ハサミの力学

ハサミに加わる力について説明します。

二枚の刃体がすり合わさって髪を切っていく部分の模式図です。

sissor_powers.jpg

赤い矢印 ↑は、指でハサミを閉じようとする力です。

青い矢印 ↑は、毛髪が切断されるときの抵抗によって生じる力です。ハサミを押し広げようとする方向に力が働きます。

人毛の直径は約80μmだそうです。0.08mm。
押し広げようとする力はごく小さいものです。しかし二枚の刃体の隙間が40μm程度も開けば髪は切断されずに二枚の刃体の間に噛みこまれてしまう可能性があります。
切る対象が細い物や薄い物、また柔軟な物であるほど、噛み込みが発生する可能性は高くなります。厚みがある物やある程度の硬さや張りがある物の方が、簡単に切れるのです。たとえば薄いティッシュを切る場合でも、濡らして柔軟になっている方が切りにくいです。
また紙や布のような連続体は、たとえば横方向に80μm程度の欠けがあり切れない部分があってもその前後が切断されることで欠けの部分も引き切ってしまえる場合があります。しかし毛髪のような非連続体では欠けた部分で1本だけ噛み込んでしまうことがあります。


黄色い矢印 ↑は、青の矢印に抵抗する力です。
この力はいくつかのハサミの構造によって複合的に造られ、また補強されています。

ひとつは指の構造。
切るときにハサミに対して赤矢印の方向だけでなく黄色方向の力が加わります。静刃を保持する薬指と小指は手のひらの内側に向かってハサミを保持するように曲がります。そうでないとハサミが手から滑り落ちてしまうから。これに対して親指は動刃を押す方向に力を加えます。ハサミの姿勢を保持するためです。
指環の形状もこの力の加わり方を補強するようなカーブを描いています。

それから、バネ。
要ネジの周りに、刃体を押し付ける黄色矢印の方向に作用する板バネなどが組み込まれているハサミがあります。バネにはいくつかの種類があります。
バネがついていないハサミもあります。理美容ハサミ以外でバネが使われているものは少なく、庄三郎の裁ち鋏に見られるぐらいです。

反りも関係していると言えるでしょう。黄色方向の力を与えるわけではないかもしれませんが。

ハサミの自重も作用するとはじめに書いていたんですが、間違いだと気づいたので修正しました。裏向きか表向きかによって変わります。
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