その人が使ってる包丁の身幅によっても違うんだし。

わかったような感じになってもらえるという以上の効果はあんまり期待できないと思います。



> お疲れ様です。
> ふむふむ、なるほど。
> そんな変な角度ではないということですね。
> 初心者に大体の角度を教えるには、結構有効な方法とわかりました。
> ありがとうございます。

No title

お疲れ様です。
ふむふむ、なるほど。
そんな変な角度ではないということですね。
初心者に大体の角度を教えるには、結構有効な方法とわかりました。
ありがとうございます。

刃角

刃角を30度と書かれている方が結構いらっしゃって、「違うのじゃないの」といつも思っていました。

BROさん、おっしゃるように片方で、5~6度(全体で10~12度)くらいが両刃包丁の刃角で切れが良いように思います。

やはり、30度は糸刃ですよね。全体をそこまで立てたら、切れません、というか簡易研ぎ器での刃先角度並みです。

因みに、手元にある肥後守数本を測ってみたら、所謂「大」のもので、刃厚3mm、鎬まで8mmなので、刃全体で14度くらいですね。

学童用の刃厚2mmのものでも、刃先から鎬まで7mmなので刃の角度は同じくらいですね。

肥後守は、ベタ研ぎをするのでこの刃角がデフォルトですね。鉛筆削りや竹とんぼつくりには、この角度で良いのだと思います。

肥後守も長く作られた刃物なので、最適解の角度がここいらにあるのでしょうね。図らずも、包丁と同じくらいということですね。

因みに、小生は古い技術屋なので、今でも計算尺使いです。角度に関しては、5.7度以下は、サインもタンジェントもほぼ同じです、それで、計算尺では、サイン、タンジェント5.7度が0.1という値になるようになっています。

これは結構便利で、刃角でいえば、身幅40mmで刃角(片側)5.7度だと、4mm浮かす、というのが判りますし、車の運転で、坂道の勾配、8%というようなことだと、5度くらいの角度というのが近似値で求められます。

Re: No title

ぼくも自分が研いでるお客さんの包丁の刃がメケメケになって帰ってくることよくあります、糸刃はつけるんですが(笑)
欠けにくいように厚めに研いだ方がいいか確認するけど、よく切れるから薄くていいと言われます。
あと、大きめの欠けを無くすと刃が減りすぎるし研ぐのも手間なので、切れ味に影響ないと思うので欠けが残っててもいいですかと聞くと、ほぼみんないいですよと言います。包丁は欠けがあっても切れます。微細な欠けが許されないのは裁ち鋏、理美容シザー、カミソリ、カンナです。
ちなみにぼくもちょっと欠けたままの包丁使ってます、研ぐと刃がもったいないので(笑)


> 今回の記事も興味深く読ませて頂きました。
> 私が主に使っている包丁はノギスが無いので正確な値ではありませんが、
> ペティナイフは切刃の幅が約10mm、厚さが1.8mm程度で角度は約10.2度、
> 牛刀は利器材で芯の鋼厚さが0.5mm程度と推定して
> 刃道~刃境線までの幅が約3.5mm程度なので、約8度でしょうか。
> 実用上は良い線かと思っています。
>
> いずれも刃道際はごく小さい蛤刃状の糸刃をつけています。
>
> 自分の感覚では糸刃が無いと刃先がよれてすぐボロボロになるため、
> 糸刃を付ける事前提の角度です。
>
> また、糸刃が無いと、かなり気をつけても刃先が俎板に食い込み、
> 使い難く感じます。

Re: No title

そういえばどこかで同じような記事を見たおぼえがあったんですが、なるほど。酪農家さんのブログでしたか。
面白い記事が多いのに、Yahoo!ブログが廃止になると消えちゃうんでしょか。

だけど、両刃だと4度×2=8度だとして、100倍で観察しても研いだ直後にボロボロになるってことは無いと思います。
100均の包丁とかだとわかりませんが。



> 牛刀や三徳包丁のような両刃包丁の場合には、
> 刃肉を薄くして切れ込みを良くするための角度と、
> 刃道を切れ味を保ちつつ実用的な強度を保つ為の角度は
> 明確に区別すべきと思います。
>
>
> 酪農家のブログ
> 砥石と包丁の角度、峰の高さは十円玉何枚?
> ttps://blogs.yahoo.co.jp/marimari0530/23644294.html
> ↑の記事
> では逆に刃道の角度に焦点を当てて、
> 10円玉2枚では角度が小さすぎて刃先がボロボロ、と言っています。
> 刃肉を抜くための角度については触れられてもいません。
>
> 一口に包丁を砥ぐための角度と言っても、考える要素は多いんだな、
> と思いました。

No title

牛刀や三徳包丁のような両刃包丁の場合には、
刃肉を薄くして切れ込みを良くするための角度と、
刃道を切れ味を保ちつつ実用的な強度を保つ為の角度は
明確に区別すべきと思います。


酪農家のブログ
砥石と包丁の角度、峰の高さは十円玉何枚?
ttps://blogs.yahoo.co.jp/marimari0530/23644294.html
↑の記事
では逆に刃道の角度に焦点を当てて、
10円玉2枚では角度が小さすぎて刃先がボロボロ、と言っています。
刃肉を抜くための角度については触れられてもいません。

一口に包丁を砥ぐための角度と言っても、考える要素は多いんだな、
と思いました。

No title

今回の記事も興味深く読ませて頂きました。
私が主に使っている包丁はノギスが無いので正確な値ではありませんが、
ペティナイフは切刃の幅が約10mm、厚さが1.8mm程度で角度は約10.2度、
牛刀は利器材で芯の鋼厚さが0.5mm程度と推定して
刃道~刃境線までの幅が約3.5mm程度なので、約8度でしょうか。
実用上は良い線かと思っています。

いずれも刃道際はごく小さい蛤刃状の糸刃をつけています。

自分の感覚では糸刃が無いと刃先がよれてすぐボロボロになるため、
糸刃を付ける事前提の角度です。

また、糸刃が無いと、かなり気をつけても刃先が俎板に食い込み、
使い難く感じます。
プロフィール

BROさん

Author:BROさん
東京都練馬区の研ぎ師です。
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