錆落とし

刃物の錆落としや傷消しは、欠け取りと同じです。
鉛筆で書いた文字を消しゴムで消すこととは違います。

錆は部材そのものが酸素と結合して変質した状態です。傷は部材がえぐれた状態です。
鉛筆で書いた文字は紙の上に炭が付着した状態だから、付着した炭を除去すれば消えます。一方、錆や傷の除去は、錆や傷がついた深さまで周囲を削って均さなければいけません。

部材が酸素と結合したなら酸素だけ除去することはできないのか?と思われるかもしれません。
酸化鉄から酸素を取り除くことは可能です。還元といいます。
酸化鉄を高温で熱して、酸素を炭素と反応させて鉄から除去します。
要するに、錆を製鉄会社の溶鉱炉に入れればドロドロの鉄になって出てくるのです。
残念ながら刃物の形状のままで鉄から酸素を除去することはできません。

部材を削るために、手作業なら砥石やサンドペーパーやスチールウールなどを使います。
溶剤の錆取り液もありますが、これは強酸性の液体で部材表面を溶かしています。


ゾーリンゲンのハサミ。裁ち鋏だと思います。かなり錆がきついです。
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刻印は 「SPENGLER & MEURER」 とありました。
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これを砥石でごりごり磨いて落とします。
ネズミ色の大きいのはC系荒砥。右下薄水色が中砥。右上オレンジ色は伊予砥。
他にも何種類か使います。
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薄い錆や傷なら耐水ペーパーやスチールウールでも落とせますが、深い傷は力を入れてゴリゴリ削らなければいけないので石の方がいいです。
研ぎに使う大きな砥石では表面の微妙な凹凸に対応できないので欠片を使います。


錆を落とした状態。
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鏡面には程遠いですが。
研ぎ傷が荒いままだと傷口に水分が付着して錆びやすくなるので、一定レベルまでは磨かないといけません。
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深い錆の拡大写真。
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さらに拡大。
0008.jpg

完全に錆を落とす場合はこの一番深い錆の奥まで、表面全体を削らなければいけません。
写真で見えているより更に深いかもしれない。


ちなみに元はこんな状態。
0010.jpg

薄い刃先部分がこういう状態になってると、錆が刃体を貫通してしまっているケースもあります。そうなると修復不可能です。
刃先の場合は切れ味に影響するので完全に除去しないといけません。貫通してる場合はハガネが残っている部分まで刃先を下げてしまう必要があります。
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ジャンル : 趣味・実用

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